黒い画集〜証言〜(ドラマ)

2020/05/09放映

松本清張原作、1958年発表の短編小説を現代風にアレンジしたドラマ。彼の小説は「けものみち」「黒革の手帳」など、複数回に渡って映像化されたものが多い。

しかし過去に一度映画化され、今回6度目のドラマ化となる「証言」は、ダントツの人気作品ではないだろうか。

"時代が変わっても、人間の欲や業は結局変わらない" という人間の本質を、明確かつ冷徹に文章化する松本清張。

登場人物はごく普通の一般庶民で、起きる事件も始まりは些細なものだから、読む人は違和感なく物語の世界に没入できる。犯人の苦悩も、被害者への憐憫も想像に難くない。

だからこそ、監督や脚本家の映像化したい欲を刺激するのかもしれない。しかも今回は、主人公の愛人が同性という着想の新鮮さ。現代ならではのアレンジが、普遍的な物語をより複雑に残酷に仕上げたように思う。

主役の谷原章介は、ルックスも良いけど声が最高に魅力的。以前のドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』でも同性愛者を切なく演じていたが、今回も色気のある表情でハマり役だと思った。

謎を秘めたラストには、妻の悲哀と意地も感じられた。清張先生も納得してくれるのではないだろうか。



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