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美容も文章も、思い出すとうまくいく

エステティシャンとしてお客さんの顔を美しくするという仕事を2年ほどやってきた。どうしたら美肌になるのかを研究していくと、やはり答えは「基本に忠実に」ということになる。

こすらずに洗顔し、しっかりと保湿。そして睡眠をしっかり摂り、上質な栄養と睡眠をとることが美肌への道だ。ちゃんちゃん。

・・しかしエステに駆け込んでくるお客さんのほとんどが、忙しすぎて「そんなこと言ってらんないよ!」という方ばかりだった。
メイクをしっかり落としたり、しっかり栄養を取れば肌つやが良くなる、そんなことはわかっている。でも睡眠もあまり取れない中でなんとか毎日を乗り切っている人たちにとっては、自分のケアはどうしても後回しになってしまうようだった。

私はあまり忙しくないが、生粋のズボラ人間である。
美しくなりたい想いはいちおうあり、値段の高いデパートコスメから安いプチプラコスメまで試してみた。その結果やはり大事なのは「何を使うかよりどう使うか」だった。忙しい毎日の中でも自分の顔や身体をていねいに扱う、モチベーションを保つかが美しさの秘訣のようだ。

ではどうしたらモチベーションを保てるのか。それは友だちと会ったり、人前に出たり、他者との関わりが大きく影響しているような気がしている。

京都を歩いていると、舞妓さんの扮装をした若い女性とたまにすれ違ったりする。そしてなんとなく彼女らが本物でないとわかるのは、本物の舞妓さんや芸妓さんだけが放つ雰囲気ではないからだ。

細かいところで言えば、舞妓さん体験をしているだけの女の子は、よく見てみるとうなじの当たりの毛がぽやぽやしている。しかし本物の舞妓さん・芸妓さんたちは、男の人なんかは案外この辺りを見ていることを意識しているのか、しっかり処理していたりする。

のれんをめくる動作ひとつ取っても、舞妓体験の女の子はバサッとめくったりするけど、本物の舞妓さん・芸妓さんはゆっくりと、まるで100万円する暖簾をめくるように丁寧に扱う。

そりゃ本物の花街の方は美しいよと言い訳をしたくなってしまう自分もいるが、厳しいお稽古を積む中で「いつどこであっても人の視線がある」と叩き込まれ「他者から見られる自分はどう在りたいのか」という問いと向き合い続けた日々が、彼女たちをより美しくしているのかもしれない。

文章でも、自分だけの日記やブログを付けるのももちろんいいのだが、誰かに見てもらうことで上達するということはよくある。実際にブログを友だちに限定公開するようになってから文章が上達するようになった人を知っている。

これは例えるなら自分だけが見る日記を書くというのは、家の中で過ごす時の顔に近いかもしれない。誰もいない、もしくは家族しかいない状況だと多少いい加減な格好をしていても全然OKだ。

しかしちょっと外に出るとなると誰に会うかわからないので「眉は描いとくか」「ヒゲは剃っておくか」とか「ちょっとかわいい色のワンピースにしようかな」となったりする。結果的に他者の目があることで家の中にいる時より美への道を、一歩は歩んでいるのである。

美しくなりたい、という欲は際限がない。しかし美しさはいつもその人の内側で輝いており、それを思い出すきっかけをつくることが最も早く美しくなる方法な気がする。そうした自分の美しさを思い出す鏡の一つが、他者の存在なのかもしれない。


🍀お知らせ
声の学校・アトリエカンテレ様のインタビュー記事を書かせて頂きました。
こちらの生徒さんは皆さん心の美しい方ばかりで、いつも取材させて頂く幸せを感じます。ぜひご覧下さい!


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