川津望

詩と音楽。アートユニットプロジェクトなづきの共同主宰。詩集に『ミュート・ディスタンス』…

川津望

詩と音楽。アートユニットプロジェクトなづきの共同主宰。詩集に『ミュート・ディスタンス』(七月堂)があります。のんびりするのが好きです。

最近の記事

2024年4月(1)

「少年とわたくしの心は充分通いあっていた。彼は「曲がり尺」のようにかぼそく青白い肱をうすい胸の上をうすい胸の上にあわせ、いつも、かじかんでまがっている両掌の左の方を上に重ねて、爺さまのはだけた両膝の間に仰向けになっているのである。」 石牟礼道子著 『苦海浄土 わが水俣病』 俳優 田口和さんは自身の身体に触れずに、浅黒い肌をならすように魂を揺さぶっていた。2018年の気象庁「WMO/UNEP オゾン層破壊の科学アセスメント:2018」 (2019年 7月1日修正版)総括要旨

    • 共有するひとりごととして

      こんばんは。昨日は随分と肌寒かった。昼間は芝居の稽古で、メンバーは全員来ました。今回は作・演ではなく役者としての参加なので、一役者としての伝達のみでどれだけ参加してくれているメンバーの「今」にアウトプットできるか……そればかり考えていました。 実は2週間前あたりかな、厳密に言えば9月……は、どのような視座でまなざしたにせよ生死に関わる決断が迫られた月でした。長期的な視点で感情的にならず自身の様子をみてゆく……現在はそのような心境でいます。色々と自分なりに分析し問題が起きたと

      • うすい頭蓋のとじる音が年老いた鹿を眠らせる 重い持ち手になみなみと上流の水をこらえて 透明なまなざしの増す集落に差しかかると 小山を降りアナグマの憂いを負う驟雨が 稲穂の群れを濡らし 最上町 まるまるとした岩が集まる露天風呂に浮かぶ 峠から稜線まで黄色い半月の羽毛で覆われ いくらか手足の痺れは和らぐ 日差しの濃さに喉を渇かせた蜂が来て 稲妻とばかりに湯の熱さにおののく 素肌に滴る水滴を血走った複眼がとらえ 鋭く飛びまわった彼の痛苦を 湯気を放つ首のまわりに引き受けた 藍色の

        • 笑いの衣の中身

          2023年8月13日(日)プロジェクトなづき稽古日誌 今回より今井歴矢さんが参加。プロジェクトなづき創設期よりなづきを支えてきた一員です。 以前田口和さんの稽古に参加されていた今井さん。稽古形態等違いはありますが、無事合流となりました。 そんな2度目の稽古ですが、初稽古と同じく和やかな雰囲気で始まりました。 冒頭で今回の音楽のゲストについていったいどんな方なのかと今井さんと伸枝さんから質問があがりました。川津にとって恩人のような方だと経験を踏まえて説明しました。今回のゲス

        2024年4月(1)

          今秋のなづき公演に向けて

          2023月8月6日(日) プロジェクトなづき吾野宿公演『道』初稽古 実はプロジェクトなづき発足当初、掲げていたことがあります。本来なづきは作・演出も固定ではなく、メンバーの中で何か「これやりたい!」「何かひらめいたぞ!」というものがあれば、それを話し合い実践し、作品にしてゆく……その際、特に演出は思いついた人が可能な限り担う、そんな集まりです。 今回の新作公演『道』を形にしてみよう。そのきっかけを作られたのはゴーレム佐藤さんでした。恐らく公演当日まで秘密ですが、この舞台に

          今秋のなづき公演に向けて

          .kiten、再始動

          東陽町アートスペース.kitenより約3年。.kitenはプロジェクトなづきの公演『門 MON』より企画者団体吾野宿.kitenとして再始動しました。歴史ある吾野宿をベースとして時に他の土地での公演も考えております。サイトもリニューアルし心新たに、共催イベントのご案内です。 主催まきこの会、吾野宿.kiten共催、後援は心強くも飯能市、吾野宿再生と吾野を語る会(COMステーション)。7月30日(日)15:00より梅田まりあ氏プロデュース、桜井真樹子氏による『白拍子 歌舞(う

          .kiten、再始動

          次の公演に向けて

          2023年7月8日(土) プロジェクトなづき稽古 この日は久しぶりの稽古でした。本番を経たことで得たものを早々に失わない為にも間をできるだけあけない稽古は必要だと思います。 公演『門』稽古時より秋にもう一つプロジェクトなづきの公演をうちたいと考えていました。ゴーレム佐藤さんと上野憲治さんが稽古場にやって来たのでゆうるり呑み語らう中でその提案を共有しました。すぐさまゴーレムさんより妙案が。候補日はピックアップしたもののまだ公演日を確定していないのでその案については秘密ですが

          次の公演に向けて

          吾野宿合宿第一弾

          2023年5月5日(金)プロジェクトなづき 稽古 朝の9時より某所にて台本の読み合わせ。その後今井歴矢さん、月読彦さんと音楽や照明についてのミーティングを行いました。音楽、照明の問題点に対し打開案を見つけることができました。吾野宿の音、例えば自然音であったり、調理をする音といった今ここで生きているものの息遣いを志向しています。それなのに川津は、音や照明に観念的なことを言っていました。今井さん、月読彦さんがそういった川津の混乱に対していくつかの案を出してくれました。結果ちょう

