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2024年の日記2(1/4-1/9)

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諸々の事務作業。途中、郵便局に行ったりして、小学2年生の甥っ子からもらった年賀状の返事を書くなど。

千葉の自宅にはテレビがないが、家で机に座っていても気がつくとインターネットで被災地の状況や羽田空港の衝突事故の続報を延々と調べてしまう。

母親の差し入れの一つにオイスターソースがあったので、夕飯はコウケンテツさんのレシピで豚肉を使った青椒肉絲(チンジャオロース)をいづみさんとつくる。かなり美味しかったので、リピート決定。


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東京に行く計画をしていたけど、年始からの社会の動きに不安を感じて予定を変更。

家から一番近いシネコンでヴィム・ヴェンダース監督「PERFECT DAYS」を鑑賞しに行く。封切り映画を映画館で観るのは「君たちはどう生きるか」以来。面白そうだなぁくらいの期待感だったけど、期待を遥かに超えた素晴らしい内容だった。隣で観ていたいづみさんも、放心するほど感動していた。

役所広司演じる魅力あるエッセンシャルワーカーの日常をドキュメンタリー的な視点で描いているだけでも抜群に面白いし、現代社会に対する批評的なメッセージも随所に散りばめられている。何より自分が驚いたのがアニミズムを劇映画としてこれだけ美しく、詩的に表現していたことかもしれない。

特に、夢の中で何度も顕れる木漏れ日のイメージは、モノクロームで表現されることで影絵となり(それはまさに映像の起源でもある)、無意識の記憶として残像化することに成功している。自分がつくるアート作品でも、木漏れ日の映像はクリシェのように何度も扱ってきたけれど、この演出には非常に共感できるし、はっきり言ってアートだなと思って観ていた。そしたら実際にエンドクレジットでは、木漏れ日が多用される夢の場面が「インスタレーション」とクレジットされていて驚いたし、木漏れ日を撮影したのがヴェンダース監督のパートナーのドナータ・ヴェンダースだと知って更に驚く。

幸田文の名著「木」の文庫が劇中に登場したのも至極納得したし、これ以上ない選書だ。古書店の100円コーナーという商品的に無価値に近い書棚から発掘された文学作品に光を当てることにより、作品のコンセプトが静かに重層化される。とにかく個人的には、お正月映画としてこれ以上ないほどぴったりの映画な気がしていて、良いタイミングで鑑賞できて幸運だった。

その後、氏神様である香取神宮へ。予想通り駐車場に辿り着くまでにすごい渋滞だったけど、何とか粘って駐車に成功。参拝客で賑わう雰囲気の中で参拝することができた。毎年、年始の混雑を避けてだいぶ日にちが経ってから参拝しに行っていたけど、1月5日の参拝は過去最速。新年の神札も手に入れられて、新しい年が始まった感じが強まる。


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いづみさんがSNSで見つけた、能登半島地震被災地への支援物資募集に協力するため、カセットコンロとガスボンベを近所のスーパーで調達して、発送する。知らない方の投稿だったけど、集荷先が同じ千葉県だったこと、富山県の方がピックアップして、被災地にまとめて運んでくれるという内容だったので、少しでも力になりたいと思って行動した。支援団体に義援金を振り込むなどの方法もあるけれど、まずは今すぐに自分たちが出来て、即効性がありそうなことに協力できて嬉しい。被災地で役立ててもらえますように。

その後、神栖市のスターバックスで作業。今月21日の横浜市民ギャラリーでやるワークショップの準備や、日記をまとめて書くなど。


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一昨日の映画鑑賞後、余韻が冷めない内にネット通販していた。「PERFECT DAYS」を特集したSWITCHのバックナンバーをじっくり読む。
やはり時間をかけて編集された雑誌を読むのはとても贅沢な時間だ。SNSも含む、インターネット上の無料のテキストだけ読んでいると、精神が次第に貧しくなっていくように感じるのは僕だけではないはず。
映画そのものも素晴らしかったけど、作られたプロセスを知る、辿るというのは、どんなジャンルのものでも多くの学びがある。

午後、重い腰をあげてアトリエの本棚の整理に取り掛かる。
溢れかえっていた状態から、並べ替えたり、間引いたり。一冊ずつ蔵書と対話する時間は本当に愉しい。それにしても読んでない本の多さといったら。今年こそは集中的に本が読めたらいいなと切実に思っている。
気がついたら夕飯の時間までつづけていた。

終日外出せずに過ごした日曜日だったけど、頭も心もすごいスッキリする。


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今月21日に開催する横浜市民ギャラリーでのワークショップの準備。
ワークショップで使用する日用品の選定や、同じくモチーフとして使用する横浜美術館のコレクションを検索。そうこうしている内に、あっという間に一日が経つ。ついつい細部にこだわりはじめ、時間をかけすぎてしまうのは自分の悪い癖。時間を忘れて、とことんやってしまう。

寝る前に、kindle版で購入していた「新対話篇 ゲンロン叢書」の高橋源一郎さんと東浩紀さんの対談を読む。東さんと複数のゲストによる対談本だが、頭から読まずに直感で高橋源一郎さんの頁までジャンプする。
冒頭で高橋源一郎さんが、震災以後、「忘却」が時代のキーワードになっている、という言葉を発していてハッとする。他にも興味深い話がいくつもあって、直感は間違いではなかった。自分に今、必要な情報なのだろう。


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アトリエとして使っている部屋の、塗り残していた壁のペンキ塗りをする。
いつから塗り残していたか振り返れば、2021年以来なので実に3年越し。
いやはや恐ろしい。塗る壁面以外をマスキングテープで養生して、白いペンキを二度塗りするだけなのに、それだけで終日かかってしまった。そして天井に近い高い箇所をひたすら塗っていたので、単純に腕が痛くなる。

展覧会では、壁や什器をインストーラーの方達に当然のように白く塗ってもらっているけど、何かを白く塗るだけでも手間や労力がかかることを実感。久しぶりに自分に出来る範囲でDIYすると、普段してもらっていることに対する感謝の気持ちが湧きあがって、謙虚になれる。

アトリエの壁塗りは、YCAMでの作品制作が終わってからのやりたいことリストの一つだったので、やりたかったことが一つ達成できたことに満足。
何よりアトリエが格段に明るくなったし、一日費やす価値はあったように思う。思い切ってやってよかった。

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