目つきのするどい勝又くんと、わたし2
初夏になった。
桜の花びらもすっかり散り、青々とした葉っぱが校庭の木々いっぱいに広がっていた。
窓の外から入ってくる風が心地いい…
あの日以来、わたしと勝又くんの関係は変わった。あいかわらず勝又くんは、学校に来たり来なかったり…していたけど、登校して来るとなぜか同じクラスのわたしだけに挨拶をしてくれるようになっていた。
彼がわたしの机までやってきて、
話しをする様子をみたクラスメイトからは、
「目つきのするどいあの勝又くんが?!」とざわついているのが分かった。
大人しく引っ込み思案なわたしと、素行の目立つ勝又くんの組み合わせのギャップに驚いていたのかもしれない。
勝又くんが自分の席についたあと、コソコソと
「笹原さんよく勝又くんと話せるやんな!怖くないの?」と聞かれた。
そのことについて引っ込み思案だったわたしは「うーん…意外と喋ってみたら怖いひとちゃうみたいやで」と答えるので精一杯やった。
確かにわたしも少し前までは、クラスの皆んなと同じように彼のことをとっつき難い人だと思い込んでいた。
だけど実際話してみた勝又くんは、皆んなの噂してるイメージと全然違った。
むしろイメージとは正反対の明るくて、時々はにかむ笑顔が眩しかった。
両親からは「人は見かけで判断しちゃあかんよ」とよく言われてたけれど、本当にその通りだなぁと思った。不覚にも勝又くんの言葉にドキドキしてしまう自分がいた。
だけど同時にこれは誰にも知られたくないわたしだけの秘密だった。もし勝又くんの本当の姿を皆んなが知ってしまったら、あっという間に人気者になってしまって、引っ込み思案のわたしなど相手にされなくなるかもしれないと思った。
それが怖かった。
「せんせー!さよならー!」
「また明日ー!」
授業から解放され、クラスメイト達は皆んな足早に帰って行き、教室には私たち2人だけになったある日の授業終わり、担任の宮下先生に呼び出された。
「笹原ちょっといいか?」
誰もいなくなった教室で、宮下先生は
「じつは、勝又のことなんやけどな
最近アイツ学校にまともに来てへんやろ?笹原なんかそのことについて聞いてへんか?」と聞いてきた。
「先生なんで、そんなことあたしに聞くんですか?」
そんなことを聞かれて思わずビックリした。
すると先生は
「いや、アイツのことを実は高校入学する前から知ってるんやけどなー、なんか最近のアイツは笹原と話してるときだけは柔らかな表情するようになったなぁと思っててん」
途端にカァっと顔が熱くなる。
「勝又くんからは、特に何も聞いてません」
このようすだと彼のお母さんの話しを
先生が知ってるとも思えなかったし、
勝又くんが話してない話しをわたしが勝手にするのも違うと思った。
「そうか…笹原も知らんかったか。悪かったな、呼び止めて…。けどさ、もしアイツと接点あるんならこれアイツに届けてやってくれないかな。クラスのよしみってやつで」
そう言って宮下先生からは、授業関係のプリント一式を渡された。
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