髙良真実

髙良の髙ははしごだか。早稲田短歌会出身。同人誌『滸』、竹柏会所属。第40回現代短歌評論…

髙良真実

髙良の髙ははしごだか。早稲田短歌会出身。同人誌『滸』、竹柏会所属。第40回現代短歌評論賞、第4回BR賞。

マガジン

  • 短歌史

    書いた記事のうち、短歌史に関連するものを集めました。

  • ひさごの陰だより(書評集)

    この書評は “Tanka makes your life better” Takara Mamiiの提供でお送りします。

  • くじらの寝袋(既発表作品集)

    過去誌面に掲載した作品の集積所

最近の記事

  • 固定された記事

ポートフォリオ(書いたものと賞歴)

2023/08/10更新 髙良真実です。賞歴が増えたのでまとめることにしました。合わせてこれまでの紙媒体における執筆情報・活動情報も記載します。 【2017年】 作品 5首連作「鉄筋コンクリートの本棚」今月の新人欄『短歌往来』2017年1月号 7首連作「(primitive) primary school life」『現代短歌』2017年2月号 【2018年】 作品 30首連作「境ふ/逆らう」機関誌『早稲田短歌』47号 10首連作「自然誌拾遺」ネットプリント「

    • プロレタリア短歌に関する勉強会資料

      某所で勉強会やりましたので資料をアップロードしておきます。ヘッダー画像は資料内の図です。 資料内に簡易的な時期区分を設けていますが便宜上のものです。 口頭説明における理解を優先しているため記述の正確性を犠牲にしている部分があることをご理解ください。レポート・評論等への引用に耐えうるものではないことを注記しておきます。 資料内の図は渡邊順三『定本近代短歌史』上下巻(春秋社)に基づきつつ、適宜一次資料を参照しています。 プロレタリア短歌については松澤俊二先生の論文や著作が大

      • イカの短歌

        おはようございます。休みの日だというのに、どういうわけか早起きしてイカの歌を探していた。発端は角川『短歌』1973年7月号掲載の座談会「女歌その後」の参加者が70年代にどんな歌を作っていたのか全歌集とかをパラパラめくっていたことだった。 私は河野愛子(こうのあいこ)の歌が好きで、手元の短歌ノートには以下の歌を控えている。 好きな歌なんだけど平成生まれにはあんまり意味の通りがよくないと思う。だいたい結句の「つかみゐぬ」が掴んでいたのかいなかったのかはっきりしない。掲出歌の場合

        • けものの短歌

          『ねむらない樹』vol.11誌上で発表された第6回笹井宏之賞の結果を読みました。傾向変わりましたね。気になったのはこの歌です。 韻律がやや難しくて、私は「自我は持つ/よりも飼うだな、/と言ってた」と句切りました。あるいは3句目4音にする切り方もあります。韻律と意味内容を過度に近づける読みは警戒されますけれども、人外っぽいイメージを連れてくる歌の韻律がガタガタだと、少しうれしい気持ちがあるのを自覚します。 ところでこの歌を見て、けものの短歌のことを考えたりしました。50年代

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        ポートフォリオ(書いたものと賞歴)

        マガジン

        • 短歌史
          8本
        • ひさごの陰だより(書評集)
          13本
        • くじらの寝袋(既発表作品集)
          6本

        記事

          定型モダニズムの動きと前川佐美雄に関する図

          ずっと前川佐美雄の『白鳳』(1941)について何か書きたいと思っているのですが、締切りを守るとまた次の締切りが危なくなるという状況で、なかなか時間がとれません。思い入れのある歌集だけにじっくり取り組みたいという気持ちが仇になりました。 ところで今日(2024年1月31日)ぽっぷこーんじぇるさんがnoteで「〈舞台〉に立つ、〈舞台〉を降りる――前川佐美雄『白鳳』私論」という『白鳳』評を書いていて、おもしろかったので、手持ちの資料ですぐ出せそうなものを公開します。 2023年1

          定型モダニズムの動きと前川佐美雄に関する図

          資料あつめのリンク集(短歌史のためのtips)