          吾野宿合宿第一弾

          土地が人を通して呼びかけるもの

          2023年4月30日(日)プロジェクトなづき吾野宿稽古 プロジェクトなづきの作品は都度作曲家に曲を書いてもらってきました。生楽器の演奏が主で、SEまでも楽器で表現してきました。そのため楽師は役者の動きを見るのに専念してもらうためできるだけ曲を暗譜するのがベストだったように個人的には思います。曲自体は聴きやすいながらも現代音楽です。西洋楽器での微分音、時に記譜法においては作曲者が確立、採用している音符を用いた独自の音楽言語の系を用いた楽譜。拍子を用いずにタイミングのみ記されて

          土地が人を通して呼びかけるもの

          或る決意

          2023年4月22日(土) プロジェクトなづき稽古 物語の核を揺るがすほどではありませんが、章の名称を変えてしまうほどの変更を加えました。とっかかりは伸枝さん演じる座敷童の、あるシーンのSEや演出を考えているときでした。生まれてしまったからにはその存在を担わなくてはならない。たとえこれまで重要なファクターであったものを削除しなければならないとしてもです。きっと物語に深みを出してくれることでしょう。この日は午前中からの稽古です。まずはそれを参加メンバーに伝達。稽古としては抜き

          或る決意

          蜜蜂の飛翔をただ感じるという事

          2023年4月16日(日)プロジェクトなづき稽古 『門』はそれぞれの章ごとに趣が異なる作品なので力点も風合いも変化をつけています。まずは定刻に集まった田口和さん、伸枝さん、川津で第3章「むこう側」の台本、演出に関するディスカッション。 そこへミツバチが迷い込んできました。伸枝さんと川津は話しかけながら救出作戦を決行。「刺さないの?」と田口さん。川津は自然に生きる方々に対し、ご縁のあるとき話しかけるようにしています。伸枝さんもそういうタイプのようです。ミツバチさんに手のひら

          蜜蜂の飛翔をただ感じるという事

          火しぶき 稲妻しぶき 癩面を渡り 夕暮れの赤茶けたぬめりを嗅ぎまわる 金色の霧が立ちこめる森林で 悴む獣や裂けた巌は 息絶えた虫の細かな鱗粉を身につける 夜気は鬼の相貌で崖をくだってくる 石の怒声を溜めたみずたまりに ゆうるるんぐう 春の肝を食わせてやりたい 背なかの足りない銃声 痩せた母熊からあがる血煙が まだ小熊を守っている なぜ夜露にしてでも帰してくれなかったのか 松から松へ移動し山中で蛇を溶かす 妣たちは撚り合わされたから もう枝をはらい終えた木々に訊いても 濁り

          自走性と個の往還、一考察

          2023年4月9日(日)、4月13日(木) プロジェクトなづき 稽古 今井歴矢さん演じる「錦」の演出案として新たな方法を採用しました。ジャズダンスの踊り手としての身体性と今井さんの持つ少年性、高揚感あふれるエキセントリックさに注目した演出です。いい塩梅で溶け合えば、とても魅力的なキャラクターとなるに違いありません。「秀人」と錦の場面において今井さんの身体性と 役柄が効果的に発揮され、秀人の台詞が自然と聞こえるようになりました。 次に川津演じる「美咲」と田口和さん扮する「信

          自走性と個の往還、一考察

          まなざしの土地を巡って

          2023年4月2日(日) プロジェクトなづき稽古 山田零さんの要望により 前回の稽古で 形作った 第一章『門』を含めた全編の通し読み。そのあと全貌が明らかになってきたことで細かな部分や衣装、劇中音楽についてメンバーで話し合いをしました。また公演本番、吾野宿という建物の有効利用の再検討、また雨天の時どうするか、 照明についてなど、意見を出し合いました。なかでも野外芝居に長らく参加していた役者からの知見により大幅に見直しました。 その後抜き稽古へ移行。4月中は 今井歴矢(今井

          まなざしの土地を巡って

          春にして眠りゆくものを想う

          2023年3月26日(日)プロジェクトなづき稽古 生憎の雨。吾野宿から某所に稽古場を移しました。まずはじめに第一章「門」の構成をメンバーと一緒に練っていきました。せっかくアンサンブルとして作品を作るのですから作・演、役者同士が提案や意見、批評をフランクに交し合える現場を志しています。シーンを引き寄せる力を場や仲間から預かる、そんな創作方法を今回は特に意識しています。 冒頭部は月読彦さんの着想を共有。その後演出サイドからイメージの断片をシェアしていきます。イメージは化学反応

          春にして眠りゆくものを想う

          記憶から放たれ、遊べや遊べ

          2023年3月18日(土)-19日(日)なづき稽古 (18日土曜日) 今も吾野についての理解を深めるためリサーチを行っている。今回は顔振(こうぶり)峠や高山不動尊まで赴いた。「顔振」の由来は奥州に落ち延びる義経が景色がいいので振り返り振り返り進んだという言い伝えからだそうだ(調べるに所説あった。興味ある方は検索を)。この日は生憎の雨模様。晴れた日は関八州全体が望めるという。わたしたちは車を運転しながら土地の歴史と現状を説明してくださる吾野宿の主、大河原さんの導きに従って進む

          記憶から放たれ、遊べや遊べ