見出し画像

夜明けのすべて

映画『夜明けのすべて』を観た。

パニック障害の男と重いPMSの女。
小型のプラネタリウムを制作販売している小さな会社で二人は出会う。

自分も生理前の気分の落ち込み・不眠・便秘・眼精疲労・肌荒れ、といわゆるPMSの症状があるわけだが、主人公のPMSはそんなレベルのものではない。
本当に些細なことが耐えきれず、職場でキレる。場を収めようととりあえず謝る相手にも、「私なにか間違ったこと言ってますか!?」と追い打ちをかける。
それが自分ではコントロールできない。
新卒で入社した会社を逃げるように辞めて、五年後に件の会社にたどり着いた。

パニック障害の男、山添は、おそらく大企業のエリートだった。パニック発作が出てから、電車に乗れなくなり、外食もできなくなった。
そしてボロアパートからプラネタリウムの会社に通勤している。

社長はとにかく優しい。
とても儲かっているとは思えない会社で、若者を二人雇用するのは簡単なことではないだろう。
給料は安そうだけど、リハビリ的な働き方で、病気が良くなれば元の職場に戻る予定の人間に仕事を与えて報酬を払う。
いついなくなってもいいように覚悟しつつも、ずっといてもいいんだよというスタンスで。
会社の中年女性も、とても優しい。
山添のエリート時代の元上司も、「戻ってこれるように調整しておくから」といいつつ、「幸せに働けるならどこで働いてもいいぞ」と思っている風で、優しい。

彼らは大事な人を亡くしたから、そうなったのかもしれない。
そうでもないと、優しくすることの大切さに、人はなかなか気づかないものだ。

パニック障害とPMS、お互いの困難を理解しあった二人は、心の支えを得て夜明けを迎える。
ネタバレになってしまうが、二人は短い期間しか一緒にいなかったし、恋愛関係にもならなかった。
しかし、理解しあえる人がこの地上にいるんだと「発見」したことが、カイロのように、彼らをこの先も温め続ける。

「パニック障害の人って、平日はやる気ないのに自主的に休日出勤しちゃうものなの?w」
「ちょっと、PMSだからって言葉選ばなくていいとかじゃないからねw」
というやり取りがほほえましくて好き。
俳優さんたちの表情がとてもいいから、ぜひ映画館で観てほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?