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【物語詩】桜前線を駆け巡れ

 暁にそっと起こされた白ウサギ
 月からの伝言だよ
「桜前線を駆け巡りなさい」

 何それ? 眠いのよ……
 素直に返事できず 眠気には素直に頷く


 舟を漕ぐウサギにまたもや催促
 今度は草のベッドの下の方からの轟き
「猫の手でも借りた方がマシかなぁ?
 手伝わないと月見団子はあげないよぉ」

 秋のお楽しみのピンチにパンチを食らい
 睡魔の吹っ飛んだウサギは跳ね起きた
 それを早く言ってよねっ!

 大地の奥底からナビは続く
 梅と桃のお嬢さんレディに手伝ってもらったから
 既に徐々に準備レディは整っている
 あとは君が駆け抜けるだけ……ゴーだ!

 地味なダジャレを曖昧に受け流しつつ
 ウサギは駆け回る 桜前線を
 この国は桜が咲かないと春が来ないから


 走っては休み 走っては休み
 暇つぶしの亀との競争でもうっかり休み
 紆余曲折しながらも国中を巡り

 疲労が後追いしてがんじがらめになる直前
 大地ナビのボイスが終了を告げる
「ありがとう、お疲れ様ぁ。
 これで働けるって蟻が有難っているよぉ」

 それもダジャレ? うるさいんじゃ……
 ちょうど見つけらた穴場でウサギは眠る


 そうしているうちに桜は咲き……
 人々も春の訪れに笑みを綻ばせて


 ウサギが目覚めた頃には
 夏すら過ぎていて驚くが
 月見団子は特大サイズで

 お腹が空き過ぎていて団子を貪った
 月見団子と月見酒と
 たっぷり堪能した頃にウサギは気づく

 まるで国中の桜から愛されるかのように
 自分の毛色は桜に染まり
 なんだか心は桜を観たくてたまらない

 「これは来年も走るしかないじゃない?」
 言いながら満腹な心は眠気に襲われる
 ほんのり色づいたウサギは微笑んだ

 桜前線と追いかけっこする夢を見ながら




もっと可愛いタイトルを……思いつかなかったので、教えて下さい。

考え過ぎてわからなくなりました……。


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