東京・町田市の多胎児虐待死亡事件から見る多胎妊娠・育児のリスク

 以前も書いたが、東京都・町田市で起こった多胎児虐待死亡事件。やはり、亡くなった子供には障害があったようだ。朝日新聞の記事を読んでいると、子供はたんの吸引が必要な医療的ケア児童だったそうだ。

 障害を持つ子供を育てることは並大抵ではない。それも医療的ケアが必要であればなおさらだ。

 私の双子の次男は脳性麻痺だ。今、3歳だが、ようやく歩行ができるようになったが、まだおぼつかないし、知的発達も遅れている。次男が生まれ、三年が経過し、ようやく、自分の中で100%ではないが、ほぼほぼ次男の障害を受け入れることができ、彼とともに、社会と向き合い、時に戦いながら生きていく決心ができた。

 母親が障害を受け入れるまでは、本当にしんどい。暗いくらいトンネルを周囲に相談することもできず、重たい気持ちで歩いている。唯一の理解者である夫も仕事をしていると、子供の面倒を見るのは、母親の肩に重くのしかかってくる。責任感があればあるほど、その子供の将来に悲観し絶望を感じることも多い。

 私だっていまでも、長男や三男に比べると、次男の将来をみることは怖い。将来は何になるのかな? どんな女の子と結婚するのかな?って普通の育児で思い描けるファンシーなことを、障害という事実が邪魔をし、いっきに現実に引き戻される。障碍者雇用で働けたらいいな、市役所で雇ってくれないかなって超現実的な話になるのだ。長男、三男に比べると、次男に対して、子育てにつきもののふわっとしたファンシーなことを考える余裕がないのだ。将来、自立させるために、すでに、今から、受験勉強さながらの厳しいリハビリをさせないとけないのだ。

 その分、親に重くのしかかってくるのだ。でも、親も人間。自立できるか、できないか、そんな人間を子供といえど、100%、親が面倒を見るのは物理的に不可能だ。お金はあるかもしれない。でも、身体や気持ちはいつかついていかなくなる。

 この事件も不安がお母さんをつぶさせたのだ。周囲に助けることをできる人はそう簡単に出会わない。保健師だってドクターだって障害児のスペシャリストではないのだ。児童発達支援などの障害を持つ子供がいく施設はあるが、子供が小さければ小さいほど、行く機会がない。私の子供も生まれてから、約半年は社会から放り出された。NICUを退院すると、子供は元気になりましたらから、あとはどうにかやってくださいってぽいっと放り出される。産後の体で身も心もボロボロでそんななか、障害を持つ子供の子育てをどうやってしろというのだ。

幸せなハッピーなマタニティライフの情報ばかりで、妊娠のリスク、育児のリスクはほとんど教えられない。国は少子化推進ばかり声高にいうだけで、障害を負うリスク、子育ての負担、どのように女性の環境、心が変わるか、なんにも教えてもらえない。

 多胎だって、多胎が単胎の数倍リスクがあることは私も妊娠中まったく知らなかった。障害を負うリスク、母体にかかる負担、多胎が“異常妊娠”と言われる理由は教えてもらえなかった。

 多胎児のリスクばかり話すと、中絶を望む人も出てくるので表立っていうことは難しいかもしれない。でも、母親が犠牲になり、悲しい事件を防ぐためにも、情報がほしい人には情報を与えるシステムを構築しなければいけないと思う。

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