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なづき、躍動する

2023年2月5日(日) プロジェクトなづき 稽古

まずはウォーミングアップからです。引き続き田口和さんに担当してもらいました。まずは「あなた‐わたし」ゲーム。相手に意識を向けてあなたと呼びかけ、相手はその呼びかけに対して自覚的に答え、呼びかけた相手がそれを確認する練習です。いくつかのバリエーションを経て、その後は前回もおこなったジェスチャーゲーム。2人組になって実施します。互いに何についてジェスチャーしているのかを言い当てるのですが、回答のあたりはずれに関係なく、コミュニケーションをしっかり取るということがゲームの目的です。ゴーレム佐藤さんは今回の稽古からの参加。山田零さんと組みました。さすがのおふたり、コミュニケーションのやり取りに隙間がありません。観ていて涙が出るくらい笑いました。この日は快晴で比較的気温がおだやか、公園での稽古ということもあってはやく身体があたたまりました。

作品稽古をはじめる前に一度全員で今回のオムニバス作品に関するリマインド。質疑応答の時間では各メンバーからさまざまな意見が出ました。「吾野の魅力を伝えたい、吾野を好きになってほしい」と伸枝さん、今井歴矢さん。川津もそこはキーポイントのひとつだと思っています。プロジェクトなづきでは吾野へは何度か足を運んでいますが、田口さんは昨年10月のある吾野宿のイベントではじめて訪問。「吾野を好きになるために吾野の山にのぼりたい」と話しました。

過日吾野宿の蔵の中を覗いた時に思いついた新しい役どころも登場させ、第一章予定のシーンに取りかかります。即興で山田さん、田口さん、伸枝さんがアクトを開始。山田さんと田口さんの自由闊達な感じがとても素敵です。「役者は好き勝手にやるもんだから、そこは川津ちゃんがだめなものはだめ、と言わないといかんよ」とゴーレムさんがアドバイスを下さいました。川津は混沌とした笑いや不条理な雰囲気が大好きなので、ついついこれもいいかもと思いがち。しかし芝居となるとある種の決然とした演出の態度は必要になります。不気味で、どこか可愛らしいふたりと伸枝さんの自然な存在感が際立ちました。なづき稽古「虎の穴組」と、同時進行でここ一年あまりつづけてきた田口組での鍛錬とが重なって愉快なシーンとなっています。一家の不在の主人の、お兄さん役を演じる上野憲治さんはコンセプトがあると脳裏に世界観をどこまでも広げられる所があります。直感的に役を掴んでいるようです。上野さんの演技はエキセントリックな要素を含みながらも皮膚感覚的に自然に流れてゆきます。今井さんは稽古すればするほど、ご自身で納得すればするほど、ちょっぴり無理すれば無理するほどとびきり舞台で映える役者さんなので、現場やオフタイムでの関係は今までどおりふわふわ時々きりっとさせつつ、時に川津も心を鬼にするやも。ちなみにこの第一章は一家の主人がWキャスト。この章の一方の主役、ゴーレムさんはどっしりと板についた演技です。上野さんのアクトを視ていらして、血が繋がっている兄弟だなあという説得力を感じさせました。

この日はシュールな感じで幕。 拙宅へ戻り、ディスカッションに。進行役は田口さんにお願いしました。山田さんは「吾野の魅力を知って欲しい、吾野に人が来て欲しいと言うが、どういう所でそう思うのか。秩父事件などもある地域だ。役柄に入るにあたって各々思想や信条は滲ませるべきでは」と意見を出してくれました。特に後半部分に関しては川津も思っていたことでした。地域の記憶は重要な要素です。ディスカッションでも話したのですが、それぞれの役柄は自分に近い思い方、考え方をする人物像に設定してほしい。お客様にはダイレクトに台詞で言う必要はありませんが、役柄の仕草、関係、またそぶりから透けてみえる信条や人柄の厚みが滲み出ればいいと思っています。 今井さんが「川津さん、そんなに遠慮しなくてもっと言っちゃっていいよ。大丈夫だから。変なはなしだけれども、俺たちでくのぼうでないからさ」と笑いながら言ってくださったのも大変ありがたかったです。上野さんは「私の役どころは狐憑きだけれども、主人公のお兄さん……と聞いただけですごく想像が広がった。だからお客様の前では台詞としては出さないかも知れないが、役どころ全員に名前をつけてはどうだろう」と話してくださいました。ゴーレムさんからは物語の指標作り、またキーマンは予め準備しておいた方がよいとの大事な意見をもらいました。田口さんも進行役をこなしながらノートにオムニバス作品の時系列を書くなど、熱心に取り組んでくれました。 稽古の最後は第三章予定で1月に稽古した作品の読合わせを2度おこないました。

稽古は終わり、飲み会に入ります。「先が読めてしまう作品より、今までのなづきのようなアヴァンギャルドを期待する」「もっと川津の特色を出せ」と激励されました。あたたかい仲間がいることは本当にありがたいことです。 今回は自分の色はあまり出さないでゆこうと思っていましたが、それはやめることにしました。ただ、今まで試みてきた形そのままのアウトプットではお客様もチームもつまらないので、もう一歩踏み出します。オンライン作品や継続している稽古も入れてプロジェクトなづきを立ち上げて5年ほど。ようやくなづきならではの方法論の尻尾が見えてきました。

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