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2023年プラチナ需給展望

久々の需要超過との見通しが発表された

2023年プラチナ需給がタイト化へ

 「WPIC Platinum Quarterly Q4 2022」によれば、2022年のプラチナの世界市場では、需要が供給を下回り、776キロオンスの供給超過となっていたが、2023年については、世界全体で556キロオンスの需要超過に転ずる見通しだという。
 2022年、総需要は前年比9%程度減少し、供給側は12%減少した。その結果、前年2021年に続いての供給超過となった。
 しかしながら、2023年においては、需要量が24%増加すると見込まれる一方で、供給量については、3%増にとどまると見られるため、一気に需給がタイト化する見通しとなっている。
 本稿においては、「WPIC Platinum Quarterly Q4 2022」のデータに基づいて、2022年のプラチナ市場の状況を取りまとめると同時に、2023年のプラチナ需給についても、論じていく。

2022年のプラチナ市場

 2022年においては、コロナ禍や半導体供給が滞った影響で、自動車産業からの需要が前年比20%減となっていた。加えて、宝飾品需要も低調で、需要全体としては9%程度の減少となっている。プラチナ取引が全般的に低調だったため、投資目的の需要もマイナスとなった。
 2022年における供給面の主な減少理由は、南アフリカの電力供給不足等の影響で、鉱山からの産出量が11%減となったことである。南アフリカだけに限って言えば、15%減を記録している。また、リサイクルによる供給も全体で17%減となっている。
 全体の需給バランスは、2021年に続いて、供給超過となったが、超過幅は、33%減少し、776キロオンスとなった。総括すれば、コロナ禍の影響が、まだ払しょくできなかったと言えよう。

2023年のプラチナ市場には明るい兆しが見える

 2023年については、供給面で、南アフリカの鉱山産出量が引き続き電力不足の影響を受け、やや減少すると見込まれるため、鉱山からの総産出量は1%増にとどまる予想となっている。一方、リサイクル供給量は、自動車産業からの供給が12%増となることなどから、全体でも10%増となることが見込まれる。全体の供給量は、前年比3%増の7,428キロオンスに達するものと予想されている。
 一方、需要面では、自動車産業からの需要が前年比10%増となることが予想されている。自動車生産台数は、世界全体で5%増の8600万台に達するものと見込まれる。ガソリン等の内燃機関を動力とする自動車の生産台数は5%減少する一方で、ハイブリッド車は33%増となるため、全体の生産台数は、伸びるという予測になっている。
 中国の経済再開の影響も大きいものと見られる。自動車以外でも、中国のガラス産業からの需要拡大などがあって、自動車以外の産業用途の需要は、前年比12%増となる予想である。
 宝飾品については、2%増が見込まれている。2022年には、大幅に減少したが、中国における需要急回復もあって、2023年は需要増に転じるものと見られる。宝飾品需要は、全体で1,936キロオンスという予想であり、まだまだ低水準ではあるが、回復に向かっている。
 投資目的のプラチナ需要も回復が想定される。とりわけ、地金やコインといった現物投資の数量は、前年比倍増の450キロオンスに達するものと予想されている。
 まとめると、2023年の世界のプラチナ需要は、前年比24%増の7,985キロオンスに達するものと予想されている。
 2023年の世界のプラチナ需給バランスは、556キロオンスの需要超過となると見込まれており、地上在庫がその分減少することになるだろう。

プラチナ相場については堅調な推移を予想する

 2023年のプラチナ相場は、市場全体の需給が好転していることから、堅調に推移するものと予想している。需給バランスが、供給超過から需要超過に転ずることの影響は、無視できない。
 また、私が以前から勧めてきた貴金属の現物保有に関しては、金についで、プラチナが候補となる。プラチナのコインは、種類も少なく、流動性がやや難しい面もあり、地金中心の保有となるであろうが、金に加えて余裕があれば、プラチナの保有も検討したいところではある。

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