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『PERFECT DAYS』を観た

映画『PERFECT DAYS』を観た。
都内の公衆トイレの清掃を生業とする男。
風呂なしのボロアパートに住み、家にはテレビもない。
車で仕事に出かけ、昼は神社の境内でサンドイッチを食べ、帰宅したら銭湯に行き、そこのテレビで大相撲を見て、行きつけの飲み屋で同じメニューを頼む。古本を読みながら眠りにつく。
毎日のルーティーン。

彼自身はこの日々を気に入っているようだ。時折にんまりと笑う。
男の過去に何があったのかは詳しくは描かれない。
疎遠になっていた妹が明らかな金持ちであること、老いた父親とはもう会うつもりはないことなどから推測するに、
父親は仕事で成功した人間で、長男である主人公に厳しく当たり、それがトラウマになっている。主人公は父親の方針で高学歴になったと思われる。
妹は父親の勧めで仕事で成功した男性と結婚し、兄ほどは父親に反感を持っていない。
競争やプレッシャーの世界から距離を置き、ただただ、毎日トイレをキレイにし続ける日々が彼にとって安心で幸せなものになったのだろう。

「清掃中」の札を立てているにも関わらず、人々は一言の断りもなくトイレに入ってくる。
観てる方としては、遠慮するか、どうしても今使いたいなら清掃人にすみませんくらい言えよと思うのだが、彼はその度にトイレの外で用が済むのを待つ。
木漏れ日を見上げて笑う。

他人から見て貧乏で、持ち物も少なくて、3Kと言われるような仕事でも、それが不幸か幸福かは本人が決めることだ。
清貧そのものといった暮らしに憧れなくもない。
しかし、私には多分できない。
小さなことに感動する感性が鈍っているからだ。
そういう"強い"武器を持ちたいなあ。

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