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地方紙を買う女 (短編小説)

「連載小説が読みたいから」という口実をつけて、わざわざ近隣の地方新聞を都内の自宅に届けてもらう潮田芳子。そして、その口実が全てを想定外の方向へと導いていく... 昭和32年発表、清張大先生初期の代表作である。   

①偶然の不幸な出逢い ②自分の幸せの為に他者を殺める ③自覚無しに嘘がバレる 清張ミステリーに欠かせない要素がきっちり詰まった名作。さらに、清張作品ならではの ④鉄道・時刻表絡みトリック ⑤薄幸な女 まで登場する。

この頃から既に清張大先生は、自分の形(かた)をある程度意識していたのかもしれない。それくらい濃密な40ページだった。

そしてこの話に登場する連載小説の作者・杉本隆治。自分の作品への自信から、芳子の新聞購入打ち切りに疑問を持つ。「ちょっとした事に興味を持ち、そこからあらゆる知識と経験をもって推理を導き出し、真相へと近づいてゆく」この杉本の姿勢は、紛れもなく作家・松本清張そのものではないだろうか。

すごいぞ、まるで自作にカメオ出演するヒッチコック監督みたいじゃん!

とにかく、読めば読むほど抜けられなくなる松本清張大先生沼。これからも楽しく沼っていきたい。


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