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「スネア分からん」という人の為に

「弘法筆を選ばず」とか言わない

ジュニアオケや小中学校の音楽科にちょいちょいと顔を出すことが多いのですが、まぁ小太鼓がしっかり整備されている学校や団体の少ないこと。多くの場合で音楽科の先生やいわゆる「顧問の先生」は打楽器のことサッパリ、というケースが多く、仕方ないっちゃ仕方ないのだけど合奏で「小太鼓、もうちょいサッパリした音出せない?」とか言われてる生徒見ると「その前に!小太鼓を!整備しろ!!」と助けに入りたくなることも多々。
そして大抵の場合で「楽器の悪さは腕でカバー!」みたいな根性論が飛び交うことの多いこと…。自分がそれこそ中学の頃でも「弘法は筆を選ばないんだよ!」とか言われた思い出あります。これ、金をかけたくない大人側の都合に良い言い訳として使われてるの弘法も不本意極まりないと思うんですが…。この言葉使ったことのある教育者、マジで恥じてください。正しいツールを選べる力、というのはとても大事です。

コンサートスネアとドラムキットスネア

一昔前…いや二昔も三昔も前かしら?その頃にはドラム用のスネアを魔改造してコンサート用に仕立てるのが流行ってたのは認めます。未だにオールドスクールな奏者で、キット用スネアを工房に持っていってベアリングエッジやスネアベッドを改造したりフープ変えたりとマニアックなことやって自分オリジナルのコンサートスネアを仕立てる人います。が、声を大にして言いたいのは「初学者にそれは無茶やろ」ということです。
ここ最近のコンサートスネアの進歩、目を見張ります。完全に別物です。特にストレイナー機構と響き線まわり。「安いから…」とか言って適当なスネア買わないようにしましょう。世の中の大半はキット用です。コンサート族は少数派です。元気を出してノイジーマイノリティになっていきましょう。
「中古で他人から貰って…」とかいうスネアを使ってて「何もらったの?」と見てみたらNoble&CooleyとかBradyとか古いLudwigでドラマーが「なんちゅー勿体ないことを…!」と怒るような代物でした、みたいなオチ、よく遭遇します。コレクターにでも高値で売っ払ってちゃんとしたコンサートスネア買い直しましょう。

何が違うの?

多分一番ざっくり分かりやすいのは響き線そのもの。キット用には必ずと言っていいほどコイル線がついており、コンサート用は大抵ストレートケーブルタイプです。もちろんジャズ奏者とかでストレート使ってる人もいるので例外はありあり。「コンサートでもコイル使って何が悪い!」みたいなのはもちろん分かるんですが、どこのプロオケも必ず一台は持っていると言われるほど大人気のPearl Philiharmonicシリーズコンサートスネアが2021年の改修でほとんどのモデルからついにコイル線全廃したんすよ。そういうことです。
後は皮もコンサートは基本的に薄めしか使いません。「打面は厚くないと胴が鳴り切らないだろ!」という人達はいますがそういう人達には「じゃあエンペラー(極厚)使ってキージェやってみろよ」と言って黙ってもらいましょう。

コイル型とストレートケーブル

安くても高性能!国産スネア

お店によっては「コンサートスネアです」と謳っておきながらフッツーにキット用スネア並べてたりもするので買うときは要注意。いやまぁそういうのは「胴の性能が良いので改造すればコンサート用にできます」レベルのものなのでこれまた初学者には不要中の不要。ていうかそういうの大抵目が飛び出るほど高いので…。
10万以下で実はプロ御用達のPearl Philiharmonicが買えちゃったりするんですよ。6万程度あればPearlの廉価モデルのConcertシリーズ買えたりもします。TAMAもおよそ9万以下で廉価版のStarphonic concertシリーズとか出してます。結構Pearlの影に隠れちゃってるけどこちらもかなり高性能。どちらもストレートケーブルが標準装備のばっちりコンサート仕様。
天下のYAMAHAもかなり安いコンサートスネア出してたような気がしますがあまり詳しくないので割愛。
なんとなく輸入モノを有難がる風潮というのはあるんですけど、実は一歩国外出てみると日本モノって非常に有難がられていたりもするので国産品に是非目を向けてみて頂きたい。

胴の素材は?とかフープは?とか言う前に…

胴ひとつとってもスネアって種類が豊富。バーチ、メイプル、ブラス、アルミ、ブビンガ…ここに書き出すと非常に長くなります。さらに合板、削り出し、スチームベントなどなど訳の分からない製法によって音が違うので目が回ります。……が!とりあえずそこまでこだわる前にまずやることあるやろ、という方が強いのでまずは気にしないでみて欲しい感じ。初学者はもちろん、プロですらスネアの音一発バーンと聞いただけで「あ、この音はメイプルだな?」とか分かる人のほうが少ないです。フープでの音の違いとか、同じ太鼓並べてフープだけ変えて比べてやっと分かる程度。
とりあえず予算で困っている団体の方が多いはずなので安くて5インチ前後の深さがあれば十分でしょう。後よく見る「木製の胴じゃないと駄目!フンガフンガ!」というタイプ、無視して結構です。アルミ胴の汎用性すごいっすよ。

