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値づけのコツ オンラインゲームが教えてくれた「需要」と「供給」スクリューフライヤーの暴落

値づけのコツは「納得感」である。自分が納得のできる値段をつけることができると、商売が一気に楽になる。いい値づけはお客さんとの信頼関係も保ちやすくなる。

例えどんな値段をつけようと、お客さんが「なるほど!そういうことね」と思ってくれさえすれば取引は成立する。だから値づけはテキトーにやってはいけない。値づけを制する者は商売を制する。と僕は勝手に思っている

僕は自分のサービスを自分で売って生きている個人事業主で、この働き方は6年目になる。自分で言うのもアレかもしれないが、値づけは結構得意な方だ。個人が取り扱うサービスとしては相場から桁がひとつもふたつも違うサービスを売って生きてきた。手前味噌で恐縮だが、いい取引の前には必ず「いい値づけ」があると言い切れる。

いい値づけをするには、まず「モノやサービスの値段がどうやって決まるのか」ということを理解しなくてはいけない。と言ってもそんなにかっちり「経済学」的なモノを学ぶ必要はなくて、感覚的に「相場」という概念を理解できていたらいい。僕が相場と言うものを学んだエピソードを紹介しようと思う。

時は2008年。当時の僕は中学2年生で、レッドストーンというオンラインゲームにハマっていた。ゲーム内でキャラを作成し、友達と一緒に狩りやクエストに出かけるMMORPG。まあ大人数でやるモンハンみたいなものだ。僕は数人の友達と寝る間を惜しんでプレイする日々を送っていた。

レッドストーンの中にはアイテムを自由に売買できるシステム(露店)があって、露店は誰でも開くことができ、出品するアイテムの値段も個人が自由に決めることができた。アイテムによっては億を越える値段がつくものもある。その値段は時期によって上下した。個人が自由に値段をつけているはずなのに、「あのアイテムはこのくらいの値段」と言われる基準があった。つまり、ゲーム内にも「相場」が存在するのである。

億を越えるアイテムの中に、スクリューフライヤー(略してSF)という槍使い専用の武器があった。槍使いの攻撃回数を1.5倍にする効果がついていて、持っていると単純に1.5倍強くなるということで大変人気があった。なのにドロップ率がすこぶる悪くて、市場に全然出回っていなかった。「ランサーはSF持って1人前」とまで言われていた。

SFは当時3億gold(ゲーム内の通貨)くらいしたと思う。露店で見つけるたびに「うわ〜SFだ〜欲しいな〜」と思ったものだ。だがその「SF神話」は受験でレッドストーンから離れていた半年間で突然終わった。

久しぶりにログインしたら世界が変わっていた。SFが500万goldで投げ売りされているのだ。どこの露店を見てもSFが知っている値段の60分の1以下で売られている。え、どういうこと??いつも一緒に遊んでいた「ぐっぴーさん」に話を聞いた。

「君がいなくなってからすぐ『インフィニティシリーズ』がリリースされてね、それがSFの上位互換だったんだよ。今やSFは初心者用装備になっちゃって、500万でも買わないよね

衝撃だった。衝撃すぎて僕はそのままレッドストーンを辞めた。あれほど欲しくて仕方がなかったSFの価値が絶対的なものではなかったと知り、なんか冷めてしまった。高校に上がる前の春、僕はSFの暴落とともに「相場」を学んだ。

SFの暴落は簡単に説明するとこうなる。3億の値段がついていた頃は、需要が供給を上回っていた。「3億出してもほしい」と思う人がいたから、SFは3億だった。決してSFに「3億の価値があったから」ではない。価値は市場が決めるのだ。

一方暴落後のSFは、アイテムの性能などは一切変わっていないも関わらず、値段は60分の1になった。インフィニティシリーズの登場で需要が激減したからである。誰も欲しいと言わなくなったので、SFは「500万でもいらない」というアイテムになってしまったのだ。

理屈自体は中学生が学校で習うレベルの話(モノの値段は需要と供給で決まるよ的な)だが、実際に肌で感じないとわからない部分ではある。僕にとってこの経験はのちに何千万円という売上を出すために必要不可欠な基盤となった。SFのおかげで経済を知った。サンキュースクリューフライヤー

このエピソードから伝えたい教訓はこうだ。いい値づけをするポイントは需要と供給を考えることだよ。そのサービスにはどれくらいの需要があるのか。そしてどのくらい供給することが可能なのか。そこがわからないことには値段はつけられない。

と言っても僕の読者に想定している「サービスを0から作って売る」タイプの人は「需要0」の状態から始めることになる。誰もあなたのサービスなんか必要としていない。それはあなたに価値がないわけじゃなくて、サービスが認知されていなかったり、「欲しい!」と思ってもらえるだけの土台が整っていないだけの可能性もある。


知らないモノは買えない。誰にも知られていないサービスは、どれだけ素晴らしいモノだとしても需要は0なのだ。だから作ったばかりのサービスに適正な値づけは0になる。これをどうやって上げていくか?という視点を持たなくては、いい値づけはできない。誰も欲しがってないものをどうやって売っていくのか。腕の見せ所である。

個人的には、値段を上げていくには2つの方法を取るしかないと思っている。欲しがってもらえそうなモノを作るか、需要そのものを作り出すか。前者の方が簡単だけど、後者の方が儲けは大きい。需要を作り出す方法についてはまた後日どこかで語ろうと思うので、ぜひまたチェックしてね。ではまた!

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