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「特別寄稿:わたしがいる、あなたがいる、なんとかなる➓」by藤原 辰史

「特別寄稿:わたしがいる、あなたがいる、なんとかなる➓」

クラファン終了まであと4時間!。抱樸とさまざまな形で関わる皆様に、抱樸にまつわるテーマから、自由な形式でご寄稿いただく企画。第➓回は京都大学准教授で歴史学者の藤原 辰史さんです!ぜひお読みください!



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「希望のまち」

行き場のない人、希望を失った人、そんなひとたちが、あたたかい味噌汁で胃袋を温め、だれかのあたたかい言葉で心に火がぬくもり、自分を肯定するきっかけを作り、だれかのあたたかい言葉で心がぬくもり、生きていく気力を取り戻す。

こんなまちが日本中にできると、困る人たちが出てくる。

世の中にはもっと困った人がいるのだから、君は恵まれていることを自覚しなさい、と言って賃金の低さやサービス残業を正当化する人たちは、その「困った人たち」が希望のまちでつぎつぎに「希望を持った人」になるので、もう賃金を下げられないし、やりがい搾取もできない。行き場のない人たちへの援助を自分の高級腕時計や高級車を購入するためのビジネスにしか考えていない人たちは、自分の金蔓と虚栄心を失うだろう。

ただデスクに座ったり、人に指図したりするだけで大量の報酬を受け取る天下りの人たちは、希望のまちではたらく人たちや暮らす人たちがあまりにもまぶしくて、自分の生きがいのちっぽけさに気づき、辞表届をしたためるだろう。

そうやって、企業で威張るだけがとりえの人やエセ福祉事業者や天下り官僚たちも、自分がはずかしくなって、近所の希望のまちにやってくるかもしれない。

そこではじめて、ひとのためにはたらき、まなび、わらうことが、どれほど自分の心を満たすのかを知るだろう。

希望のまちの最終的なミッションは、貧しき人々の救済ではない。この世界に蔓延してひさしい、貧しき精神の救済なのだ。

藤原辰史 (京都大学准教授)

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