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なづき、前進中

2023年2月11日(土)プロジェクトなづき稽古

今回のなづき公演の特徴は、これまでの川津の世界観を全面的に押し出すという方法とは異なり、場所をリサーチして、メンバーの意見や着想、希望を最大限反映するという点にあります。例えば伸枝さんの吾野を好きになってほしい、再生への一助となればという希望。山田零さんの吾野、吾野の背負ってきた歴史、さらには日本や世界の正負の情況を込めてはどうかという提案等々を台本に込めようとしています。

さて、前回のディスカッション、即興演技にて生まれた場面構成をもとに仮止め台本を作りました。上野憲治さんからは役柄に名前をつけてはどうかという提案を受け、役割シートを作成するという呼応にて、役割の氏名だけではなく、生年月日、家族構成、長所、短所、それぞれの年代におけるエピソード等を記載しました。

そして当日です。前日の大雪により秩父鉄道が運休になったこともあり、吾野宿ではなく、拙宅に稽古場所を変えました。役割シートの読み合わせからスタート。ここで今井歴矢さんの役柄設定に疑問が呈されました。川津は特殊な環境で半生をおくったため人と感覚がずれているところがあります。伸枝さんに「(ある設定をめぐって)それを受け入れないといけないなら私は役者じゃないのだなと思いました」と言わせてしまいました。川津の見知った方を反映させた、極端さを盛り込んだ設定でした。生理的嫌悪感については半端ない事例だとも指摘を受けました。このあたりことはもっと慎重にしないといけないと反省です。
また「ここまで設定が決まっているとダブルキャストの意味合いが希薄になってくるかな」とゴーレム佐藤さん。それは一理あるので配役を修正しました。

役割設定の確認の後、今日の稽古のエピソード2前半部分のため作った仮止め台本の読み合わせから演技に入ります。伸枝さんはメモを取りながら疑問に思うところはしっかり質問し、アクトにつなげてくれました。ゴーレムさんは決められた部分と即興的な部分の融合が絶妙で、日々即興で舞台を立っている力は半端ではありません。上野憲治さんは治癒のない精神疾患、とりわけ統合失調症を患っているという難しい役柄です。何を考えているかわからない、いつ不穏になるかわからないと思われがちですが、すべての病者ではないにせよ平素は当人の生来の性格が表れ、往々にして気づかいがあり、平安で優しい表情を示したりもします。そういったところを鮮やかに演じ分けしてくださいました。山田さんと田口和さんは付喪神を演じます。ふたりの演技はとてもチャーミングで、こんな付喪神が身の回りにいると幸せな気分になれそうです。

今井さんと伸枝さんのシーンを最後に稽古。二人は稽古前にたくさんの質問を投げてくれました。そのやり取りから伝わりやすい語法とはどういう表現がいいのか少しずつ分かりかけてきました。今井さん演じるキャラクターはとてもつかみにくい人物です。今井さんとは真逆の性格ともいえる人格です。極端な役割なので悩まれている様子。これまでも川津が過激な要望をしてきましたが、都度やり切ってくださいました。これは全メンバーに対しての心算ですが、今井さんが疑問に思われたところは全身全霊で応答していこうと思います。今井さんがどう役を消化してくださるかがたのしみです。

ゴーレムさんは、「キーマンと指標は演出側で作った方がいい」また「日常は舞台の場面内で描かないでそこで描き出されるシーンによって背景の日常が感じられるように役者が演じるものだ。また短い芝居の時間で人の生き死にまで扱うので表現は重奏に、また無駄なものはすべて排除するように」というアドバイスもありました。わたしなりに作品を通して応答していきたい。

この一年自主稽古という形を通して演出のいろはを教えてもらっている田口さんには今回から演出助手をお願いしました。その田口さんから稽古の後わたしの思い、方針の話を聞けてよかった。場が明るくなったと言ってくれました。

反省の多い一日でしたが、あらためてなづきという現場がわたしには必要なのだと光を見出すことができました。

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