そういえば、風になったのだ。
もう触れることができないあなたが
私の目の前から消えたあの夏の日から
あなたは風になったのだ。

どこから来たのかも、
どこにいるのかもわからず。

どこに向かうのかも知らず。
それでも、
風が吹けば、葉は揺れる。

風鈴は鳴り、風車は回る。
やさしく頬に触れることも、
肩先を通り過ぎることも。

ときに、抑えられない
衝動のように、

暴れん坊になって
何もかも
剥がしていくことも・
ああ
あなただよね?

春風になって
桜の花びらを散らしたり

窓際の風鈴を鳴らしたり、
役目を終えた木の葉を
やさしく地面に
舞い落りることができるように
しているのも
おもわず
手と手が繋ぎたくなる
凍える寒さを感じさせているのも

そこに風はいる。
あなたは、いる。
あなたはたしかにいる。


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