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花と卵

仕事で送別の場面があり、花束を注文した。本当は自分で買いに行きたかったが、店に行く時間がなかった。そこで、花屋のウェブサイトの写真を見ながら電話でデザインを指定し、他の人に取りに行ってもらった。
私は花の色合いが気になっていたので、届いた花束を見て、淡いピンクと紫のきれいな取り合わせに満足した。
が、いざ、それを渡す段になって、ふと花束に目をやると、なんと花が古い。ガーベラに似た花が、見るからにしおれている。花びらが舞い散りそうだ。その種類だけで、ほかの花は問題ないのだが、それでも目に付く。
こんなことがあるのか。少し無理してでも自分で買いに行けばよかった。せめてもう少し早く気づけば、お店に交換に行けたのに……。
しかし、もう後の祭り。なるべくさりげなく渡した。
その花束は「送別のシーンにあるべきだから用意されたもの」であって、しげしげと見る人はいなかった。むしろ、花束が注目を浴びたのはたったの数秒。でも、受け取った人はそれを持ち帰って、「せっかくだから花瓶にいけようか」などと考えるはずだ。一番美しい瞬間を過ぎた花を見て、がっかりするかもしれない。
ちゃんと自分の目で見なかったことを後悔した。

あとで考えていて、卵のことを思い出した。
スペインで卵を買うと、かなりの確率で、ヒビが入っている。割れて卵白が漏れ出していることさえある。少なくとも私の経験上は、どこのスーパーでも状況は同じ。だから、卵を買うときは、①透明なプラスチック容器のものを選び、ヒビがないかよく見て、②持ち上げて軽く振って、卵が動く(漏れた白身が乾くと、卵は容器に張り付く)ことを確認して買っている。
けれど、この間、「その手があるか」と思う場面に出会った。他のお客さんが、卵のパックを開けて(簡単に開く仕様になっている)、卵を一つ一つひっくり返して確かめていたのだ。野菜売り場にあるビニール手袋をはめているので、衛生面も問題ない。

花も卵も、目で見て確かめるのが大事。


タイトル画像は、夏に訪ねたユトレヒトで。
屋台のひさしの下に、ぱっと明るいひまわりたち。
こんな元気いっぱいの花だったらよかったなぁ。

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