見出し画像

捜査圏外の条件 (短編小説)

妹を殺された男性銀行員が、7年計画で復讐を謀る。用心深く綿密に練った作戦が、ほんの少しの綻びから崩れていく。

『身内が殺される → 犯人は身近にいる → 復讐を謀る →失敗する』 松本清張作品の王道パターンにきっちり沿った物語。「ああ、やっぱりそうなるのね」と、解っているのに読み進めずにはいられないのが清張ファンにはタマラナイ快感。

人物が登場するときの描写で、清張がその人物に与えた役割が判ってしまうのだ。犯人と推測される人物には「精力的で、女出入りが度々ある」などと、読者を上手に導いていく。時にはそれがフェイントになるパターンもあるのだが、読者思いの清張先生、本作は素直に読めるよう書いてくれている。

この作品のキーポイントとなるのが「上海帰りのリル」という歌。1951年のヒット曲で、翌年には映画も公開されたそうで、調べてきいてみた。哀愁を帯びたメロディーラインと歌詞が、戦後の日本の様子を想像させる。なかなか良い曲で、この作品にも合っている。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?