父の目

父は80歳のとき、右目の角膜移植を受けた。
もう随分、右目が見えず、町医者から、大学病院での診察を勧められて、その後、移植手術となったのだ。手術前、成功率は50%と言われた。
私は正直、左目が見えるなら、やらなくていいのでは?とも思ったが本人は少しでも希望があるならということで手術に臨んだ。
結果、2年たった今も状態は回復せず、、
つまり、手術は成功しなかったということだ。

そうこうしてるうちに見えていた左目の緑内障が進み、そちらも何度か手術をしてる。
頼みの綱の左目も視野がかなり狭くなり困難な生活を送っている。

父は定年後、ヨット、山登り、掛け軸制作、吹き矢などなど、多趣味でそれなりに楽しい定年ライフを送ってきたが、近年はこの目のせいで 家で引きこもる生活になってしまった。全ての趣味を辞めて、今はほとんど、ソファで一日の大半を過ごしている。
それでも、トイレやお風呂は自立できるので、
母も私も少しは動けば?なんて厳しい言葉をかけたりしてしまう。
本人は片眼Onlyな上、双眼鏡で除いた穴ぐらいの視野しかないのだから、動くのも億劫なのだろう。

年齢的にさらなる回復は期待薄なので、
せめて、現状維持を祈るしかない。

先日、母が父にもう旅行行っても 目が見えないから楽しめないねぇというと、父は
目が見えるうちに色んな所に行っておいてよかったよと言っていた。

人生に何が起こるかわからない。自分は大丈夫なんて思ってたら、まさかと思うことが起こるのだ。
未来に何が起きても、後悔しないように
楽しめるときには何でも経験したほうがいいんだと改めて父から学んだ。




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