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07.本当は教えたくない、社畜のための物件選び・後編

【前回までのあらすじ】・・・前回は社畜の物件選びで重要な5つのポイントのうち、4つを解説させて頂きました。今回は⑤周辺施設(飲食店・ご褒美枠)です。それでは皆さん、張り切ってまいりましょう。

⑤周辺施設(飲食店・ご褒美枠)・・・「平日の長い労働を抜けると週末であった」。そう、残業漬けの毎日からの仮釈放だ。エンドレスな残業でゴリゴリに削られた気力ゲージの回復に努めて欲しい。キチンと休むのも仕事だし、べろんべろんに酔っぱらってストレス解消するのも仕事だ。ここぞとばかりに好きなものを食べよう。

 あまりにもベタ過ぎるチョイスだが、海鮮系が好きなら磯丸水産に限る。そして、磯丸水産と言えば蟹味噌甲羅焼だ。ビールを飲みながらそいつが焼きあがるのをボーっと眺めてるだけで癒される。科学的根拠もあるのだが、人は炎を眺めてるとリラックスするらしい。だから、焚火やキャンプファイヤーの動画は人気があるのだろう。だが、こちらには炎だけでなく蟹味噌もある。蟹味噌の分だけこちらの方がより高いリラックス効果が期待出来る。蟹味噌からは大量のマイナスイオンが出てるからだ(※筆者がそう思ってるだけで科学的根拠なし)。
 蟹味噌甲羅焼が焼けるのをうっとりと眺めて充分にリラックス出来たら、似たようなメニューばかり食べてる毎日のうっ憤を晴らすためにガンガン注文だ。海老、イカ、各種お刺身、各種焼き魚。牛丼と蕎麦ばっかり食べてるため、慢性的に不足している海鮮をここで一気に摂取だ。貝も忘れてはいけない。ツブ貝、蛤、サザエ、ホッキ貝・・・そして、貝界のラスボス、アワビ。これぞ「忍法活貝乱れ撃ち(にんぽういきがいみだれうち)」だ。ちなみに筆者のお気に入りは白子ポン酢。これとビールがあれば飛べる。
 さんざん海鮮を食い散らかした後は「ご飯セット」でシンプルに締めよう。最後にご飯とお味噌汁を頂く、料亭みたいな流れで実に洗練された締め方だ・・・と、思っていたのだが、これを書くにあたり磯丸水産のメニューを見ていたら、私が知らない間に「蟹味噌おにぎり」なるブツが爆誕していた。私くらいになると、佇まいを見ただけで相手の強さが分かる。蟹味噌おにぎり・・・とんでもない戦闘力だ。そういう訳で、最後は蟹味噌おにぎりで激しく締めて欲しい。
 もちろん、磯丸水産は海鮮丼やネギトロ丼も食べれるので晩御飯に利用しても良いが、飲み会で出来上がってるサラリーマン達と同じ空間で食事をすることになるので、羨ましくて涙が出そうになる時がある。ハンカチを忘れないように。
 更に言うと、磯丸水産では平日のランチタイムでも出来上がってる人たちが必ずいる。「何時から飲んでるんだろう?」と考えると、羨ましさよりも恐怖の方が先に立つ。恐怖から来る体の震えを止めるため、奥歯を噛みしめよう。

 揚げ物が好きなら「串カツ田中」が本命だろうか。ここでは串カツ豚、串カツ牛、玉ネギ、レンコン、海老の「定番五本盛り」にタコさんウインナー×3が私の基本スタイルだ。そこからその日に食べたいのを追加していく。やたらとタコさんウインナーを頼んでいるのには訳がある。人間は歳を取ると子供に戻ると言うが、おっさんになると思春期の頃に失ったはずのタコさんウインナーへの情熱が再び蘇ってくる。幼稚園の頃を「第一次タコさんウインナーブーム」とするならば、今は「第二次タコさんウインナーブーム」だ。
 飲み物はハイボール。串カツ田中はハイボールをやたらと推しているので、郷に入っては郷に従う。あと、ハイボール頼むときにサイコロをふってゾロ目なら無料、偶数なら半額、奇数ならお値段二倍、量も二倍のメガジョッキ、そしてなんとピンゾロならメガジョッキ無料なのもエンタメ感があって実に良い。見事に私の中の射幸心を煽ってくるではないか。社畜なんて某漫画の地下労働者と酷似した生き物なので、この手のサイコロを使ったギャンブルが良く似合う。
 それと私のように猫舌の方はトマト串には要注意だ。かなり熱い。初めて食べた時は出来立てを一気に食べたせいで口の中が大惨事になった。「猫舌、トマト串に近寄らず」を心掛けて欲しい。
 店舗でピンゾロを神に祈りながらサイコロ振るのも乙なものだが、テイクアウトという選択もある。読書や映画鑑賞しながらの晩酌も悪くない。家飲みのおつまみが串カツ田中になるのなら、晩酌のグレードが数段上がる。

 串カツ田中に限らずテイクアウトを使えば晩酌は更に豊かになる。そして、テイクアウトに関して固定観念にとらわれてはいけない。視点を変えれば、本来は日常枠である丸亀製麵もご馳走枠となる。かき揚げやかしわ天で飲むビールは堪らない。吉野家でテイクアウトした牛皿で一杯、なんてやり方もある。色々と試してもらいたい。自分へのご褒美に対して、 社畜は貪欲であるべきだ。