「新しいスネア買う金ねぇよ!」という場合は…

多分そういう状況の団体や学校の方が多いんだろうな、とは思います。心配せずとも割りとサクッとパーツ変えてチューニング整えるだけでそれっぽい音にはなります。表、裏、響き線変えても1万半から2万にはスルリと収まります。大事になってくるのは下記4項目:
①打面
②裏面
③響き線
④チューニング

①打面のお話

打面も裏面も、「厚さ」というのが大事になってきます。よくよく色んな会社のホームページをじっくり眺めると「10mil」とか「7.5mil」とか書いてあるのが分かるかと思います。この「mil」というのは1000分の1インチという単位になります。「ミリメートルじゃねぇのかよ」って言いたくなりますね!
こいつが10以下、出来れば8前後のものを選ぶとハキハキとした音が出るスネアが作りやすくなります。7.5milだとREMO社で言う「Diplomat」という厚さになり、よく使われています。Diplomat、よく勘違いされているんですがそういう名前のシリーズとかモデルじゃなくて、厚さの呼称です。Diplomatのルネッサンス、とかDiplomatのコーテッド、とか色々あります。ルネッサンスあたり手に入りやすくて使いやすいと思います。EvansだとOrchestralシリーズというドンピシャな名前のものがあるので700とか良いんじゃないでしょうか。Aquarian社は基本ドラムキット向けなので避けた方が…あ、国内ではASPR社という比較的新しいドラムヘッドメーカーがあってコンサート向けのヘッドも出しています。

②裏面のお話

裏面用のヘッドは打面とは全くの別物なので何をどう間違えても打面ヘッドを裏に張っちゃいました!とかやらないようにしてください(白目)
コンサート用はこれまた薄ければ薄いほど良い、みたいなのはよく言われます。コンドームみたいですね!とか言いたい。言っちゃった。
一番薄くて2mil、REMO社からはDiplomat Hazy、Evans社からはOrchestral 200Snare side 200なんていうのが出ています。このあたりが鉄板。裏面が厚いと響き線の反応が悪くなりやすいのであんまりオススメしません。REMO社のEmperorのスネアサイドとか5milもあって完全にヘヴィーヒッターのキット用です。全力で避けましょう。

③響き線のお話

まずはコイル線は避けましょう。なんでかって?すぐお隣で大太鼓がドーンといったりホルンのベルがこちら狙ってブォーンと吹いてきたりするとザザザザ…と共鳴してうるさいんです。バズるってよく言います。Twitterではバズりたいですがコンサート中は勘弁願いたいですね。またストレート線の方がコンサートで使う音量の域によく合い、ドライで粒立ちのいい音が出しやすいです。
響き線そのものは別売りしている会社が多く、最近の流行りだとBlackswamp Percussion社のコイツが割りと誰でも使ってるかな?という感じ。ただしコイツは結構「許し」の無い冷酷無比な響き線なので、ちょっと怖いなと思ったらGrover社のストレートケーブルも初学者には悪くないかも?Grover、昔はブロンズのストレートケーブルとか出してたのに生産中止しちゃったんだよなぁ……

④チューニングのお話

なんだかんだ言ってチューニングが物を言う!という部分もあります。
チューニングに関してはYouTube行くと自分みたいなその辺のプロ(笑)の万倍もうまい人達が色々レクチャーしてくれてるので見てみると良いと思います。ドラマーのチューニングビデオじゃなくてちゃんとコンサート奏者のビデオ見ましょうね。ドラマーのチューニングはまた別よ。
基本は裏面を打面より高く、よく見るのは打面をAに、裏面をその5度上のEに…という人。もちろんここから個々のスネアの特性や曲に合わせて調整するのだけど。とりあえず見ておけば間違いないのはコレとかコレとか。
「そんなチューニング邪道だ!フンガフンガ!」とか言う先生には「へぇー、先生、読響の首席やMETオケの首席より詳しいんすねー」と言って黙らせましょう。

まとめ

短くしようとして色々かっ飛ばしたので詳しいことは身近な打楽器奏者に聞いてみてください。そして「弘法筆を選ばず」とか言わずにちゃんとした機材を子供たちに使わせてあげ、ついでにそのレア物スネアをドラマーの手にさっさと戻してやるんだ!!