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さえりさんから就活生へのメッセージ。人生は「やってみなきゃわかんないこと」だらけ。

ひとくちに「ライター」と言っても、商業ライティングに特化した人やはたまたジャーナリストなどそのあり方は様々。最近では、キュレーションメディアのあるべき姿が問題になったりと、ライターを目指す学生にとって、意外とわからないことって多いですよね。

そんな中で今回は「個人を売り出すライター」として注目を集めている、フリーライターのさえりさんにインタビューをさせていただきました。

さえりさんといえば、ツイッターで10万人ものフォロワーがいる、今話題のライター。有名な”妄想ツイート”はもちろん、多くの共感を生む彼女の言葉には、数千人以上から”いいね”が付くこともあります。

さえりさんの言葉にはたくさんの注目が集まりますが、ツイートだけではわからない「さえりさんのキャリア」についてもっと知りたいという人も多いはず。

今に至る学生時代の話や、フリーライターとしてのキャリアをスタートさせるきっかけ、これからどのような活動をされていくのか、さえりさんのようなライターを目指すにあたってどんなことを心がけたらいいのか…。そんな「キキタイコト」をさえりさんに聞いてきました。

編集者から、“個人”を出すライターに。

──さえりさん、まずはライターになったきっかけを教えてください!

新卒で入った出版社でも、前職の株式会社LIGでも、主に「編集」のお仕事をしていました。LIGは副業OKだったので、次第にライターとしてのお仕事も個人で受けるようになって、いつのまにか編集者よりもライターとしてのお仕事のほうが多くなっていた、という感じでした。

──では、ずっとライターを目指していたわけではないんですね?

文章を書くことが好きだったので、文章界隈で働きたいとは思っていました。とはいえ、「ライター」になりたいかどうかは正直わからなかったんです。ライターが実際にどのような仕事をしているのかわからなかったし、好きな事を仕事にすると辛い、とも聞きますし。「たとえ書きたくないものをひたすら書かされたり、ほとんどねれなかったりしても、それでもライターになりたい!」って言えるほどの力強さは正直なかったんです。

──ライターだけではなく、編集者を経験していてよかったことってありますか?

すごくたくさんありますよ。そもそも人の文章を「編集者」として読むときには、「もっといい文章(読者に届く文章)にするための視点」が大事なんですが、その視点をすこしでも学べたのはよかったですね。
どれだけすごい作家さんでも書いているうちにぐっと世界に入り込みすぎてしまって個人的な文章になりすぎることがあるらしいんです。アートとしてならそれでもいいんですが、「誰かに何かを伝えるため」なら伝わらないと困りますよね。そういうときに頼りになるのが編集者だと思っていましたし、編集者時代はそういう人になりたいと思って仕事をしていました。
今わたしの仕事に編集者がいてくれる場合は、すごく安心しますね。自分一人ではいいものを作るのには限界がある、という視点を持てただけでもわたしにとっては大事なことでした。すぐにライターになるよりもわたしの場合は断然良かったと思います。

学生時代は、今のような「楽しい働き方」が想像できなかった。

──学生の頃は、働くことについてどんなイメージを持っていたんですか?

学生の時は、将来が全く楽しく思えなくてすごく悩んでいました。「仕事は生活のため。楽しいかどうかじゃない」というイメージがすごくありました。だから、そういう働き方しかないと思っていたんです。

──と、いうことは…就職に関してはそれほど前のめりではなかったんですね。

そうですね。生活のためなんだったらやらなきゃいけないし“何なら我慢できるか”みたいな視点で考えちゃって、どれも魅力的に思えなかったんですね。
スッとなりたい職種が見つかって、スッと就活に馴染んでいく友達たちを羨ましくも思っていました。

楽しそうに働く大人との出会い。編集者として働き始める。

──そこからどのように就職につながったんですか?

大学3年生の時にラジオに出たりして、いろいろな大人に会う機会があったんです。楽しそうに働いている大人を見て、初めて「こういう働き方もあるんだな」と感じたんです。「将来を楽しみにしてもいいんじゃないか」と思いました。
もともと、好きなことはたくさんあったんです。企画も書くことも話すこともイベントも商品企画も童話もエッセイも作詞もやってみたかった。……欲張りですよね。でも、いろいろな出会いを通じて考えるうちに、自分にブランドがあればそれもできるんじゃないか、と思うようになりました。そんなに簡単な道じゃないけど、でも「無理」じゃないんじゃないか、って。
そうなれるかなれないかはわからないけれど、いつかそうなったらいいなとほんのり夢見て、それで発信をしはじめたんですよね。
それでちょくちょく自分の感情や見た映画の感想なんかを拙い文章でブログに綴っていたら、とある出版社の社長さんが見てくれていたんです。それで、その出版社でウェブマガジンを作ることになったとき「ライターとしてアルバイトしないか?」と声をかけてもらって。結局ウェブマガジンは実際事業化できなくて、ライターとして仕事をすることはなかったんですけどね。そのままの流れで、「書籍の編集者」として入社しました。迷っていたわたしを拾ってくださって、本当に感謝しています。

──でも、1年で辞めてしまったんですよね……?

