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目つきのするどい勝又くんと、わたし。

「おいお前聞いてんのか?!」

勝又くんと初めて接点を持ったのはいまから半年前、放課後たまたま体育館の近くを通りかかったら、体育館の裏側で数人の男の子に囲まれてカツアゲをされている子を見つけた。

反射的に茂みに身を隠しその様子を見ていたら

相手は一個上の学年の先輩たちで、
「おい、もっと金ねえんか!こんなんじ全然ゃ遊べへんやないか」と言っていた。

その頃のわたしは気弱で緊張しいで、
クラスでも端っこにいて目立たないような
そんな存在だった。

だからドラマのワンシーンみたいに、
その場に出て行って「あんたら何してんねんな!」と言える度胸はなかった。

だけどほっとく訳にもいかない…

「どうしようか…」と思っていたら
ちょうど近くで
テニス部の子たちが練習をしていたので
「こっちにもボールありますよー」と教えてあげるフリをした。

その声に「やばっ、見つかる!!」とカツアゲしてた子たちは去っていった。

残されていたのは…、クラスでも問題児だった勝又くんだった。
彼は高校の入学当初から鋭い目つきで有名で、加えて素行も悪かった。

遅刻早退は当たり前、授業に来ないことだって珍しくはなかった。
だから勝又くんを見た瞬間、
もしかしたらヤバい人を助けてしまったかもしれない…そう思ったけれど、彼は間が悪そうに明るい茶色に染めた頭をかきながら
「おいそこにいるんだろ?!」とわたしを呼んだ。

仕方なく渋々茂みから出ていくと

「確か同じクラスの奴だったよな。助けてくれてありがとな。」とやけに素直にお礼を言ってきた。

そのことに拍子抜けしてしまったわたしは、思わず「勝又くんって、もっと取っ付きにくい人かと思ってた…」と言ってしまった。

あ、正直に言い過ぎた?怒られる?と思った瞬間、勝又くんはお腹を抱えて笑いながら
「お前っ、ほんまに正直なやつやなぁー!変わってるわ!俺がこわないの?!」といった。

確かに一見彼の風貌からは怖いように思えるけど、実は見た目の印象とは違う人なんじゃないかなぁ?そう思うようになっていた。

「んー…怖くないかって言ったら、嘘になるけどでも勝又くんって、きっと素直な人やんね?」そういうと

「あー、まあ、周りが抱いてる印象とは多少違うかもな。俺生まれつき目つきが鋭いだけで、「ガンつけてんのか?!」ってさっきみたいに言われたり…金せびられたりするんよなー。
そんな睨みつけてるつもりはないんやけどなー」と言った。

「そうなんやぁ、わたしも勝又くん怖い人やと今まで思ってたわ」と正直に話した。

すると勝又くんはクスリと笑って

「しかもこの髪もイキってるように見られるんよなー…」と陽に透けてキラキラ光る茶色の髪を摘んでみせた。

「きっと、信じてもらえないと思うけどさ、俺どっかの国の血を継いでるから色素が薄いんよ」と言った。

「え?どっかの血ってどこなん?」と聞くと

「とーちゃんは母ちゃんともう離婚しとるから詳しくは分からん。いまは自分の国に帰ったって母ちゃんから聞いてるし…それに」

「それに?」

「それに、いま母ちゃん体調があんまり良くないからそんな沢山喋れへんねん」と言った。

あ…。もしかして

「もしかして遅刻とか早退が多いのって…」

「家の手伝いとか母ちゃんを病院に連れてったりしてるからやで。家には爺さんと俺しかおらんから、母ちゃんが頼りにできるの俺しかおらんからな」と言った。

途端にいままで、クラスの大半の子たちと同じように鋭い目つきの勝又くんに偏見を持っていた自分が恥ずかしくなってきた。

「あ、お前今、かわいそうとか思ってへんかったか?俺はそんなことちっとも思ってへんからな!気にすんなよ」と頭をポンポンと触れて、茂みに隠れたときについていた葉っぱを取ってくれた。

その日からわたしの中で勝又くんの存在は特別になった。

(つづく)


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