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土地が人を通して呼びかけるもの

2023年4月30日(日)プロジェクトなづき吾野宿稽古

プロジェクトなづきの作品は都度作曲家に曲を書いてもらってきました。生楽器の演奏が主で、SEまでも楽器で表現してきました。そのため楽師は役者の動きを見るのに専念してもらうためできるだけ曲を暗譜するのがベストだったように個人的には思います。曲自体は聴きやすいながらも現代音楽です。西洋楽器での微分音、時に記譜法においては作曲者が確立、採用している音符を用いた独自の音楽言語の系を用いた楽譜。拍子を用いずにタイミングのみ記されている楽曲など人によっては暗譜しにくかったり、 作曲者の意図を解釈し、ほぼ確実に楽譜に忠実に奏したい職人肌のメンバーにとっては困難を強いる現場でした。
が、今回は趣向を変え、なづき立ち上げからのメンバーで、花、ダンス、DJもやる才人の今井歴矢さんに音楽をお願いしました。依頼した理由は、今回音響を担っていただくMichael's Winkさんの過日企画のイベントにおいて今井さんの自然音の扱い方、 今生きている/死んでいるということにフォーカスした音の使いかたに感心したからです。

久しぶりに吾野宿での稽古。Michaelさんが合流し、スピーカーを置く位置を今井歴矢さんと川津との3名で検討。ここで今井さんの用意した音源に問題が発生しました。今井さんの話を聞きます。春になって門の下にツバメが巣を作っていました。そういうものを眺めていたり、今井さんの方法、また台本分析から吾野の風土を生かしたある提案をし、彼は受け入れてくれました。生死をまざまざと感じさせる音を本公演では共に作っていけたらと思います。

稽古です。役者陣は本番の衣装を着込み、 化粧を施し、 第1章『門』の抜き稽古と通し稽古を行いました。『門』のオープニングでは、吾野宿に来なければとうてい浮かばない演出案が訪れました。伸枝さんがかすかに踊られていてなんとも嬉しかったり、上野憲治さんの現出させたパフォーマンスはさすがのセンスで、オープニングはバランスよく、見世物的なうつくしさが備わいました。 次にゴーレム佐藤さんと田口和さんによるやりとり。ゴーレムさんがいい意味で抑制の取れた演技力を発揮されており、田口さんは年齢設定を若めにして苦悩する役どころを丁寧に演じます。ここで伸枝さん演じる座敷童が登場していきます。年初この章をつくり始めたときはもっと恐ろしげでステレオタイプだった物語の構成が役者と土地の力を借り、心の根に沁みてくるようなシーンとなってきました。実はこの章のコンセプトは細かく決まってはいますが、 舞台上で演じられるのはそれを踏まえた即興です。ですからあまり練習をしない方がいいのです。なぜならば演技が再現性をもとめて固まってしまうからです。またこの場面においてゴーレムさんが伸枝さんに対してステキな提案をされました。当日が楽しみなシーンです。

いよいよ通し稽古。今までやってきた抜き稽古の場面を古民家の中庭、一階、二階、蔵、部分的に使うレストランに振り分け、通しながらその場で微調整していきます。そして川津の頭の中にしかなかった第3章『むこう側』の乱調を基盤とした後半の場面はそれまでの表現スタイルとは180度変わった方法に引きずり込んでいきます。

あらためて吾野宿公演『門』は川津だけの力では骨格を与えることは叶わなかったと思います。参加メンバーの力があってこそ、 ゴーレムさんのいうようにようやくなづきらしくなっていったのです。

Michaelさんは初めて見る、山田零さんの演技に感銘を受けたようです。山田さん演じる付喪神、罐助と、今井さん演じる付喪神、錦のゴールデンコンビは爆発的で、どこか薄気味悪いのに妙にかわいいのです。山田さんは勘助の独白/長セリフも作ってくれました。これは物語に厚みをもたらしてくれます。月読彦さんのアドバイスもあり、さらにブラッシュアップされるそうです。秀人演じる上野さんは演技に入ると、目の色や表情もガラッと変わるので、山田さんと異なる熱量を感じさせます。田口さんは川津が土壇場でセリフを大幅に変えたのに関わらず、信之の光と闇を見事に表されています。ゴーレムさんにおいてはライブハウスで見ることの出来ない豊かな演技力を公演ではお見せできると思います。伸枝さんの座敷童は童心とどこか憂いのある役作り、はかなさがにじみ出ています。伸枝さんには重要な長台詞を託しています。川津に関しては自分のことを自分で言うのは差し控えたい。ただこの間の通し稽古で田口さんに秀人とのシーンがとても良かったとのコメントを、ゴーレムさんからは乱調のシーンでようやくかわづちゃんになったねと言われました。川津なりに精進します。

今週は合宿を含めた3日間連続の稽古があります。メンバーで力を合わせて作品の精度を上げていきます。

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