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ピンからキリまで

会社から帰宅して、手早く作り置きのカレーを食べて、シンクで食器を水に浸したあと、足をもたつかせながら靴を履いて家を出た。

もう、楽しみすぎてるんるんである。
鼻歌も歌っちゃう。

自転車のハンドルにスマホを固定して、地図アプリで近所のホームセンターまでの道を表示させる。

家の駐輪場から外に出ると、傘を差すか差さないかくらいの小雨が降っていた。
ウィンドブレーカーを着てるからいいんだもん。と思いながら、信号で止まった時にスマホの画面を見ると、画面が雨で滲んでいたので、慌ててズボンで画面を拭きポッケに突っ込んだ。

危なかった。
浮かれてスマホを水没させるところだった。

ホームセンターまでは、道なりにまっすぐ20分ほどの距離だったので、力むことなくシャカシャカとペダルを回した。

私は、新版画の色味を再現するために、色々調べていた。

先日訪れた八王子市夢美術館での『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』の展示で、制作プロセスのムービーが流れていたのを見る限り、伝統的な浮世絵の技法とさほど変わらないように見えたので、浮世絵の技法を調べた。

浮世絵の制作プロセスが、外国人観光客向けに易しく書かれた本を、熱海のMOA美術館で購入していたので、それを見る。
道具と手順が写真付きで解説されていて、ふむふむこんな感じかぁというのがわかる。
だがしかし、こんな感じかぁ程度にしかわからない。
具体的なことは一切書かれていないし、どの材料をどのくらい使うのか、材料がどこで売られているのか、さっぱりわからない。

とりあえず、版木について調べた。
浮世絵で使われる版木は、桜材が良いとされているようだ。
amazonで検索する。
高いのか、安いのかわからない。
わからないので、頭の中で、1枚あたりに使用する版木の枚数と、連作の枚数をかけてみた。
恐ろしく高かった。
版木だけで、銀座のギャラリーが1週間借りられる値段だ。

武蔵野美術大学がウェブ上に公開している造形ファイルを見ると、現在ではシナベニヤが使われているとの記述があったので、シナベニヤでいいのかなと思う。

思うけど、良いと言われているならば試してみたい気持ちもあるので、桜材を買うかどうか、迷っている。

迷いながらも、ホームセンターへ向かっている。
もしかしたら、何かいい素材が売っているかもしれないし。

江戸時代から百年以上経っているんだから、何かいい素材売っていてくれないかな…

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