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【最新作云々㊼】キミは顧客にいいように扱き使われる弱小広告代理店で人としてのモラルを保てるか?! 延々繰り返される一週間のループを通して夢を一つに奮闘するお仕事青春コメディー映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(・ε・`●)
 こないだSpotifyで"90年代シティーポップ"的なプレイリストを聴いていたらKATSUMIさんの『YES,抱きしめて』が流れて来て強烈に懐かしかったものの、あの曲の発表当時未だ5歳なのにアレッ?と思った、O次郎です。

※思ったけど何のことは無い、おそらくはこのCMを観たんでしょうて。
気の所為か、早くも当時のCMにもバブル期の底抜けのネアカさが失われてる気が・・・。(´・ω・`)
 
 今回は最新の邦画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないです。
 キッカケはシンプルに各種映画サイトの口コミ・レビューで好評ぶりを拝見したのでそれでは…という、後ノリしたミーハーぶりで。
 結果、ほとんどオフィスのワンフロア内で物語が展開するぱっと見の低予算感は有りながらも、90分足らずの尺の中でテンポ良く謎解きと笑いが盛り込まれ、"タイムループ"といういわば飛び道具の設定を上手く物語のカンフル剤にしつつ最後は青春ドラマのような爽やかさも醸し出しているなかなかの秀作でした。
 "低予算のアイディア勝負"という括りではいわゆる深夜ドラマ的なテイストたっぷりであり、著名キャストは数えるほどしか出ていないけれどもそのぶん特異な物語運びと親しみやすいあるあるネタにどっぷり浸かれます。
 深夜ドラマ的作品が好きな方々はもちろんのこと、僕と同様に本作の好評を知って気になった方々、参考がてらに読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレふんだんに含んでおりますのでその点ご容赦をば。
 それでは・・・・・・・・・出川哲朗さん!!

※Wikiのページ見てみたらなんと、この曲の発売当時のLDカラオケ映像に出川さんが出演されてたとか・・・YouTubeに上がってたコレはその当時のヤツじゃないようですがどんな感じなのか興味津々。


Ⅰ. 作品概要とループ脱却作戦の数々

 とある小さな広告代理店の一部署のオフィス、今日も今日とて身勝手で此方の足元を見ているクライアントからの無茶な要求の連続で会社に泊まり込み状態で泥のようなから覚めた部の面々たちが向こう一週間を無限ループ状態であることに気付き、そこからの脱出を目指します。
 こないだ観た『グッドバイ、バッドマガジンズ』もそうでしたが、クリエイターの職場は大概ワーカーホリック感出しててオーバーだなと思ってましたが、こんだけテンプレ的にそういう描写をされてるからには現実も遠からずなのかなと思うと…。

ちなみに私はクリエイター職は未経験ながらも前々職でごく稀に終電や泊りになったことがあり、
深夜帯に黙々とPCに向かってる際に言いようの無い高揚感感じてしまって、
「これがクセになるとワーカーホリックの入り口か…」とゾッとした覚えがあります。

 そんでもって一週間のループの原因(犯人と事象)の解明と状況打破に動くことになるわけですが、スタート当初は年次の浅い男性二人しか気づいておらず、気付いていない残りの社員にタイムループの現存を悟らせることから始めなければなりません。
 若手二人が気を置けず話すことができるのは主人公の吉川であり、その彼女が気安く話せるのはその先輩の社員、そしてその先輩が説得出来得るのは・・・というように二昔前のRPGゲームのように根気良く数珠繋ぎで説得を行っていかねばならないお使いゲーム感はなんとも滑稽ながら、今日日の会社組織に於いてこういう形で年功序列の残滓が現れるかと思うとなんとも演出の巧さにクスッと来るところです。

ちなみにこちらの不気味で宗教感漂うポーズは・・・
ループ当初の月曜の朝のバードストライクの合図。
皆が寝落ちから目覚める切っ掛けでありながら
同時に部長はこの後に出勤したためにループを気付かせる合図に使えない、
という展開的工夫がまたなんとも。

 加えてそのループで説得すべき対象社員の性格を鑑みてループを悟らせる説得アプローチを変えていることが各人のキャラクター性を端的に表すとともに画的な変化も確保しており、なかなかニクいところで。

そして説得ゲームのラスボスである部長(演:マキタスポーツさん)は
年齢もあってタイムループなど俄かに信じられないため、
部下総出で部長のリアクションを先読みしたパワポプレゼンを駆使して撃破!!

 そこでなんとか部長を説得のうえ、ループの原因と思しき自身のブレスレットを破壊してもらうことに成功しますが、残念ながら見当違いだったようでループ脱出に失敗します。
 そもそもその原因の特定がオカルトオタクと思われる若手男性の内の一人の当て推量だったのですが、タイムループの異常さからその筋道の通らなさを皆ガン無視していたのも滑稽であればオカルト雑誌『ムー』のネタをぶち込むセンスもなかなかユニーク。
 というわけで以降はゲームでいうなら二週目、今度こそループから脱出するべくその特異点と原因を探ります。

 原因はモノでなければコト、ということで、部長から信頼を置かれている古株社員が経験則的に部長の"心残り"が原因ではないかと推理。
 なんと彼は部長の遠い昔の夢の残骸、書きかけの漫画の原稿を発見したことがあるそうで、それを完成させて投稿してもらうことがカギなのではないかと。
 またしても当てずっぽうで確証など無いのですが、時間は有限なうえにまたぞろリセットされてしまうためどんどん試すしか無いわけで、しかも推理のプロセスはきちんと別のアプローチで臨んではいます。
 そしてここからはとうの昔に忘れた夢を予期せずして他人に指摘された部長のじれったい尻込みが始まり、漫画を描かせる以前のところで足踏みさせられるのが眩暈と苦笑を禁じえないところです。

