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地球転生第三話

ある日突然、目が覚めると全くの別人になる現象。書物の中でしか見たことがないが、確か名は「転生」。

それが今、私の身に起きているらしい。

地球については、ある程度知識がある。我が国の天文学では、既に1400万年前の地球の姿を観測することに成功していた。

水が豊かで美しい星。それが地球の第一印象だったが、やはりその豊富な資源から、地球は発展を遂げていたようだ。

寝具から身を起こし、背後の壁を見る。そこには、先ほど姿見に映っていた人物、つまりは今の私の情報が載っていた。

「小野慶太(17)全身打撲のため入院」

運のいいことに、言語の発達の仕方は我が国と同じ。容易に読むことができた。小野慶太が今の私らしい。

だが、全身打撲というのは気になった。我が星と同じ意味なら、体中を打ったということだろう。窓の外には、塗装された道を鉄の塊が行き交っている。およそ馬車のようなその塊に、ぶつかりでもしたのだろうか。

枕の近くに円筒形の物体があった。いじっていると、先端が沈み音が鳴る。と同時に、ドタバタと急ぐ足音。数秒もすると先程の男のような、白い服を着た者たちが駆けてきた。

「ど、どうかされましたか!?」

息を切らしながら、中年の男が叫ぶ。

「お、おう。すまんな。ひとつ訊きたいことがあるんだ。全身打撲とあるが、一体何があった?」

私がそう訊いたと同時に、男は不思議そうな顔をした。そして私と同じように、布団の上にいる者から

「なに、あの口調?若いのに、お医者さんに失礼じゃない?」

と聞こえ、自分の口調が若い男とはかけ離れていたのを知ると同時に、白衣を着た者たちは医者と呼ぶのだと知る。

「お、覚えてらっしゃらないのですか?あなたは、そ、その…。」

一気に男の歯切れが悪くなる。

「どうしたんですか?外のあれにぶつかったとか?そうじゃないとこんな怪我にはなりませんよね?」

今度は、口調に気をつけながら尋ねる。自分の若い頃を思い出しながら。

やがてその医者は、意を決したように話す。

「はっきり申し上げますと、あなたは自ら建物から飛び降り、このに入院しています。」

なるほど自害か、と思った。我が国にも、敵との戦を恐れ、同じような道を辿る者もいる。ただ一つ、疑問が。

「それは、一体なぜなんですか?」

周囲の医者たちが、みな苦しそうな顔を浮かべる。ふと、その中の一人が冊子を取り出した。

「これを、見ればわかると思います。」

その医者は、冊子をペラペラとめくった後、後半の方のページを開いて、私に差し出す。感情任せに、殴り書きされた文章は、以下の通りだった。

『×月×日 またアイツらにやられた。金も尊厳も自由も全部奪われた。なんで僕がこんな目に?いつか、やり返してやる。』

そこで私は全てを察した。
これが所謂、いじめというやつだと。

文頭の「また」からは、この肉体の主─小野慶太の苦しみがひしひしと伝わってくる。

私の怒りと医者たちの哀れみで、長い沈黙が続いた。

その沈黙を破ったのは、桃色の服を着た、若い女性の医者だった。

「すみません、小野さんに面会希望の方がいらしています。」

魔が悪いな、と内心思っていたが、聞こえてきたのは意外な名前だった。

「患者には『セバス』と言えばわかる、だそうです。」

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