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映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督記:63 編み物

“編集”というものは読んで字の如く編んで集めてゆく作業で、まさに編み物をしているといっていい。映画のように90分にもなると、セーターどころかペルシャ絨毯を編んでる気分になる。一度編み込んだ模様を引き目で見てみて気に食わなければ、全部解いてまた編み直し、編み直しを繰り返す。

2時間撮ったインタビューで表現したいテーマを3分にする場合、言っていることの本質を凝縮するためにセンテンスを前後させたり、1時間後に話した言葉を持ってきたりする。人が言葉で伝えようとすることは、どんなに話が上手い人でもその思いの丈の分、文字で書いたようにはまとまってはいない。だから編集でテーマの本質を編み込む。

この作業、インタビューイひとりでも大仕事なのだが、対談になるとこれまた骨が折れる。来る日も来る日も納得がいくまで編み込むので、サボりたくなることもしばしば。上手くいかずに不貞寝でもしちゃおうかな、という時にお目付役の目が光る。それは何か?

この映画を作るための教科書は樋口さんの著書「私が原発を止めた理由」だ。パソコンの脇に常に置いてある。表紙は2014年に大飯原発運転差止命令を下した日の樋口さんの顔写真。この時の樋口さんの目がすんごい怖い。眼光が「不正は許さない」と言っている。編集にヘコたれてサボっちゃおうかな~?などと思った自分に「お前はそれでいいのか?」とキツく問いかけてくる。この目を見たら「はっ!コーヒー入れてきます」と立ち上がるのだ。

<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com

<宣伝費を募るクラウドファンディング>
https://motion-gallery.net/projects/saibancho-movie

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