それは田舎暮らしを決めたひとりの男性の朝の話し。
夜が明けようとしていた。
ヒュゥ…プクプクプク…とケトルの音が鳴り
ほんのり熱めのお湯でぬくめたティーカップに、つい先ほどお鍋で出来たチャイをいれた。
ウバ茶とミルクで炊き出したチャイは口に入れると優しい甘みが広がり、心底ホッと出来る。
もう4月に入ってずいぶんと経ったのに、
外はまだ薄暗く、そして肌寒い。
年季の入った薄茶色のニットのベストを羽織り外に出ると、山桜の花びらが時折ちらちらと舞い降りてきていた。
霧がかかっていて、よくは見えないが今日もけぶる緑のツンと