ただでさえ引っ込み思案な部長を説得するために部員一同でおだてるだけでなく、
ループを存分に使って社内で読者アンケートを取ったりと大忙しながら
それでも部長は尻込み続き。それならと、、、

 なんと仕事そっちのけで部下一同でこっそり社内ブースを作って部長の書き書け漫画の執筆作業。みんなで和気藹々と分業作業に挑みながら親睦を深めますが、逆を言うとそれまで仕事でそうした機会を互いに持てていなかったということであり、自己責任の個人プレーが当たり前の状況だったのかもしれません

 その最たるものが主人公の吉川で、自分の憧れの会社からのヘッドハンティングの声に鼻息荒くいきり立っており、社内の別社員からのアドバイスには耳を貸さず、他人の細かいアシストにも謝意を示さず自分の手柄のために私生活を含めたあらゆるものを捧げます。

それまでタイムループを抜けるために一丸となってきましたが、
漫画の共同制作については断固拒否。
画を通すだけなら未だしも会社の現状に甘んじる他の社員を見下した態度を取るのは…

 ループの期間中にそのヘッドハント先に抜群のプレゼンを成功させたことで意気揚々と相手先オフィスを訪れますが、自分のキャリアのためには他人を蹴落とすことが常態化している彼らの言動を見るにつけて我に返ります。
 実にベタな展開ではありますが、自分が仕事上のベンチマークにしようとしていた憧れの人物の人間性が…なものであったとしたら心に従って退くのがいわば仕事人としての防衛本能だと警告しているかのようです。
 
 そしていよいよ本当の意味で部下一丸となっての共同作業と部長の説得。
 "最終決戦前に主人公が個人的幸福追求に走り、痛みを伴いながらその過ちに気付いてあらためて仲間とパブリックエネミーに挑む"というプロットからすると少年マンガやバトルアニメのような盛り上げ方でもあり、ベタではあるもののそれだけに鉄板のクライマックスへの導入となっています。

鉄人タイガーセブン
個人的にはコレの最終回を思い出しちゃいますが…
こっちは寄り道した際に失ったものが多過ぎたか。

 そして部下たちの並々ならぬ奮闘に対して、遂に往年の情熱の残り火を掻き集めて漫画の仕上げを了承する部長。
 作中漫画の内容も輪廻転生に関するものですがその結末は是非作品内にて。
 部長がかつて夢を捨てた人だったことを知った部下たちの「夢と会社の部下と選ぶならどちらですか?」というド直球な問いに対して、「夢・・・と答えられる人間になりたかったかな…。」と細部まで紛れも無い気持ちを吐露するところがなんとも素敵です。
 きっと本作での部長のように若い頃に夢破れてあるいは諦めて堅実な道を選んだ人は数限りなく居るでしょうし、そういう方だからこそ結果として選んだ堅実な道を大事に力強く歩むでしょう。夢を諦めただけの価値が有るものにしないといけないですから。
 実際、部下の仕事の失態を平身低頭、相手先に電話で誠意をもって謝る部長の姿はなんとも言えない哀しさは禁じえないものの確かにカッコ良いです。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
催眠が解けたみさえさんとひろしさんながら、過去にハッキリと夢を捨てた意識と経験のある
ひろしさんだけが郷愁を誘う風景の中で再び今の自分を忘れようとし、
対してみさえさんとしんちゃんは彼の恐怖にも似た想いが理解できない…みたいな感じか。

 すんでのところで漫画の原稿が無事完成し、漫画投稿が叶って果たしてタイムループからも脱出!!
 ラストは特に、みんなで一丸となって大きな一つの目標に取り組む、誰しも人生の各段階のどこかで味わった高揚感を彷彿とさせます。
 歳を経るごとにそれぞれがそれぞれに抱えるものが増えていくのが常で、それだけに同じ方向を向くことがこんなにも回り道せねばならず難しいものかと仕事人のアイデンティティーに鑑みて考えさせられるところですが、だからこそそれが容易だった子どもの頃よりも幾倍もそのことが尊いのかもしれません。

そして同時にいつかはその一丸となった状態から卒業することにもなるわけですが、
だからこそそこにドラマが生まれるわけでもあり。
そしてそれならばと『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を思い出す次第。
同じ押井守監督のパトレイバー第一作第二作もやはり
モラトリアムとそこからの脱却を強く感じさせる内容でしたね。


Ⅱ . おしまいに

 というわけで今回は最新の邦画MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』について語りました。
 上記の結論の通り、欲を言えば部員それぞれがその後、自分の夢に向かう様をエピローグ的にでも示してもらえればなんとも言えない余韻が出たかと思いますが、それはそれで全体的なコメディーの味わいに色をさしてしまうのでやはりコレでよかったのかも。そもそも、予算やスケジュールなりなんなりの関係でこれ以上の尺は望むべくもなかったのかもしれませんが。
 ともあれ、発想とそれを生かすセンスは確かに感じられ、それに加えて、競争ではなく互いに支え合い補い合いながら目標を達成するあの感じを思い出させてくれる一本でした。
 本作のスマッシュヒットで低予算・小規模作品の異端作が土壌として作られやすくなればさらに云うことなしかと思います。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




"あけましておめでとう"といえば"お年玉"。
"お年玉"といえば・・・ということで。
それでは皆々様、良いお年を。。

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