そうですね……。その出版社は、もともと学習参考書を作っている出版社だったんですが、わたしの入社のタイミングで“一般書部門”がスタートし、そこは上司とわたしのたった二人の部門だったんです。いざ始まると、作る書籍はビジネス本や自己啓発本で、率直に言って企画を作っても、見ても、始まっても、ほとんどワクワクできなかったんです。たった二人の部署なので教えてもらってるわたしがワクワクしないなんてきっと会社にとっても読者にとっても困るだろうなと思って。もちろんその他にも理由はあったんですけど、それが大きな引き金でしたね。

──転職したLIGでの仕事はどうでしたか?

楽しかったですよ。Web編集者として、本当に手探りでのスタートだったんですが、急に担当のメディアはつくしわからないことだらけだし、でもなんとかしなきゃいけないし……。やりがいがありましたね。はっちゃけているように見えるかもしれませんが、意外とみんな真面目なんです(笑)。
「LIGに入るぞ!」と意気込んでいたわけではありませんでしたが、せっかく入社したからにはどんどん発信していこうと思って仕事をしていましたね。

LIGを退社してフリーに。さえりさんがこれから目指す「ライター」とは。

──LIGを辞めるのに“きっかけ”とかはあったんですか?

流れるように、深く考えないで辞めちゃってましたね(笑)。

わたしは「決意」とか「覚悟」とか目標を持つのが苦手で。「~までに絶対こうなろう!」と決めるのは、ドキドキしてしちゃって怖くてできないんです。何かをガラッと変えることはなくて、グラデーションみたいなイメージで……今回のように「いつのまにかフリーになっていました」みたいなのが自分には向いていて。だから、心情の変化という意味では特にないです。そんなんで大丈夫!? って周りには心配されましたけどね。

──今後は、どんな活動をしていかれる予定ですか?

うーん、学生の頃に思い描いていたような“いろいろな仕事をつくれる人”になりたいですね。企画も、文章も、その他いろいろやってみたいです。文章を軸にできれば、フリーでも会社員でも、ライターでもいいし編集者でもいい。もっともっとやりたいこともやってみたいこともあるので、その時々で人にきちんと何かを返せるような働き方をしていきたいですね。
表現分野にも挑戦したいので、童話やエッセイなども今後は書きたいと思っています。でも、もう少しわかりやすく誰かのためになる=“需要に応える”という仕事もしっかりしたいです。やっぱりそれも、好きなことの一つなので。喜んでくれるひとがいたり問題解決をしたり。やっぱり働くってすごく楽しいです。

さえりさんからライターを目指す学生にメッセージ

──「ライターになりたい!」という学生たちは多いと思うんですが、どうしたらいいでしょうか?

そうですね。いくつかあるんですが……、なにより「まず、文章を書いて!」って言いたいです。特に外に向けた文章……ブログやツイッターなどでいいので、人が読むことを意識した文章を書いてください。
あとは、すぐにライターになろうとしなくていいんじゃないか、とも思います。例えば新卒ですぐライターになるよりも、飲食業界に入ってからライターになってみる。そうすれば飲食系に強いライターになれる。文章を書く練習や人の文章に触れながら、なにか他のスキルを身につけるのは本当にオススメです。
それからライターの定義は様々だということも伝えたいです。私が言うのもなんですが、「ライター」は「黒子に徹することができる」のが大事なんです。自分の感情を書けば、「それはブログでやってくれ」と言われちゃいますね。よく言われている「ライター」は事実を事実の通りに「きちんと文章を通じて伝えることができる人」なんです。
だから、私みたいな人は正直王道のライターではないと思っているんです。ライターに関する正しいイメージを持って、自分がなりたいのはどんなライターなのか、しっかりわかっておくといいかもしれません。

──では、就職活動に悩むすべての学生に届けたいメッセージはありますか?

「ゆっくりでいいよ」ってことでしょうか。私自身、焦っていたのかもと思うことが多いので……。それに「やってみなきゃわかんないこと」ばっかりじゃないですか。だから「やってみてから考える」でいいと思うんですよね。目の前に押し寄せるいろいろなことで今後の人生が決まってしまうわけじゃない。「やりたいこと」を心の中で描きながら生きていたら、いつか形を変えて現れると思います。
心の不協和音を感じたら無理しすぎず、でも目の前のことで人生が決まるわけじゃない気楽さももって「まずやってみる」で、進んで欲しいですね。

After Talk

──さえりさん、今日はありがとうございました。やっぱり発信は大事なんでしょうか?

わたしみたいな“個人”を大事にしたいタイプだったらそうかもしれないですね。わたしは大学の時から発信を続けてきましたが、どういう人になりたいとか、どういうブランディングをしたいかっていうことは、ずっと思ってきました。

──お腹すいた〜とかじゃなくて「自分の考え」とかを発信するってことですよね?

うんうん。何かを届けたい欲があるなら、発信しないことには何もはじまらないしね。

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本記事の「キキタイヒト」:さえりさん

フリーライター。出版社勤務を経て、Web業界へ。人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。

メール:saeri908[アットマーク]gmail.com
Twitter:@N908Sa

※本記事は2016年9月7日に公開されたものです

ライター・インタビュアー:オバラミツフミ

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【編集後記】

さえりさんは優しさの塊、仕事のプロだった。インタビュー編集後記。

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