見出し画像

令和5年8月の回顧と教訓そして「反省」

8月15日が「終戦」の日と言うこともあり、特集番組が多く放送されます。

お盆と重なることもありますが、戦死者の慰霊も忘れてはならない点です。一方で「反省」ばかり強調されたり、「平和」を政治的イデオロギーの隠れ蓑にしている内容も少なくありません。

今夏は台風接近の影響でYouTubeなど見る時間もあったので、私が注目した論考を挙げてみます。


(1)国際政治チャンネル(近代の戦争・現代の戦争)

番組で庄司潤一郎先生の「戦争呼称の問題」等の話がありました。共著でも書かれていますが、私も「大東亜戦争」が妥当と思います。

動画の49:36から「終戦」の意味とは、を説明されています。内容としては私も読んで知ってはいましたが、改めて庄司先生の静かな語り口で8月の静かな夜更けに聞くと重いものがあります。なお、上皇陛下の在位中に戦跡の慰霊訪問された際に事前の「予習」として庄司先生が説明されています。

「大国間競争の新常態」という論点でロシア専門家の山添博史さんの議論も注目しました。戦争を「過去のもの」として語っているのは、日本だけではないかと思います。私としては山添さんが中ロ関係をどう見ているか関心ありましたが、また別の機会の論考を見たいところです。


また千々和泰明さんの「戦争終結論」の話がありました。話題作『戦争はいかに終結したか』は様々な戦争と比較し綺麗に整理された納得の一冊です。

Foresightでの論考で改めて現在の台湾海峡危機、北朝鮮危機について「出口」の議論のあり方についての問題提起は重要だと感じました。

「終戦」をめぐる政治での意思決定の重大さを改めて感じる一方で、日本ンお役所の縦割りとポジショントークの現在の「あるある」感には考えさせられます。

(2)「柏原竜一のINTELLIGENCE」(柏原竜一インテリジェンス・情報史研究家)

敗戦について「インテリジェンス」軽視はしばしば指摘されてきました。インテリジェンス史の研究は近年の文書公開を踏まえて目覚ましいものがあります。情報が軽視されて作戦に活かされなかった点などとは若干視点が違い、明治に西欧における「インテリジェンス」の本質を謀略等の「つまみ喰い」で終わらせてしまったのではないかとの指摘に同感です。(私は「アーカイブ」や「宣伝」にも通じる面があると思います。)

3話で取り上げられた王大楨(王芃生)と青山和夫については私もよく知らなかったところです。対比でいわゆる「ゾルゲ事件」に関心が集中していますが、中国関連も同様で研究としても余地がある印象を持ちました。

なお動画で背景の書棚に『西尾幹二全集』が乱雑に置かれています。柏原竜一さんは西尾幹二先生中西輝政先生の対談本で司会をしています。改めて「人間観」「歴史観」の大きな構図の思考の重要性を感じます。インテリジェンスでの技術はイノベーションで進化しても使うのは人間だからです。インテリジェンスはミクロであっても、マクロの視点も同時に欠かせない示唆が柏原氏の乱雑な書棚から読み取れます。

(3)部谷直亮(安全保障アナリスト)ポスト(旧Twitter)

技術と軍事の関係について、部谷さんの鋭い指摘の論考で以前より私も注目していましたが、終戦の日に出されたポストが特に印象に残りました。戦争そのものより、戦前に新技術に軍(の組織)が対応できなかった経緯や背景こそ反省であり、教訓をとするべき点で、安全保障アナリストとしての矜持と責任感に敬服しました。

78年目の終戦記念日が夕暮れを迎えている。
いろいろな反省点があるが、最大の問題は1933年以降に国家予算の4割、1937年以降は7~8割を軍事費に投じたにもかかわらず、列強に対し技術的に劣後し、しかも満足に前線に配備できなかったことだと私は考えます。
画像は沖縄の海軍壕の展示で、木の棒に鉄道のレールを切断しただけのを括り付けたもの。こんな装備を兵隊さんに持たせて、M4戦車や機関銃に相対させたことは二度とやってはいけない。
繰り返すが国家予算の7,8割を投じて、本土に近い沖縄に小銃すら満足に配備できず、あまつさえこんな木の棒で戦わせた歴史は絶対に忘れてはならない。
今、防衛費増の議論があるが同じ愚を繰り返さないために納税者として使い道を厳しくチェックし、政治にそれを要求するべきだろう。自衛官が同じ悲劇に直面しないために。

部谷直亮さん令和5年8月15日ポスト

(4)静岡県立大学ジャーナリズム公開講座(米倉律日大教授)

米倉氏の政治的なスタンスの内容には異議を唱えたい部分も多いですが、大東亜戦争関連の報道の経緯をデータで論証していて興味深いものがありました。NHKの「中立性」の問題とも関連しますが、左右の争点になるテーマについて、お役所仕事の「事なかれ」でやめておこう、という状態への批判は非常に同感です。戦争そのもの以上に、戦後の「戦争の論じられ方」「向き合い方」に反省が必要です。

(5)ANN富野由悠季×高橋杉雄 ガンダムはなぜ戦争を描いた?

人気アニメ「機動戦士ガンダム」の原作者富野由悠季監督と最近TVでおなじみになった防衛研究所の高橋杉雄さんの異色対談。

戦後の軍事忌避の風潮の中で、アニメを通じて軍事を垣間見た世代が政治外交安全保障の現場や研究を担っています。

戦争についてアニメから知ることが多かった。

高橋杉雄防研防衛政策研究室長

ユニークな着眼の企画で非常に面白く拝見しました。富野監督のの鋭い観察には唸らされました。

ロシア軍のトップの人たちの自信のない目つきを見ると、こういう人たちが指揮をとっていると思えない。だからワグネルが出てきてしまったのではないか、民間軍事会社に頼らざるを得なくなってしまったという構造がわかってきたときに、これは当然旧来の戦争とは根本的に違ってきているので、戦争とは違うような気がしている。今回の戦争を仕掛けたプーチン大統領はSNSを使っていないという証言がある。トランプ大統領と全然違うところでリアルタイムで指揮するセンスを持っていない。この1年を見て分かるのは、軍事というものを基本的に理解した上で統治していると思えない

富野由悠季監督

(6)戦没者追悼式での尾辻秀久参院議長の式辞

政治家が役所作文の朗読係になっている場面をよく見ます。しかしこの式辞では自分の言葉で想いを語られただけに注目されました。

昨年令和4年の式辞でも戦死した父親について述べられています。

一方で米国での戦没者追悼と比べて考えてみる必要もあります。

トランプ大統領の在任中の演説。平易な単語、聞き取りやすい英語、そしてその勇者を称える内容に心に強く響くものがあります。

日本は米国と軍事同盟を結んでいます。その米国での戦没者追悼、米国の尚武の気風を私たちも知る必要があると思います。米国を「知らなかった」ために敗れた面もあるのですから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?