マドリードから、冬のシチリアへ

2021年12月9日 03:45

シチリアを旅行した。
マドリードからパレルモへ、ライアン・エアの直行便で2時間と少し。パスポートコントロールもなく、現状としては、EUのCOVID証明書があれば国内線の感覚で行ける。
目的は、映画『ゴッド・ファーザー』ゆかりの地を訪ねることと、シラクサの遺跡めぐり。

飛行機はほぼ満席だった。スペインは連休だったので、旅行客が多い。機長のアナウンスに合いの手を入れたり、パレルモに着陸すると拍手が起こったり、楽しげな機内だった。
空港で、私たち（夫、11才の娘、7才の息子、私の4人）は予約していたレンタカーを借りた。その後の行程では、パレルモ、シラクサ、タオルミーナに1泊ずつした。

・パレルモ

夕方に着いて翌朝には出発したので、滞在は短い。
旧市街に宿泊し、夜にマッシモ劇場方面を歩いた。『ゴッド・ファーザー3』で、ソフィア・コッポラが撃たれる場所。”Dad...”の場面である。劇場の規模は世界で3番目ということで、それがたとえばローマではなく、この島にあるということに驚く。シチリアが歴史上、ただの島ではないことが伺える。今回は中に入らなかったので、いつか再訪して観劇したい。

あちらこちらの通りで、街路樹のオレンジが実っていた。スペインのコルドバでも見た光景だが、やはり気になるのは、この果実の所有権。誰が収穫するのか、それとも放置されるのか？

・シラクサ

パレルモからシラクサへ向かう途中、エンナの街のすそを通過した。すそというのは、エンナは山の上にあるのだ。低い雲を背景に、まるで空中都市。切り立った崖のぎりぎりまで家が建っている。その立地は不便だと思うが、街の守りを堅めるためだったらしい。あの家々の窓からの眺めを見てみたいと思った。
下の画像は、エンナほど高くはないが、岩山の上に築かれた町。（エンナは道から遠くて、写真は撮れなかった。）

シラクサでは、本島から短い橋を渡ってオルティージャ島に入った。
歩いて一周できるほどの小さな島全体が、趣のある建造物で構成されている。博物館などにある、昔の街並みのジオラマの中に迷い込んだかのような感覚。

夕方、夫と二人で歩いてみた。
アレトゥーザの泉（上の画像2枚目）やドゥオモ広場（上の3枚目）といった名所も興味深かったけれど、印象に残ったのは、島の突端から眺めたイオニア海。雲が多かったが、水平線近くに切れ間があり、夕日で淡いピンク色に染まっていた。穏やかな海にその色が溶け込んで、なんだか夢のような光景だった。これが夏であればバカンス客でいっぱいなのだろうが、冷たい風が吹く岬には人影もまばら。これは自分だけの夕暮れという気がした。

翌日、本島の考古学公園を訪ねた。ギリシャ、ローマの劇場や祭壇などが点在する広い公園。
古代の石切場、デュオニシオスの耳（下の画像）が印象的だった。可能なら内部に進んでみたかったが、このところ雨続きだったせいなのか、入り口に池のような水たまりができていて難しかった。

日本で住んでいたあたりにも、山の中に古い石切場があった。ある時、少しだけ入ってみたら、真夏だというのに冷ややかな風が奥から吹いてきて、なんだかそれ以上は踏み込めずに引き返した。「デュオニシオスの耳」も、近づいてみるだけで空気が冷たかった。声が反響して、吸い込まれそうな感覚を覚えた。
公園内には、様々な植物に混じってウチワサボテンが生えている。シチリア中で見かけた。姿はメキシコにあったものと同じ。外来種として自生している。

・タオルミーナ、サヴォカ

ゴッド・ファーザー関連で訪れた場所。タオルミーナ周辺に、映画の撮影地がいくつかある。そのうち、サヴォカという村を訪れた。

シラクサでもそうだったが、駐車料金を払うのに一苦労。スペインと同様、路上駐車して自動支払い機で前払いするのだが、説明はイタリア語のみ。自動翻訳で英訳して、なんとかやってみた。現金の持ち合わせが少ないためカード払いにしたかったが、カード払い向けのインストラクション通りには動作せず、諦めてコインを入れたらすんなり払えた。この機械は現金がほしかったのだろうか。
村に入ると、いきなり、映画に登場するカフェが建っている。アル・パチーノが立ち寄る店だ。今も営業している。

それから、山の上にあるサン・ニコロ教会へ。最初の妻との結婚式の場所だ。
子どもたちが「つかれた、帰ろう」と言って動かないので、息子をおんぶする。重い。けれど、教会には行きたい。さすがに11才の娘は抱っこもおんぶもしてあげられないが、息子を背負う私を見て、心中を察してくれたのか、彼女も歩き始めた。ありがとう。
教会へは、狭い坂道を登ってたどり着く。海が見渡せる崖の上の、小さな場所。こんなところで、機材や大勢のスタッフがどのように動いていたのか想像できない。