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おしえて!柴犬先生!

~Ore Mo Omaemo~ オマエもオレも


私は今年46歳である。んで先生は現在3歳である。
賢さだけで言うならば、圧倒的に先生が上である。

先生は基本、何も教えない。
まるで”見て学べ!”と言わんばかりである。
先生はジャーキーに最近飽きてきているようで、
袋をチラつかせても、あまり反応しなくなった。

先日、”せんせいがお手とか、お座りする時ってどんな時ですか?”
と尋ねてみる。
”・・・”
いつものようにハァハァ舌を出しながら、こちらを見ている。
頭を撫でながら、”今日も暑いですな”と言うと、
いつものように擦ってくれと言わんばかりに体を押し付けてくる。

唐突に”お手!”と言ってみる。
さっきまでの舌出しハァハァは ”ピタッ” と無くなる。
こちらをジッと見ている。その目の奥にには、
明らかに心の内を覗いているかのような、威厳と力強さがある。

一瞬訪れた緊張はすぐにハァハァ舌出しに戻る。
”お座り!”
今度は体を押し付けてくる。相変わらず暑そうだ。まー毛皮自体、
こちらも暑い・・・
”まてよ。何で私は体を擦るんだっけ?”

瞬間、”ハッ!”とした。
体を擦りながら、先生の思惑を、伝わってくる何かを私は感じた。
先生は擦られながら、”フフッ”と一瞬笑った・・・ように見えた。

”擦られて・・・あげるよ”

私は何を勘違いしていたんだろう。
擦ってると思っていた私は、完全に”上”から見ていた。
が、先生は違う。”お手!”のやり取りから、私に何もないのを
瞬時に見抜き、続く”お座り”で確信した。
しかし、問題はその先である。

普通ならば、人間世界ならば、大概その場を離れる、もしくは
相手の出方を伺う。が、先生は体をすり寄せてきた。
これは、

知崇礼卑(ちすうれいひ)
➡賢人は、他人に対して、へりくだり礼を尽くすものである。

さらに相手の立場を、相手の方から気づくように諭し、咎めることもしない。(否定しない)
先生は知っていた。私が何も持っていないことを。

本来、犬に対し、”お手”や”お座り”をさせるには、エサが必要である。
そして犬がそれを理解することで成立する。
言い換えるならば、それは”何か得るための行動”であり、
この場合は、エサをもらうための行動と言えるだろう。

これは人間も同様で、”何かを得る為に何かを失う”はこの世界では共通な事なのかもしれない。

先生は、私の一方的なマウントに対して無言で諭していたのである。

”人間も犬もおなじだろ?
お前も何かを得る為、何かを差し出す。
深く考える必要はない。
感じることはできるはずだ”

先生はしばらく擦られて、見張り台(お気に入りの場所)へ戻った。

生暖かい風も今日はやけに体に絡みついた。





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