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全米大学院で書かれた全博士論文を収録したUniversity Microfilms Internationalデ-タベース


はじめに

TOEFL Web Magazineのコラム For Lifelong Englishに掲載した記事です。現役時代筆者は教員採用人事に携わりました。日本を含め全世界に向けた公募でしたから成績証明書transcriptと博士論文の2点は必ず提出していただきました。掲載時の記事に少々加筆したものをお届けします。


デジタル社会においてデータベースは必要不可欠ですが、この分野で米国は先進国です。

今から45年前の1968年、私は南部の大学でEnglish orientation programを受講し、その初日に社会保障番号(Social Security Number)の申請書を書きました。米国市民のみならず長期滞在の外国人にも9桁のID番号が割り当てられ、米国で生活する上でなくてはならないものと聞かされ、Nathanael Yuji Suzukiの登録名で申請しました。

確かに、その後10余年の米国生活で、公私種々雑多の書類に何回もこのID番号を記入させられました。米政府は、このID番号により2億数千万人の個々人の誕生日、性別、国籍、学歴(大学ID番号にも使用)、職歴、納税や年金の記録などあらゆる社会的情報をデータベースに保管し、必要に応じて取り出すことができます。

年金の記録漏れと不正受給、悪質な犯罪につながる詐称を速やかにチェックすることができるので社会生活の安全を保障するための番号と言えるでしょう。米国滞在を考えている人は、Social Security AdministrationのWebsite (www.ssa.gov)を調べてみましょう。

米国は、図書のデータベースにおいても先進国です。

日本では1、2の大学にしか図書館情報学(Library Science)という専攻がなかった時代に、全米の主要大学がこの専攻を設けて、全世界の図書情報を分類して記号化することに力を注いでいました。

筆者が首都ワシントンの大学の大学院を選んだのは、全世界の主要図書を集めた議会図書館(Library of Congress)があり、必要とする全ての書籍や論文を無料で読むことができたからです。高価な本や学術雑誌を現物で入手するしかなかった時代に、貧乏学生の私には無料で本を借りて勉強できるありがたい場所でした。図書館カードは誰でも簡単に入手できます。世界中で様々な言語で出版されている出版物をデータベース化した議会図書館の規模は想像を絶します。この図書館の分類方法は米国のみならず他の国々でも使用され、分類された新刊図書の情報も提供しています。Library of CongressのWebsite (http://www.loc.gov/index.html)を見てみましょう。

将来、米国大学院博士課程への留学を考えている人には、University Microfilms International(UMI)等のオンライン・データベースにアクセスすることをお勧めします。

アメリカで書かれた全てのPh.D. dissertationsは、University Microfilms International(現在はProQuestに移行したようです)に保存され有料で入手できます。当機関は1938年代にミシガン州アン・アーバー(Ann Arbor, Michigan)に創設され、米国の大学院で受理された全博士論文(Ph.D. dissertations)を所蔵しています。皆さんが目指す大学院の先人達がどのような博士論文を書いたか調べてみると良いかもしれません。

筆者が1978年にGeorgetown Universityで書いた博士論文 (Ph.D. Dissertation)は、

A Generative Semantics of the English Modals. Georgetown University, Ph.D., 1978 (登録番号7901787) 

Ph.D. dissertationはA Generative Semantic Analysis of the English Modals(Nathanael Yuji Suzuki

で登録されているとの通知がPh.D.取得直後に届きました。


University Micrfilm Internationalより登録通知


University Microfilm International 複製同意書


University Microfilm International 筆者の論文主査、副査、学科長のサイン

アメリカの大学のTenure Track教員人事(Assistant Professor助教授→Associate Professor准教授→Professor教授)ではPh.D.必須


米国の大学の専任教員の人事はPh.D.を前提としますので、どこかの段階でここから応募者の博士論文を取得し精査しているものと思います。内容とともに、論文審査委員会の構成委員(通常は主査1名と副査2名)の資格・資質まで厳しくチェックしていることでしょう。

ディプロマミルに要注意、卒業証書ではなく成績証明書transcriptの提出を


Ph.D.などの学位を売るディプロマミル(diploma mills)が乱立している昨今、大学人事のセキュリティーとしてこのデータベースを使用しているようです。学士号、修士号、博士号など学位を得ると卒業証書(額縁に入れて飾るため)をもらえますが、お金を出せば簡単に偽物を作れますので、それをもって学位証明にはなりません。

アメリカの大学では学部、大学院への応募の際には成績証明書transcriptの提出を求められます。成績証明書には在籍機関,学部、学科、専攻、課程(BA/BS, MA/MS, Ph.D.など) , 取得学位(BA/BS, MA/MS, Ph.D.など), 履修した全授業の名称と成績などなど細かく記載されています。重要な事は成績証明書transcriptは大学から直接送ったものでなければ受理しません。大学であれ企業であれ公的機関であれ提出書類に偽りがないことを確認する書類(応募書)にサインします。



Transcript


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