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好きな映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は好きな映画だ。これは大学の頃映画チャンネルのCMをみた時から確信していた。何故かはわからない。筋書きとしては淡々とした人間ドラマだ。とにかく色彩が好きだったのだ。

時数年経って改めて観直したのだが、もともとの好きなのもあって人間ドラマも素敵だなと思った、そんな映画である。

「好き」にもいろんな種類がある。ガツンと頭を殴られるような好きもあれば、この映画のように、「なぜかわからないけど隅に置けない」好きもある。もしかしたらより永続的なのは後者の「好き」かもしれない。

この映画はラブストーリーで、バーテンダーの男性ジェレミー(ジュード・ロウ)と失恋したばかりの女性エリザベス(ノラ・ジョーンズ)の物語である。紛失物の鍵を人生の記録としてコレクターしているジェレミーに、どうして恋は終わるのかしら、と愚痴るエリザベス。ジェレミーは「理由なんてないんじゃない?」とブルーベリーパイに喩えて答える。
「うちはパイの専門店で、どのパイも丹精込めてつくってる。いろんなパイが売れるんだけど、ブルーベリーパイだけはどういうわけか、売れない。でも、そんなものじゃないかな。」
とはいえ、ジェレミーはそんなブルーベリーパイを最も愛している。そのブルーベリーパイをエリザベスが注文してから、この恋の物語は始まった・・・・かに思えたが、二人が結ばれそうになった翌日、エリザベスは店に訪れなくなった。どこか遠く遠くの地に旅立ってしまったのだ。それからというもの、ジェレミーはエリザベスからくる文通を読んで、いつか店に来るのを心待ちにしていた。

実は物語はここから始まるのである。真の主人公はエリザベスであり、ジェレミーはあくまで傍観者に過ぎない。これはあらゆる地を旅するエリザベスが一人の女性として様々な出会いをし、成長を重ねていく物語なのだ。ある時は寂しい飲んだくれ、ある時はその妻、ある時はギャンブルの女王としてイキがる女…。

とにかくこの映画は淡々とその人間の有様が語られていく。スロウなジャズとシックな色合いに支配された世界で、少し生き辛い人間たちが必死に生きている。強いお酒をゆっくり煽りながら飲むのに近い鑑賞感であり、深夜持て余している時にお勧めかもしれない。是非とも。

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