2023年1月2日 はじめまして


2024年1月2日、行く年を送りだし、来る年を迎い入れて二日目。
天気は曇り、家の中の廊下でも息が白くなるほど、空気は冷え込んでいた。

 今日(2023年1月2日)の午前中は一家で父の親戚のお宅二軒に、新年のご挨拶をしてきた。
 一軒目のお宅は、そこの家の大ばあちゃんが去年の秋口に亡くなってしまったため、新年のお祝いを伝えることはできなかった。
 そのお宅には件の大ばあちゃんを支えてきたおばちゃん(父のいとこ)がいる。このおばちゃんは、田舎あるあるの、豪快で芯が太く、まっすぐな優しい方である。


 大ばあちゃんは晩年、老い特有のボケが進行してしまい、支えていたおばちゃんは気丈に振舞っていたが、いつもどこか疲れているようだった(こっちの思い過ごしだと思うし、こんなこと言ったら張り倒される、絶対。)。
 今日、あいさつに伺ったところ、趣味の韓流ドラマを見ながら煙草をふかしていた。


 「遺品整理が大変だから、全然進んでないんさ。」とか、「隣ん家と畑で作った野菜をシェアしてるんさ。」とか、語尾に特徴的が出る訛り交じりの話し方をしながら、近況を教えてくれた。
 「ほれ、これ持ってけ。」と、話の途中で、後ろにある冷蔵庫から、ジップロックに入ったイカ人参を出してきた。さらに、しばらく席を外したと思ったら、隣ん家からいただいた大根で作った角煮with大根の煮物と温めれば完成の焼豚ともつ煮も持ってきてくれた。


 このおばちゃん、料理がめちゃくちゃ上手い。あいさつ回りと銘打っているが、その実、おばちゃんの料理にありつけることを、メインの目的に据え置いているほどだ(もちろん死ぬ気で公言はしない)。この文章を打ち込んでいる最中も思い出すだけで腹が減り、よだれが出てきてしまった。
 手作り料理のお土産を受け取り、二件目の挨拶参りへと向かうため、席を立った。「もう行くんけ。」と言いながら、おばちゃんはお見送りをしてくれた。


 お土産を渡したときから、お見送りをするまで、おばちゃんの顔は優しい笑顔だった。一つの大きな山を越えたような、少しの疲労を感じさせる、それでも清々しい笑顔だった。
 二軒目のお宅へ移動中、空を覆っていた雲は厚みを失い、切れ間から日の光が差し込んだ。


 二軒目のお宅にも今年で90になる大ばあちゃんがいる。もうだいぶ耳が遠くなってしまったが、それでも受け答えはしっかりとできているようだった。この大ばあちゃんを支えているのが、大ばあちゃんの長女のTおばさん夫婦である。TおばさんもTおばさんの旦那さんもすごく明るい方で、いつ伺っても快く受け入れてくれる。


 今回、この二軒目のお宅に伺うにあたり、最も楽しみにしていたのは、Tおばさんの作るもつ煮である。申し訳ないが、食べ物である(本当にすいません)。このもつ煮が、まぁおいしくて、まったく臭みがないのに、しっかりとモツのうまみと嫌にならない香りがする一品で、食べてるだけで幸せものなのだ。


 ここ数年のお正月は、このお宅で箱根駅伝を見ながら、出していただいたもつ煮を含む料理に舌鼓を打ちながら、近況報告をする流れになっている。
 今年は、僕が来春からスタートする一人暮らしが不安でたまらないこと、もつ煮の作り方、妹の近況などが話の種となった。その中で、このお宅の大ばあちゃんの話になり、大ばあちゃんは少しボケが始まっている、と話してくれた。
 Tおばさん夫婦は近くの町に住まいを持っていたが、大ばあちゃんを支えるため、今は大ばあちゃん宅に拠点を移している(父談)そうだ。


 帰りがけに、「はい、これ。」、と言ってタッパーに入れたもつ煮を土産として持たせてくれた。うれしい大誤算だった。


 おいしいお土産をたくさんいただいて、ほくほく気分で帰路に着きながら、ふと考えた。
 おばちゃんもTおばさんも自分の人生を生きている。だけど、自分じゃない人(少し言い方は冷たくなってしまうけど、、、)の影響を受けて生活をしている。それでも、二人とも、明るく気丈に振舞っていた(勝手な思い込みかもだけど)。


 少し前に星野源さんのエッセイを読んだ。その中に、星野さんが今でも頷ける言葉として、タクシー運転手の「人間、好きなことをしてなきゃダメだよ」(星野2022)という言葉を挙げていた。
 好きなこと。おばちゃんは当時、好きなことできてたのかな、Tおばさんは今、好きなことできてるのかな。そんなことを考えていたら、雲間から覗いていた太陽は、再び雲の裏に引っ込んでしまった。


 僕にはいくつか好きなことがある。坂道グループの応援(特に櫻坂!)、プロレス観戦、野鳥観察。音楽を聴くことも好きだし(知ってる幅はめちゃ狭い)、ラジオを聞くのも好き。
 好きなことがあることが、人生を豊かにすることに直結するとは思わない。けど、来春から始まる社会人生活、今よりきっと縛りは多くなるだろうな。社会だったり、他人だったり。
 いろいろな縛りができるとき、その縛りを断ち切る道具はたくさんあった方がいいかも、とかなんとか、人生経験折込チラシくらい薄っぺらの人が、人生経験広辞苑10冊分の方々を見て感じたことを打ち込んでみました。


 と言うことで、この打ち込みも一つの道具になればいいなと思い始めました。今後も思い立ったときに更新していきたいです。

 では、今日(2023年1月2日)の夜は放射冷却が起きて、ぐっと気温が下がりそうなので暖かくして寝ることにします。読んで下さりありがとうございました。

引用文献
星野源(2022):『いのちの車窓から』,株式会社KADOKAWA,p18.


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