 固定観念を捨てるのは日常枠だけに限らない。例えば「宅配ピザなんだから配達してもらうのが普通」なんて思い込みも間違いだ。ピザ屋は持ち帰りをすると、何かしらの割引がある事が多い。ドミノピザなら何と半額だ。
 私もピザは大好物だ。特に宅配ピザが持つ肉々しいアグレッシブさ、ジャンク感をこよなく愛している。「店主がナポリで修行してきました」系のピザも確かに美味しいのだが、宅配ピザ特有のジャンクフード感は何物にも代えがたい。それ故、ちょくちょくピザを頼もうかと思いはするのだが、配達されるまでの時間が待てない生来のせっかちさと、「宅配ピザって結構お値段するよね」と金を出し渋る生来の貧乏性があるので、実際はあまり注文してこなかった。もし、テイクアウトが出来るのなら注文してすぐに食べられるし、その上安いなんて最高ではないか。ドミノピザの持ち帰りならペパロニ、イタリアンソーセージ、粗挽きソーセージ、燻しベーコンと、私好みの腕白なトッピングのギガ・ミートとやらのSサイズ2,740円が半額の1,370円と、凄まじいお得感だ。自宅近所の宅配ピザ屋、これはかなり頼もしい存在となり得る。
 先人たちの犯した過ちは若人たちの教訓となる。これは私が実際に犯した失敗談だ。ある街に住んでいる時、自宅から更に駅の反対側に向かっていくと住宅街があった。そこにドミノピザがあった。自宅から徒歩7分程度。目と鼻の先と言ってもおかしくない距離だ。しかし、その店舗の存在に気付いたのはその街から引っ越す数日前だった。立ち並ぶ複数の住宅にカモフラージュされてて、全く気付かなかった。とんでもないステルス性能だ。もし、もっと早く気付いていたのなら、お一人様ピザパーティーをバンバンやれたはずだ。今考えても悔しい。己の愚かさを呪いたくなる。このような悲劇に見舞われない様、自宅周辺のチェックを怠ってはいけない。
 テイクアウトでもう一つ注意すべき点として、ケンタッキーが好きなら必ず店舗が生活圏内にある物件を選ぶようにしよう。ケンタッキーで一杯やろうと別の駅で買って帰ると、帰路の電車内がケンタッキーの匂いで大変なことになってしまう。空腹な乗客の皆様にとってのテロ行為だ。社畜たるもの人様に迷惑を掛けてはいけない。

 
 ご褒美系には他にも焼肉、鍋、焼き鳥、居酒屋等々、幅広いジャンルがあり、それぞれに紹介したいもの、伝えたい事が山ほどあったのだが、文字数の都合上、今回はここまでとさせて頂く。はっきり言って終わらない。私のジャンクフードに対するパッションは相当なものなので、書きたい事を全て書くとしたら指輪物語に匹敵する長編になるだろう。機会があれば別の記事で続きを書くとしよう(※ただ、私の自堕落さも相当なものなので、あまり期待しないで欲しい)。

 とにかく大事なのは、ご褒美枠という回復スポットがないと、社畜は長く戦い続けられないという事だ。週末くらいハメを外さないと、「俺、何で生きてるんだろう?こうなったら出家でもしようかな。緩い雰囲気のお寺だったら良いな。朝は9時過ぎに起床し朝食は朝マック。昼はやよい軒で生姜焼き定食。もちろん、やよい軒ではお代わりするので、満腹からの激しい睡魔。しょうがないのでお昼寝。起きたら申し訳程度の修行をして、夜はビールを飲みながら王将の炒飯と餃子を頂く。悶々とした時に『でらべっぴん』を読んでも怒られない。そんな、ゆとり世代向けのお寺があればなあ」みたいな事を考えてしまう。つまり簡単に言うと、病んでしまうという事だ。
 そんな風にならない様、週末は大いに食べ、大いに飲んでリフレッシュして欲しい。そうやって社畜生活をタフに乗り切ろう。そのためにもこれまでに述べたアドバイスを参考にしてもらい、グーグルマップで周辺の飲食店情報を調べたり、古いタイプの刑事みたいに地道に足を使って調べ上げたりして、理想の物件、理想の生活環境を見つけ出して欲しい。   

 
 今回は「社畜の物件選び」をテーマに書いてみたのだが、いかがだったろう?物件選びという初手でしくじると、新生活は苦難に満ちたものとなる。以前、知り合いが築浅、日当たり良好、駅近、家賃お手頃と、一見すると優良な物件を借りたのだが、駅周辺には閉店時間が早いスーパーと小僧寿ししかなく、コンビニは自転車で行かないといけない、という劣悪な環境に苦労していた。週に最低二回は小僧寿しを食べてたらしい。図らずして彼は小僧寿しの「太客」となったわけだが、彼の食生活が幸せだったのかは分からない。
 
 貴方がそんな「小僧寿しヘビーローテーション」にならない様、この記事と前回の記事を読んで、残業漬けの毎日の中にあってもささやかな幸せを得られる物件を見つけてくれたのなら、筆者としても本望である。貴方の新社会人生活、及び社畜生活に幸多からんことを。

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