           昔の短歌雑誌をめくるのが好きで、日がな文学館とかに篭ってよく読んでいます。同じ趣味の人は多いと思いますが、いかんせん趣味にするまでに少し時間がかかるのが難点です。特に読みたい資料が見つからないのが困る。  そういうわけで、ブクマしているリンクをまとめることにしました。誰でも入れるところの蔵書検索システムです。 早稲田大学古典籍総合データベース  名前の通り前近代メインのデータベースですが、例えば土岐善麿(哀果)の初期歌集など、明治期を中心に短歌関連本を探すことができます

          資料あつめのリンク集(短歌史のためのtips)

          2023年12月17日 現代短歌社三賞授賞式 髙良のスピーチ内容

          於:京都市内 2023年12/17(日)17:30- 2023年に第4回BR賞をいただきました。BR賞とは書評に対して与えられる賞です。3200字、原稿用紙8枚の分量で、昨年刊行された歌集を対象とする書評を書き、応募します。私は伊舎堂仁の第二歌集『感電しかけた話』(書肆侃侃房, 2022)の書評を書きました。 選考過程と受賞の書評は『現代短歌』2023年11月号に掲載されています。ちなみに第2回BR賞受賞作で書評の対象となった北山あさひと、第3回BR賞受賞作で書評の対象にな

          2023年12月17日 現代短歌社三賞授賞式 髙良のスピーチ内容

          2023年9月22日 短歌研究四賞授賞式スピーチ内容

          時:2023年9月22日 17:00開催 於:講談社26階ホール 補足 短歌研究社は主催している賞について例年合同の授賞式を開催しています。本年はコロナ禍による集会制限のため開催されていなかった2020年度から本年23年度までの受賞者が集められ、2時間半にわたって選考委員による講評と受賞者スピーチがありました。 私は昨年2022年度の第40回現代短歌評論賞受賞者です。 なお昨年度まで評論賞の選考委員を務められていた篠弘さんは、22年末に逝去されました。会場の皆さんはそれをご

          2023年9月22日 短歌研究四賞授賞式スピーチ内容

          固有時制御;齋藤茂吉

          2023年8月18日にTwitterでつらつら書いたことをまとめておきます。  この歌はぱっと見地味ですが、時間操作系の魔術なんですよ。来た、居た、去ったが一文に圧縮されていて、一首の時間が加速するんです。そして「~にけるかも」で、トップギアの詠嘆が駆け抜けます。ね。詠嘆には、感情を強調するだけでなく、瞬間を強調する機能もあります。  Fate/ Zeroに衛宮切嗣って登場人物がいますよね。茂吉の時間操作は切嗣の固有時制御に似ています。切嗣が加速と停滞ならば、茂吉は加速と

          固有時制御;齋藤茂吉

          預言は腹に苦い:前田宏による『歌壇』2023年9月号時評「反セクハラに思う」について

           預言は腹に苦いと言う(cf.黙示録10:10)。かのプロジェクトも然り。私に然り。彼に然り。私たちのうしろにあって、私たちを押し出す聖霊の働きは、時に驚きと痛みをもたらす。かのプロジェクトも然り。私に然り。彼に然り。  『歌壇』2023年9月号の時評子は、昨今の反ハラスメントに関する流れにつまづいた。時評に使われた紙とインクを憐れみたまえ。  時評子は性犯罪の犯罪性を認識していながら、「現在の反セクハラ運動状況」は「急ぎ過ぎ」と語る。  プロジェクト「短歌・俳句・連句の

          預言は腹に苦い:前田宏による『歌壇』2023年9月号時評「反セクハラに思う」について

          はじめての近現代短歌史(わせたん勉強会2022年3月実施)

          こんにちは。髙良真実です。 この資料は早稲田短歌会を抜ける直前(もっとも、卒業式の3日後)に実施した勉強会のスライドです。後輩に短歌史のことを聞かれるなど、需要を感じたので公開することにしました。2021年に作成した詳説近現代短歌史略というおそろしく長い資料の内容をまとめたものです。21年の勉強会はあまりに長すぎてみんなが疲れていくのが見えたので、その反省から簡潔にしています。その節は大変ご迷惑をおかけしました。なお、詳説近現代短歌史略の方は300円の有料設定で閲覧制限をかけ

