千田いちろう

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「夏をあきらめて」と決別した夏の夜

8月は覚悟の月、何かしら大事なことをあきらめてきた。 サザンオールスターズの「夏をあきらめて」の歌詞に出てくる"恋人"や"彼女"をタイガース的にアレと読み替えるとしっくりくる。なんと、もう42年も前の歌ですか? 40年もの間、8月はだいたいは、そうだった。 別れたばかりの恋人のように未練は残り、CSや個人タイトルの応援に無理やり意識を方向転換するけれど、どこか虚ろだ。 I'll try to make it shine... 8月ならまだマシというベイファンもいるかもし

    • 木内マジックを受け継ぐ者

      ’90年代のベイスターズの中継ぎ陣を支えたひとりが、島田直也だ。'94年9勝、'95年10勝とリリーバーながらも、2年連続でチーム最多勝を挙げた。盛田や島田、ヒゲ魔神の五十嵐など、中継ぎというよりも「投手リレーの中軸」と呼ぶにふさわしいリリーフの陣容や活躍が、当時試合を支えていた。 “ホールド”という公式記録がなかったことや、テレビのライブ放送が少なかったことから、彼らが派手に脚光を浴びることは多くはなかったものの、'90年代の彼らの貢献が'98年のベイスターズの日本一

      • Yoshi 22Go!

        筒香は渡米して5年目のシーズンを迎える。サンフランシスコ・ジャイアンツのキャンプに招待されて、メジャー昇格へ向けて奮闘中だ。ジャイアンツは、ドジャースはもちろんだが、6月後半には、今永のいるカブスとの対戦スケジュールも組まれている。なんとかメジャー契約を勝ち取って、メジャーでの山本由伸や今永昇太との対決が見てみたい。 今回は昨年、彼がテキサス・レンジャーズ傘下でプレーしていた時に書いたノートを投稿させていただく。 Lone Star State=一つ星の州、テキサス州の別名

        • ベイの新スローガンを予想してみる

          人生の航海も半世紀をとうに過ぎると、たどって来た航路があやふやになる。書類がいろいろ残っている会社はともかく、悲しいかな、サラリーマンは社外での自分のことを忘れる。 たとえば、 前に住んでいた家の住所の番地や電話番号は何だっけ? シアトルでイチローを見たのは、何年だったっけ? 腎結石で入院したのは何才のときだっけ? 実は自分が何才で結婚したのかさえ、すぐにわからない。 20XX年に結婚したから、あー、35歳のときだった、 そんな感じ。 加齢に伴う脳のメモリ機能の低下が主

        「夏をあきらめて」と決別した夏の夜

          櫻井周斗、鳥になれ

          またひとり、左腕がチームを去る。2018年入団のサウスポー櫻井周斗、現役ドラフトで指名されたイーグルスへ移籍する。 タナケン、笠原、エスコバーと続いて、このシーズンオフに4人目だ。今永ももうすぐメジャー移籍が決まるだろう。実績ある左腕が計▼5人。ちょっと珍しい。 山崎福也と石田健大、ベイ的にFAで大騒ぎしたが、大山鳴動してなんとやら。 ドラフト3位で武田投手が入団したとはいえ、彼は今は高校三年生の冬休みの真っ最中。二刀流は楽しみだが、武田二刀流実現のためには、ローテに入

          櫻井周斗、鳥になれ

          Welcome to the Dodger Stadium!

          カリフォルニアの球場に屋根は不要だ。そこは天使の街か、荒野の入口か。エンゼルスタジアムが夢と魔法の国にあるならば、ドジャースタジアムは、天国と砂漠の間にあるといってかまわない。椰子の木と青い空がよく似合う。 日本から向かえば、ロサンゼルス国際空港から車で60分足らず。ビバリーヒルズとチャイナタウンの間、映画に出てくるL.A.のど真ん中。天国と砂漠の狭間てもあり、セレブとマイノリティの混沌の地てもあったり。 峡谷に建てられたすり鉢の球場。MLBの球場としては、珍しくシンメト

          Welcome to the Dodger Stadium!

