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オオルリ流星群~High Jumpの読書記録~(ネタバレあり)

High Jumpの読書記録のコーナー!

今回読了したのはこちら!

伊与原新先生の「オオルリ流星群」です!

「月まで三キロ」、「八月は銀の雪」など気になっていた作品は多かったのですが、どれも短編集だったこともあり、短編集かぁと思っていました。そんなある日、本屋で新刊コーナーを見ていると、伊与原先生の新刊が出ていて、中身を少し確認したところ、短編集ではなかったこともあり、気になって購入しました。

「スイコ」こと山際彗子が故郷へ帰ってきた。太陽系の果てを探すため、手作りで天文台を建てるというのだ。彗子に協力することとなった種村久志ら旧友たちは、28年前の青春の日々に思いを馳せる。だが、やがて高校最後の夏の真実が明らかになり……。迷える大人たちは、切ない過去と、行き詰まった日常を乗り越え、再び前進することができるのか?

帯より引用

2019年に京都大学の研究グループが小型望遠鏡を用いた観測によってエッジワース・カイパーベルトに微惑星の生き残りと考えられる極めて小さな天体を史上初めて発見したという実際の出来事に伊与原先生自身が感銘を受け執筆したというこの作品。もちろん作品を読んでいく中でエッジワース・カイパーベルトとはなんなのかも分かるのでご安心を。星が物語の鍵になっていることもあり、流星群などが極大を迎えるときには、流れ星を見に山に行ったりする自分には好みの話だったし、他にも掩蔽、流星電波観測、ミニFMなど理系要素がほどよく混ざっていて興味が湧くし、物語を引き込む謎や、チームで何かを成し遂げるという青春中のわくわく感もあり、とても面白かった。
物語の登場人物のほとんどが40代半ばとおじさんおばさん中心の話であるのにもかかわらず、若い頃のようにみんなで目標に向かって進む姿に、若いから楽しかったなんてことはなく、いくつになっても、何事も楽しめるし、楽しめるかどうかは、本人の気持ち次第なんだなと感じた。中年になってもやりたいことがあったり、かつての友人と遊んだりする生活が送れたらいいなぁなんて思ったり。
また物語の根幹である、恵介の自殺の理由について、メンバーが考えた推測に、「いやぁ、だとしても自殺までするかなぁ」と恵介の気持ちを全く理解できなかったが、物語が進み、恵介の過去が明かされて行くにつれて、自殺の理由も自然と納得してしまい、人って分からないもんだよね、と改めて感じてしまった。

いつも通り、印象に残ったところを1つ紹介しようと思います。

メンバーの一人である千佳は、市内で中学校教師をしていて、子供もいる母親でもある。そんな中、天文台作りに日々せわしく活動している千佳に対して、次からお義母さんには仕事で出かけているといってくれと頼む夫。理由を聞くと、千佳自身が姑に嫌みを言われたら嫌でしょ?という。別段そんなことには慣れているため、なんとも思っていない千佳は、夫自身が私を思って言っているのではなくて、自分のストレスを排除するために言っているのだなと感じてしまう。そんな中での文章。

その態度の根底には、千佳に対する甘えがある。両親のことも、子供たちのことも、最後には千佳がなんとかするだろう。口に出さずとも、心の奥底でそう決めてかかっている。そして、人間というのは、甘えている相手のことを親身になって考えたりはしない。

自分の両親を見てても感じることが多くて、なるほどなぁと思いました。父親は何かと母親に甘えているなぁと感じていることは多かったので。そんな大人にはなりたくないと思っていたんですが、自分も同じようなところが垣間見える出来事があって、最近落ち込みました(笑)信頼したり、大切に思っていると、その人も自分と同じように扱ってしまうところがあって。自分のことは後回しにしてもなんとも思わないタイプなので、同じようにその人のことも後回しにしてしまうんですよね(笑)大切だからこそ一番に考えないとダメなんだなとここを読んで改めて感じました。
なんかこれって日本特有の「愚妻」と呼ぶ文化だったり、「つまらないものですが」って言ったりする風習に似てませんか?自分をへりくだることは自分の身内、ものまでへりくだるっていう。となるとこの文化は「悪しき風習」に分類されるんですかね?
いやいや、別に使う人がそこの分別をわきまえればいいだけですね(笑)

伊与原先生の作品は初めてでしたが、とても良く他の作品も読んでみたくなりました。特におじさんになったら楽しいことなんて何もないよなと感じている若い人たちに読んで欲しいなと思います。全然そんなことない!って思えると思いますので。
読書ってすればするほど読みたい本が増えて、沼からどんどん抜け出せなくなりますよね、これが読書のデフレスパイラルなんでしょうか(笑)
ではまた次回、バイバーイ

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