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「第26回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」@川崎市岡本太郎美術館

一抱えくらいのパネルが6枚横並びになった、一続きの細長い画面には、その境を時にまたぐように、時に収まるように小さなパネル (その中にも、大小の、厚い薄いの差がある) がコラージュされていて、その表面には、キャンバス地のテープ? や、擦れた後のような薄墨色の線が走っている。
千原真実さんのこの作品は、前に「SUPER OPEN STUDIO 2022」(@相模原市各所, 2022年11月12・13・19・20日) で、REVというスタジオへお伺いした際にたしか拝見していて、その時とは、向かって右側から二つ目のパネルに貼られたテープの形が違っていたり (今は三角帽子みたいになっているけれど、写真を確認すると、オープンスタジオの時は、その三角が下を向いていて、欠けたところに嵌って四角になっているようだった)、その左隣のパネルでは、写真が不鮮明で分かりにくいものの、二段から三段にパネルが増やされていたりするものの、一番の違いは照明だった。
スタジオのやわらかな光の下では、直方体の輪郭がねずみ色に引き伸ばされたような淡い影が載っていたのに対し、美術館のライトの下で見ると、薄い影と共に、濃いくっきりとした影も落ちていて、特に、左から二番目の分厚いパネルの横から出ている耳みたいなテープ、その影が焼き付いたように鮮やかで、パネルから出ているもう一組の耳のようだった。
全体を見回すと、小さなパネルが、一回り大きな下のパネルに落とす影も、塗り分けられたように鮮烈で、表面に走る薄墨色の線のやわらかさとの対比が面白く、影をもコラージュしているかのよう。

少し離れた位置にあるガラスケースには、三つの “ドローイング” ともいうべき作品が平置きにされていて、その上には、それぞれ小石や繊維、紙の切れ端などが散りばめられている (この作品も、写真として残ってはいないものの、オープンスタジオで拝見した気がする)。

ガラスケースの白さもあいまって、これら3つのコラージュ作品が、あたかもケースを支持体としてコラージュされているようで、そう見え始めると、先ほどの横長の作品も、それが掛けられている仮設壁もろともひとつの巨大作品のように思える。
そして、その壁とガラスケースが、離れてはいるもののだいたい直角を成すように配置されていて、俯瞰してみれば、千原さんのエリア、その矩形に施された、これまたひとつのコラージュのようで、さらに広げると、展示室全体が、競作のコラージュのようにも思えてくる。

先日拝見したグループ展「Artist’s Network FUKUOKA 2023 [第二部] ニュー・ニューウェーブ・フクオカ」(@高架下スタジオsite-Aギャラリー,2022年3月10日~26日) でも、窓辺の柱へ直に貼られたキャンバス作品は、その柱を支持体に変えてしまうようだったし (ちょうど窓越しに落ちた日差しも、コラージュされているようで)、奥の大作に至っては、畳ほどの大きなパネルと、棚板ほどのパネルが横並びになった画面をなぞっていると、あるところから壁面そのものへと変わっていって、作品が “作品” という殻に閉じ籠らず、外へと浸透し拡大していく様は、静かでありながら壮大さを秘めている気がする。

太郎美術館を後にし、お隣の日本民家園へ寄り道すると、各地から集められた民家が一堂に会していて、千原さんの作品を見た後では、大きな大きなコラージュに見えてしまう。

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