見出し画像

体罰、いじめ…

「ことばと文字のセミナーから」

昨年行われた「ことばと文字のセミナー」後半、参加されたされた方々にある詩を朗読させて頂きました。母が子を思う詩であり、子どもが母を思う詩でもありました。参加された皆さんが胸を熱くし、多くの方が涙を流しました。昨年暮れ行われたNHK紅白歌合戦、今大きな反響を呼んでいる美輪明宏さんの「よいとまけの歌」が、セミナーと重なる部分があると言われました。心をテーマとし、ことばの大切さを訴えたセミナーでした。ことばは、子ども達の心を作る、だから、子ども達の心に訴えかけられる「ことば」を伝えよう。母親のことばが、父親のことばが子どもの心に与える影響は大きい筈です。

よいとまけの歌が若者の間で話題となっています。年配者ではなく、何故若者達の間で評判なのでしょうか。美輪明宏さんに対するイメージが変わったと若者は言います。子ども達の生活を守るために汗水垂らして働く母親の姿を、また、母親の気持ちを代弁する働く姿から、無言のことばを受けて成長する子どもの姿がこの歌から想像できます。豪華な衣装もなく、派手な演出もなく、煌びやかなステージでもなく、モノトーンの中で歌われた歌から、多くの人々が感動を受けました。この歌の背景にあるものを感じ取れた若者達に、私は感動します。歌というものの力を感じました。学ぶ意味、働く意味、生きる意味、自問自答しながら現在を生き抜く若者達にこそ、年配者が忘れかけている心があるように感じます。もう一度、子を思う親の気持ち、親を思う子の気持ち、その原点に私達は戻らなければなりません。それが、人を想う気持ちの原点だからです。

学校の名声、指導者の名声、勝利至上主義がもたらした結果はあまりにも不条理な結果となってしまいました。大津の中学生の自殺以来、とうとう現場の教師が直接加害者として責任を問われています。今、問われているのはいじめ問題や、体罰の是非ではなく、人として、それぞれの立場から、他の人をどう見なければいけないのかということが問われているのではないでしょうか。親の責任、教師の責任、その職業に就いた者の責任、そして、大人の責任が問われているのです。物質的に恵まれても、それが幸せに直結しない事を皆が知ってしまいました。だから、震災後「絆」ということばが意味を持ち始めたのです。形あるものばかりが全てではありません。形無いものの中に、「心」「希望」「願い」「想い」そして「愛」があります。失われてしまった命は二度と返ってきません。ご両親の事を想うと胸が張り裂けそうです。今回の体罰による自殺に関し、その問題となる事柄は、私達大人一人一人に向けられたものではないでしょうか。

2013/1/10


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?