見出し画像

うたたねのたね


また大きく欠伸をしたね
夕べ 眠れなかったのかな
陽だまりに抱かれて揺れている

うつらうつらと虚ろな眼
堪えず君は寝転んで
浅く微睡みに落ちてゆく

楽しみで 嬉しくて
淋しさで 哀しくて
夜を更かしてしまったんだね

時間も忘れて耽る享楽の上
らんらんと世界を照らす室内灯
その頭の中までもが感光して
熱を帯びたまま冷めないんだね

悲哀を抱いて零した涙の跡
ぼんやりと薄目で仰ぐ常夜灯
その頬を伝う筋がすぐ気化して
熱を奪ったから冴えちゃうんだね
だから遅くまで眠れないんだね

そんな日々の寝足りなさが
今日の君のうたたねのたね
やっと逢えた土曜日なのに
寝入ってしまって またあとで


ほら生返事をしたね
いま 聞いていなかったでしょう
斜陽に絆されてうわの空

ぽつりぽつりと口を垂れ
堪えず君は寝転んで
また微睡みに落ちてゆく

不安で 毒されて
悩んで 蝕まれて
夜を溶かしてしまったんだね

瞼を閉じて広がる暗闇の奥
ぐずぐずと脳裏を燻る焦燥の火
その胸の奥までも灼き焦がして
痛みを残すから醒めないんだね

耳を閉ざして劈く静寂の間
じりじりと胸でさざめく煩悶の火
この熱と痛みが癒えた後にも
傷は残るまま消えないんだね
それが疼くから眠れないんだね

そんな日々の憂患こそが
今日の君のうたたねのたね
まだ明日は日曜日だから
そのまま寝ていて またあとで


こんな君の寝顔こそが
今日も私のうたたねのたね
そっと呼吸を忍ばせながら
魅入ってしまって もうずっと

この陽だまりが消えない事が
今日の私の泡沫の夢
まだ明日は大丈夫だから
祈って眠るの またあとで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?