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瞬間小説『おわかれ喫茶で会いましょう』

男「小さくて悪かったな! おまえだって人の事言えないだろ!」
女「ちょっと大きな声出さないでよ! 変な誤解されるじゃない!」
男「誤解って何だよ! だいたい、そんな理由で別れられるかってんだ!」
女「アンタのそういう器の小さいところが我慢できないって言ってるのよ!」

あ〜あ〜、あのカップル、別れ話がこじれてるな〜。
性格の不一致か性の不一致か知らないけど、ひどい痴話喧嘩だ。

それに比べると、僕は幸せ者だなぁ〜!
相性ピッタリな恋人ミサキと、今日もこうして喫茶店で待ち合わせだしね!

おや? あっちのカップルも何やらモメてるな〜。

女「だ・か・ら! 今月の生活費全部、何に使ったのよ!」
男「だ・か・ら! 10倍に増やしてやろうと思って投資したんだよ!」
女「だ・か・ら! それでパチンコで全部すっちゃって、今月どうするのよ!」
男「だ・か・ら! 別れようって言ってるんだよ!」
女「だ・か・ら! なんでそうなるのよ!」

あのカップルは、経済的な理由で別れようって話か・・・。
似た者同士で、相性は良さそうに見えるけどな・・・。
まあ、僕は収入も安定してるし賭け事もしないからあんな事にはならないな。

それにしても、この喫茶店は、別れ話してるカップルばっかりだな・・・。
店員も注文を聞きに来る気配がないし、この喫茶店一体どうなってるんだ?

あ・・・、そういえば、噂で聞いた事があるぞ?
そこで別れ話をすると確実に別れられるっていう「おわかれ喫茶」の噂。
って、まさか、この喫茶店の事か!?

ふふふ、ミサキのやつ、そんな喫茶店で待ち合わせなんて、相変わらずおっちょこちょいで、可愛いやつだな〜!(笑)


カランカランと、ミサキが喫茶店に入って来る。

ミサキ「遅くなってごめん。結構、待たせちゃったよね?」

僕「全然待ってないよ! 大丈夫! それより、この喫茶店って・・・。」

ミサキ「あのね! 今日はね・・・だいじな話があるの!」

僕「え? ええ? ま、まさか・・・!?」

ミサキ「うん・・・。私たち、別れた方がいいと思うの・・・。」

僕「ど、どうして!? 僕たち相性もいいし、経済的な問題も無いよね? 僕はミサキを愛してるし、ミサキの事だけをいつも見てるよ?」

ミサキ「うん。私もあなたを愛してるし、あなたの事もちゃんと見てる。見えすぎて困るくらいに・・・。だから、別れなきゃいけないの・・・。」

僕「さっぱり分からないよ! ちゃんと分かるように説明してくれ!」

ミサキ「あなたは、私と・・・っていうより、この世とお別れしないといけないのよ。だって、あなたはもうとっくに死んでるんだもの・・・。」


そういえば、今思い出したんだけど、「おわかれ喫茶」には、もう1つの噂があったんだった・・・。

その喫茶店には、自分が死んだ事を理解できずに、毎日毎日ずっと恋人を待ち続けている幽霊がいるらしい・・・。



<完>

☆表紙絵 by さとねこと さん → https://note.mu/satonekoto

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