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通し稽古で見えてきたもの

2023年3月11日(土)プロジェクトなづき 稽古

第2章の『件』と第3章の『むこう側』についてはメンバーのインプロのやりとりを元に場面を組み立ててきたが、ようやくそれらを第一稿として台本化。この日はまずその成果を車座になって読み合わせをした。ちなみに第1章『門』に関しては、全体構想を練る中で、音楽や詩というジャンルで培った素養をもって、重ねてきたインプロ稽古を基本に、構成を考えている。第2章、3章とどう融合させるのかを課題として次回以降の稽古から臨んでいくつもりだ。

読み合わせが終わると、上野憲治さんから「秀人」の人物像のすり合わせをしたいという要望が上がった。秀人は発狂しているという設定であるが、なぜ発狂したのかという理由が、キャラクター表に記してきた設定だと、上野さんは腑に落ちないという。それで当初の設定を踏まえながらも独自に精緻な人物像を造形された。それは演じるという体感が納得できる、深い人物像となっていた。アクターのなかで役柄が育つようにして明確になっていったといっていいだろう。これこそが現場を豊かにしていくのだ。

稽古は、まず2章3章を通した。中・後半の流れを演じるなかでより具体的につかんでいけただろう。この過程で他のメンバーから川津の「美咲」の演技について違和感の表明があった。年齢が高め、ある種のステレオタイプの演技に感じられたという。もっとかわいくて色っぽい役柄ではないかという意見もあった。そういった意見から川津はその日委縮してしまった。ちなみにそれはまだ役柄を十全にはつかんでいないからだと後で気づいた。7年間夫が失踪し、義兄の世話もしながら旅館を切り盛りしてきた女性が弱いはずがない。実際にお世話になってきた女性経営者が何人かいるが、みなさんいろんな面を持っていて、鬼になりきれたり、少女性、男性性まで使い分けていた。川津のアウトプットのやり方が手ぬるかったと反省することしきりだ。

抜き稽古としては、最初に秀人と訪問着の付喪神「錦」との場面をやった。演じ手としての自己の記憶と秀人の記憶がまじりあうようにして演じる上野さんの秀人は迫真性があって完成度は高いといえるのだが、ここからの飛躍がきっと出てくるに違いない。錦の今井歴矢さんは付喪神/妖怪であることに基礎を置きながらいろんな演技を試している。モノとしての素朴さと人でないものの愛らしさが滲み出ていた。これらがもっと深められると思うと楽しみだ。
のぶえさんの「座敷童」は屈託なさ、性が分化していないところが面白かった。数えきれない年月の吾野を見てきたという精霊の底知れなさが垣間見てとれる。伏目がちに演じていたのがもったいない。眼力があるのでそこを生かした演出をしていきたい。
美咲の解釈が揺らいでいるので、ゴーレム佐藤さん、田口和さん、上野さんとのやり取りはまだまだ途上。ゴーレムさん、上野さんとは感情の交換がある程度できているのだが、田口さんとのやり取りではそこが十分ではない。次の稽古で関係性のすり合わせをしたい。

稽古が終わって、上野さん、月読彦さんと飲みに行った。

稽古外で飲食を交えて意見を交換するのは有意義で楽しい。上野さんは川津に「納得して公演を打つのであれば、自分も命がけで舞台に立つ」と言ってくれた。振り返るに作品をよくするための演出としての発信力がまだまだだったのではないか。覚悟をもって臨んでいきたい。

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