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ある晴れた春の一日

白や黄色の水仙がきれいだなと思っていたら桜のような花が咲き始めどうやらベルギーにも春が来たようだ。日本の中でも温暖な地域に生まれ育ち、冬でも日中はぽかぽかと温かい日差しが当たり前だった私が本格的な冬の寒さを経験したのはヨーロッパに来てからだった。イギリスもベルギーも耐えられない寒さではないが、日照時間は限りなく短く貴重な昼間もしとしと降る雨でかき消されてしまう。ビタミンDは手放せずもしかして冬季鬱かもと数回は思うほど暗い日々も数か月続いた。今年は落ち込みはそれほどでもないが、体調不良が続き外に出ると咳がひどいので自然とインドア派になっていった。

ある日外に出ると春が訪れていた。草木の芽吹きだけではない。コートを着ない学生たちの群れからテラス席に集う人々など街が春の顔をしていた。特に今日は学生に紛れて公園でピクニックをしたくなるような晴天。穏やかな日差しが心地よい。

ルーヴェンのシンボル、大学図書館前の広場。刺さってるのはカブトムシ。
飲食店が連なるエリア。近くにマックなどファストフードも。石段に座って語らう学生も多い。

レストランで駐在の友人達とランチ。大学のすぐ近くだが入るのは初めて。中に入ると奥にはテラス席。意外にも年配の方々が多く思い思いに食事を楽しんでいた。オーダーはレジ。本日のプレートを皆注文。ベジタリアンの店なのだがごろごろとお豆と野菜が入ったチリコンカンのようなソースからマッシュポテトにサラダや野菜の揚げ物もありお腹いっぱいに。食後は目をつけていた洋ナシとクリームがたっぷりのチョコレートケーキを。ルーヴェンでは私が美味しいと思えるクリームがたっぷりしたケーキを出すレストランやカフェは少ない。キャロットケーキやシナモンロール、チーズケーキにマフィンやクッキーが定番だ。生クリーム大好きな私は少し不満。ここのケーキは手作りの優しい味で、ケーキだけでも再訪したいくらいお気に入りとなった。

本日のプレート。野菜だけとは思えないボリューム。サラダの味付けも美味しかった。
洋ナシがサンドされたチョコレートケーキ。クリームが甘すぎずチョコレートもくどくなく優しい甘さ。癒された。セルフのスプーン、小さいサイズとれば良かったと後悔。

4人で集まるのは何回目だろう。英語を学んでる人、英語を教えてる人、出身も職業も違う私たちの話題は地元の学校での校則の話から高校のスパルタ勉強話、子どもの現地学校の話など幅広い。こんなオーガニックな場所で最後は投資の話まで。多弁になるとでる方言をほのかに感じるイントネーションに癒される。ずっと会えるわけではないけど今こんな話せる友人を持つことは私たちの日々の活力になるね、とケーキをほおばりながら思う。

今朝は子ども達を学校に送り泣き叫ぶ末っ子を無事先生に引き渡し(8:30)、その足でスーパーに直行し足りなくなったコーヒーやバターその他もろもろを購入(9:00)。お腹が空き2回目の朝食としておかかおにぎりを食べる(9:30)。デフォルトで3時間かかる洗濯がそろそろ終わり干し終わるとあっというまに出かける準備(10:30)。準備して家を出たのは11時前。軽くプレゼントを買った12時の集合場所に向かった。3時半には家路につき今これを書いている。そろそろお迎えだ(16:50)。

こんな風に1日はあっというまに過ぎる。数年前まで大きなお腹を抱えながら幼児2人を別々の保育園に送迎し速足に通勤電車に乗り込んで働いていた事が信じられない。子ども達を寝かしつけると立ち上がれない程疲れていた。3人目を出産後、もうこの生活を続けることはできないと移住を決めた。

現在の私は子連れ海外留学をしている人々のように朝早く勉強したり時間術を駆使した緻密なスケジュールを立てて実行もできていない。落ち込んだこともあったがこれでいいと今は思う。自分の時間を取り戻す、自分の思考を取り戻す、そして気の合う人と語りあう時間をつくることが移住の一番の目的だったから。そんな事を考えたある春の一日。


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