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うすむらさきの春

あなたのおかげで
わすれていた痛みも
はじめての景色も観れたし、知れたし
齢なんぞ数字にすぎぬと
頬染めて、指をつないで
唇を探して
月と抱き合った。

愛しいという言葉の意味が
自分の中に増えるなんて
想像もしていなかった。


ただただ真ん中ストレートの
あなたが
私のココロの奥の
止まっていた泉を
あけたから
あふれてあふれて
どうしようもなく
あふれて
揺れる気持ちが
濡れて濡れて
湿り気となって
春の夜風と一緒に
私を濡らす。

ココに居てもいなくても
あなたが
わたしにふれたところ
ぜんぶ
うすむらさきの
春めいた傷跡となって
私の記憶とつながって

まだ始まったばかりと同時に
終わったことがわかるから
どの季節の始まりも終わりも
すでにあなたといたような
錯覚に襲われる。


二人の時間軸は
いつも壊れてて
おかしくて
長いような短いような
千年のような
四時間のような

それでも
確かなことは
これは
幻じゃなくて
うすむらさきの
春めいた傷跡を
私ひとり
指でなぞっている

梅の香が迷い漂う春の夜
あなたが欲しい
はないちもんめ


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