また大きく欠伸をしたね 夕べ 眠れなかったのかな 陽だまりに抱かれて揺れている うつらうつらと虚ろな眼 堪えず君は寝転んで 浅く微睡みに落ちてゆく 楽しみで 嬉しくて 淋しさで 哀しくて 夜を更かしてしまったんだね 時間も忘れて耽る享楽の上 らんらんと世界を照らす室内灯 その頭の中までもが感光して 熱を帯びたまま冷めないんだね 悲哀を抱いて零した涙の跡 ぼんやりと薄目で仰ぐ常夜灯 その頬を伝う筋がすぐ気化して 熱を奪ったから冴えちゃうんだね だから遅くまで眠れ
まっさらな布地を指でなぞった。 ざらりざらざらと爪音を弾くカンバスを ひとしきり眺めた後にふっと溜め息を吐く。 そして一歩、二歩下がり座に着いた。 そうして向き合ったままの四畳半には 知らずのうちに斜陽が射していて、 何も描かないのかとばかりに 足元に散らばった画材を照らしている。 わかってるいるよ。と、ひとりごちて 座したまま私はそうっと目を閉じた。 いつの日だったか、 半ば衝動的に購入したカンバスとイーゼル。 それに合わせて ワンルームから2DKの部屋へ引越し
桜の咲く春の日の朝。 朝露を落とす桜の木と足元に散り潰れた花弁、 その美醜両端が視界に映る度に ふと思い出すことがある。 それは幼い頃の記憶。 サクラ、パンジー、タンポポ、マリーゴールド サルビア、シロツメクサ、スミレ、チューリップ ツユクサ、オオイヌノフグリなどの花。 園の花壇や周りに咲いたそれらを 童心故に悪気もなく手当り次第に摘み入れては そこに水を注いで、揉んで、潰して、抽出して、 “色水”なんてものをよく作ったこと。 淡く染められただけのただの水。 色とり