八幡から高炉の火が消えるかも?

知人が日経の記事のコピーを送って来て、「八幡から高炉の火が消えるも名古屋製鉄所の高炉は2基を継続すると書いてある。如何なものですか?」と問うて来た。質問の趣旨は降下ばいじんの元凶である高炉を1基廃止or2基全廃を選択すべきと考えて、OBである私に意見を求めてきたわけです。
私は日鉄の経営者ではないので事実は知らないが「高級鋼は高炉で、中低級鋼は電炉で」というコンセプトにあると思っています。日鉄は自動車向けの超ハイテン鋼材の拠点として名古屋に総額2,700憶円の巨費を投じて次世代熱延工場の建設をし、2026年度末の完成を目指している。周辺工事は既に始まっており、GoogleMapで確認しております。名古屋の生産規模は年産600万㌧であり、高炉1基、電炉1基(400㌧)では賄いきれないと私は試算している。高炉の原料である鉄鉱石と石炭に加え、電炉用のスクラップを製鉄所に搬入する経路に難があることから名古屋は高炉2基に落ち着いたのでしょう。愛知県田原市にある東京製鐵㈱田原工場は低級鋼から中級鋼へと舵を切っており、トヨタに見捨てられないためにも高炉2基は必至ですね。
1980年代の鉄鋼不況の頃は何処の製鉄所の高炉の火が消えるのか製鉄所長や立地市長は戦々恐々でした。高炉は最低でも2基装備していたが1基になった所が生まれ、「新1本製鉄」と揶揄されたことを思い出しました。その対象になった釜石製鉄所は猛烈に反発し、八幡(実際は戸畑)も近代製鉄法の発祥地として高炉を保有している。八幡区東田地区に1901年と言うロゴを着けた高炉が残してあります。そばにスペースワールドと言う宇宙基地を模したレジャー施設もあったが10年前に廃止しました。高炉とサターンロケットが並んでいたのが不思議な思い出になっていた。
私は北九州市の近くで生まれ育ったし、堺製鉄所、君津製鉄所、東京製造所、名古屋製鉄所と渡り歩いた。名古屋は東海製鐵㈱に始まり、長い間妾の子のようで肩身の狭い地位にあった。20年前からトヨタを始めホンダ、三菱自への鋼材供給をバックにその地位を高めて、近年は社長~役員に名古屋育ちが名を連ねている。
15年前、田原にコージェネ設備の保全工事のために出向いている時、東京製鐵㈱田原工場の建設状況を、その後、東京製鐵が小牧や春日井で営業活動を盛んにやっていることを日鉄の役員に知らせた。
名古屋製鉄所には製鋼の2次精練設備(LF)を建設した時に建屋の壁の温度上昇と言うトラブルに見舞われた。要は電極用ケーブルが壁の鉄筋を誘導加熱することに気付かないで施工したためです。大型電炉化にはいろいろと課題もあり、名古屋はノーサンキューしたと思います。


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