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キャッチ&リリース詐欺?ちょっと変わった江戸商売『放生会』の話。


江戸では、フリーター・自営業の方がほとんどでした。
実質元手タダで明日から働ける!みたいな工夫とアイディアで乗り切れる商売がたくさんありました。
本日はそのうちの一つをご紹介。


亀が桶の取っ手に縛られてぷらーんとしてますね。
この亀を使った商売

『放し亀売り』

という商売がありました。
同じ系統で 放し鳥(雀)、放し鰻売りというのもあります。

川や道端で生き物を捕まえて、籠や桶に入れて、客に一匹四文(100円)くらいで売ります。購入した客は、亀をペットにするでもなく、食べるわけでもありません。

近くの川まで連れていって逃がしてあげるのです。

え?! と思いますが、
これは『放生会』(ほうじょうえ)と言って江戸庶民にとっては身近な信仰だったのです。

本来は『放生会』は仏教から由来する儀式で、
『不殺生』の精神から、あらゆる生き物の命を慈しむことを指します。庶民にとっては、堅苦しい意味で行なってはおらず、身近な信仰・ちょっとしたイベント的存在でした。

 
捕まった生き物を逃してやると『功徳』を積んだことになり、
結果として家内安全や商売繁盛など、なにかいいことにつながるのでは
という気持ちから亀を放してあげたのです。

実に、江戸庶民の精神をうまく捉えた商売でした。

しかも
逃した生き物をまた捕まえて売るのですから、アコギな商売といえばその通りでしょう(鳥は風切り羽根を切って遠くまで逃げられないようにしている)


勿論、江戸の人たちもその正体をわかってはいましたが
それでも少しは本当に逃げられるかもしれない、
ほンのつかのまだけでも自由を謳歌できるのであれば
と小さな希望を胸に抱いていたことでしょう。


今だと動物虐待だ、詐欺だ!と大バッシングを受けそうですね。
亀の遠くを見つめる背中に哀愁を感じます。
ではまた。

出典:国立国会図書館貴重書画データベース
『名所江戸百景 深川万年橋』歌川広重

参考:「江戸商売図絵」三谷一馬

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