          君は太陽

          今年もドラフト会議が開催されました。 私たちにとっては一年の仕事の総決算日。追いかけてきた一推し二推しの選手を指名できれば大団円。とはいえ、監督が変わったり、FA行使のゆくえも不透明だったり、会議が終わるまで補強ポイントは流動的です。 次に指名する予定の選手が、ウェーバー順で他球団に指名されないようにと祈りながら待つ時間はまさに永遠。直前に指名されたら瞬時に別の決断をしなくてはいけない。 有望とみられた選手が意外にも指名漏れになったりするのも、当日のドタバタのせいもあったり

          斎藤隆、オールドルーキーの冒険と貢献

          2006年に米国へ渡り、ドジャースに昇格したとき、斎藤隆は36歳。オールドルーキーへの期待は内外でそれほど高くはなかった。 ベイスターズでは1998年初の日本シリーズで完璧な完封勝利を挙げ、日本一に貢献後、大魔神が去ったあとの投手陣の頼れる存在として先発や抑えにフル回転した。 そして優勝から7年後の2005年のオフに球団に志願してメジャーに挑戦。30代半ばのタイミングでの挑戦は、無謀では、という評価も少なくなかった。 それは彼にとっても勇断だったはず。本人も自分の夢のた

          斎藤隆、オールドルーキーの冒険と貢献

          牛若丸の本懐

          突然カウントダウンが始まった。かつてのハマの牛若丸、藤田一也が選手として現役を退く。 秋晴れのハマスタへ。残り試合は数試合、CSに向けてチケットの残りも少ない。彼のプレーを見る最後のチャンスとなるかもしれない。 8回裏二死一塁、大歓声と満場の藤田コールに迎えられた彼は、軽やかなバット捌きで戸郷の2球目をセンター前に落とす。キャリア1034本目のヒットだ。わずか17打数とはいえシーズン打率.353。0-6の試合でいちばんハマスタが盛り上がった時間だ。 粗さや若さが露出した

          キャプテンとは、不動であるべきか、それとも不在であるべきか

          ジャイアンツの新キャプテン、岡本選手が8月は12試合で10HR、OPS1.345と打ちまくっている。 素か芸か、僕にはわからないけど「最高で〜す」な不動のジャイアンツの4番は、「新キャプテンで〜す」なんて名刺に肩書きを入れたから、気兼ねなく打っちゃっていいかな、みたいな感じ?それともキャプテンとしての何かが打たせている?WBC反動のせいか開幕当初は球が飛ばず、その後もチームの調子とリンクしているのは明らかだから、さすがにノープレッシャーではないだろう。 ところで、キャプテ

          キャプテンとは、不動であるべきか、それとも不在であるべきか

          アナハイムの夏はまだ熱い

          2023.7.21 アナハイムのエンゼルスタジアムに4万人の観客が集まった。 大谷翔平がエンゼルスのユニフォームを着たホーム最後の登板となるかもしれないゲーム。 観客数は通常の3割増。交流戦となる相手はナ・リーグのピッツバーグ・パイレーツ、地区最下位のチーム。大観衆はゲームよりも大谷目当てだ。 しかし、大谷の変化球が甘い。 WBC決勝戦でトラウトを空振りにしとめたえげつないスイーパーは鳴りを潜め、大谷は4回表に連発で2点を先取される。 ところが、打線の中核トラウト、

          アナハイムの夏はまだ熱い

          甲子園がすべてじゃない

          僕の甥っ子はバファローズの山下舜平大やドラゴンズの高橋宏斗と同学年。ベイスターズには牧の次に3位指名された地元出身の松本隆之介がいる。 そして高校時代は彼らと同じ属性、つまり、野球部の背番号1だった。 とはいえ、夢は甲子園、なんて言ったら爺ちゃんに大笑いされる無茶な話。神奈川県の無名の公立高校の野球部だから。 横浜高校だった松本投手とも、もちろん面識はないらしい。 2020年、夏の甲子園が中止になって、彼にとってラストだった最後の県大会が中止になった際は、彼の母親は、速攻

          甲子園がすべてじゃない

          Wの帽子と幸せな甲子園ライフ

          「帽子、カッコえぇな!自分、大洋ファンなん?」 小学校高学年にして、ベイスターズファン人生で最大の岐路を迎えた。 5年生の春に父の転勤都合で横浜市から西宮市に転居したのだ。 新居の住所は甲子園七番町、7階の居室は窓を閉めてもナイターの歓声や六甲おろしが聞こえてくる。7回ウラのファンファーレは風呂に入る号令だ。 転居してまず、地域児童に好評の「阪神こどもの会」に入会した。小学生会員は甲子園球場の阪神戦に無料で入場できる。今はららぽーとになっている遊園地、阪神パークもフリー

          Wの帽子と幸せな甲子園ライフ