          はじめての近現代短歌史(わせたん勉強会2022年3月実施)

          加藤克巳『螺旋階段』評:夢に昇天

          モダニズム歌集評第8回 底本:加藤克巳『螺旋階段』(協和書院、一九三七) 加藤克巳は國學院大学四年生のころに第一歌集『螺旋階段』を刊行しました。主として早崎夏衛・岡松雄が発行する『短歌精神』に作品を発表しており、モダニズム期の歌人の中では最年少です。『短歌精神』には数号にわたり『螺旋階段』批評特集も組まれました。 戦後は新歌人集団に参加、近藤芳美や宮柊二とともに戦後派の一人に数えられています。また同じく新歌人集団の一人にして戦後派の歌人である大野誠夫と同人誌『鶏苑』を発行し

          加藤克巳『螺旋階段』評:夢に昇天

          岡松雄『精神窓』評:花へのフェティシズム

          モダニズム歌集評第7回 底本:岡松雄(おかまつ たけし)『精神窓』(協和書院、一九三七) 岡松雄の当初の所属結社は現時点で把握できていません。なお、前川佐美雄の主宰する『日本歌人』に出詠していたことは確認できています。その後は盟友の早崎夏衛とともに『短歌精神』を一九三五年創刊、早崎と交互に編集を行いました。 『短歌精神』について、詳しくは前回の『白彩』歌集評前半部分をご確認ください。 また、『短歌精神』誌上に『精神窓』について『白彩』のような批評特集はありませんでした。

          岡松雄『精神窓』評:花へのフェティシズム

          早崎夏衛『白彩』評:文明論の憂鬱

          モダニズム歌集評第6回 底本:早崎夏衛『白彩』(短歌精神詩房、一九三六) 早崎夏衛は竹柏会『心の花』に所属していた歌人で、一九三〇年には心の花内部の組織である「新芸術派短歌研究会」に、前川佐美雄、児山敬一、三宅史平の三人と一緒に参加していました。その後は前川に従い『短歌作品』、『カメレオン』、『日本歌人』にも参加しますが、一九三五年には盟友の岡松雄(おかまつ・たけし)とともに同誌を離れ、加藤克巳を加えて独自に『短歌精神』を創刊、新芸術派の運動を推進しました。 『短歌精神』は

          早崎夏衛『白彩』評:文明論の憂鬱

          石川信雄『シネマ』評:天使とロンド・ロンド・ロンド

          モダニズム歌集評第5回 底本:石川信雄『シネマ』(茜書房、一九三六) 書影は『現代短歌全集』第七巻(筑摩書房)より。 石川信雄は早くから筏井嘉一と行動をともにし、新芸術派の嚆矢たる『エスプリ』創刊にも参加しています。『エスプリ』の廃刊後は前川佐美雄と行動を共にし、戦前は佐美雄の主宰する雑誌『短歌作品』、『カメレオン』、『日本歌人』の全てで活躍しました。作品発表は一九三〇年代半ばまでであり、その後は評論・エッセイの書き手として知られるようになります。日中戦争に際して徴兵され、

          石川信雄『シネマ』評:天使とロンド・ロンド・ロンド

          松本良三『飛行毛氈』評:街の怪異

          モダニズム歌集評第4回 底本:松本良三『飛行毛氈』(石川信雄発行、一九三五) 松本良三は夭折の歌人です。新芸術派の理念に同調し、前川佐美雄主宰の『短歌作品』に出詠していました。『飛行毛氈』は死後石川信雄の手により出版され、巻末には彼の年譜が付されています。 **** 夭折歌人の作品は評するのが難しいものだ。死の直後に刊行された歌集には、故人を称える評が付されている。しかし、没後九〇年を経ているのであれば、その作品の粗さについても言及しなければならない。作品を見る限り、彼

          松本良三『飛行毛氈』評:街の怪異