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WE Run | Write, Eat, Run

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私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン
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はじめましての方へ、おすすめの記事。1-100記事篇

■はじめまして 『WE Run』は、“私たちが(そして誰かが)走り続けるためのリレーマガジン”というコンセプトのもと、走るをテーマに綴っていく共同運営形式のマガジンです。 “Write, Eat, Run”という3つのキーワードから生まれたマガジン名が象徴するように、書くことを通じて走ることについて考え、食事を楽しむように走ることを楽しもうとするメンバーが、書き手として参加しています。 目指すは、“読み終わったら走り出したくなるwebマガジン”。距離やペースにと

瀬戸内で『夢の中』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉒~ "

2024年3月9日、土曜日。時刻は午前6時を少し回ったところだ。 私は東京駅から高速バスの深夜便に乗って、岡山駅前に到着した。 この旅の目的地は、明日の午前中にハーフマラソンを走る瀬戸内海の「ゆめしま海道」だ。しかし、ここから直接向かうわけではなく、一旦四国入りしていくつかの途中下車を経てから、明日の朝に現地に到着する旅程を組んだのだ。 せっかくの遠征なので、少しでも多くの場所を訪れてみたいではないか。駅前で朝マックのブレックファーストを摂り、さっそく四国への移動をはじ

紀伊半島で『ワーケーション』を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off㉑~ "

2024年。今年は毎月どこかでマラソン大会に参加しようと意気込んで、すでに上半期の分はすべてエントリーを済ませた。マラソン大会とはいっても、私が主にエントリーするのはハーフマラソンの部ではあるが。 1月の八丈島に続き、2月は和歌山に遠征することにしていた。11月ごろから仕事が立て込んで忙しく日々を過ごしていたので、絶好のリフレッシュ休暇になる。はずだった…… 年明け早々、和歌山市での空き家再生プロジェクトに伴う「発酵酒場」のメニュー開発を引き受けることになった。これが思い

東京マラソン2024参加記

17回目にして、東京マラソンに当選。完走してきた。 フルマラソンは3回目。調べると、前回、前々回はどちらも2016年だったらしい。あの頃は、まだ30代中頃で若かった。今のように日常的にランニングなどしていなかったが、ふと「フルマラソン出たことねぇなぁ」などと思いつきで参加したのだろう。しかも初参加は「掛川・新茶マラソン」だった。何かしらの事情によって現在中止されているこのマラソンは、アップダウンが激しく、日本屈指の過酷なコースと言われる。覚えている。確か前半に急な下り坂があ

人生の転機を感じながら、歩く

3月に入った。朝晩はまだ寒いが日中は暖かく、天気が良い。花も咲き始め、春の接近を肌で感じる。いや、花粉の飛来を鼻で感じるというべきか。(近年私は花粉症を発症した) そんな春の日差しが注ぐ小道を歩きながら、私は天気ではなく「転機」について考え始めた。鼻がムズムズするのを紛らわしながら。 …というのも、先日「卒業ソング」に関するコラムを某メディアに書くなかで、卒業は人生の「転機」の一つであると再認識したからだ。例えば中学を卒業して高校に入学するのは、単に学校が変わるだけではない

走るため フェリーで行って 飛行機で 帰る場所でも 東京なのだ “ 東京そぞろ走り #8 ”

2024年1月6日、土曜日。時刻は22時を回ろうとしている。 私は港区にある竹芝客船ターミナルに到着した。 これからフェリーに乗る予定なのだが、まだ切符も購入していない。お目当てのフェリーはすでに接岸しており、乗船手続きも始まっている。まずは切符売り場に急いだ。 「八丈島まで1枚」。受付で伝える。早く乗りたいので、早く売ってくれ。「あちらで乗船票にご記入の上、乗船口に進んでください」 切符の右側に付いている乗船票に個人情報を記入し、乗船口に急ぐ。なんとか出航5分前に乗

自分の感情を「ひとひねり」したいと思いつつ、歩く

先月歩きながら「今年もあっという間に1年が終わるだろう」と思いnoteにまとめたが、案の定あっという間に1月が終わり、2月に突入した。本日は立春。暦の上では春だ。立春と聞くと、童謡「早春賦」が思い浮かぶ。「春は名のみの風の寒さや」という歌詞は、なんて日本的で美しい表現だろう。時が経つのが早いのは仕方ないにしても、季節感だけは常に感じていたいものだ。 そんなことをつらつら思いながら、私はいつものコースを歩き始めた。空はすっきりと青いが、風は冷たい。明日は雪予報が出ているが、ど

西の果てを走り、鯵を食べつくす九州旅 " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑳~ "

2023年11月8日。午後3時。 私は高速バスと新幹線・在来線特急を乗り継いで、長崎県の佐世保駅にたどり着いた。 今日と明日は、地方出張の合間にできた休日なのだ。 -- 今回の出張、最初の目的地は熊本県五木村。最近、ついに人口が1,000人を切ってしまったという、九州で最も人口が少ない自治体である。 この村で生まれ育ち、進学で五木を離れたが社会人として東京で3年勤務した後にUターンして、村の活性化に尽力しているTさんという方がいる。彼女の招きで、というか「一度現地を

自分を知る1年にしたいと思いつつ、歩く

2024年も、あっという間に11日が過ぎ去った。この分だと、あっという間に1月が終わり、1年が終わるだろう。そして私はまた1歳、年を取る。 年末年始、年度初め、誕生日など、一年の中には時間の流れを意識せざるを得ない特別な日が存在する。その日が来ると私は人生の短さを憂い、いつか自分も死を迎えるという事実に直面して恐怖を感じるのだ。果たして私はあと何年生きられるのか?残された人生で何を成すべきか?そんな老人のような思いが頭をよぎる。既に初老といえる年齢なので無理もないが。 そ

ニッポンの最北端を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑲~ (後編)"

前回のあらすじ ~ ニッポンの最北端を走る(前編) ~ " ここ北限の地で走るという数年来の悲願を満たしにはるばるやってきたのだ。さっそく走ろう! " * 稚内からJR特急に揺られて4時間、終点の旭川に私は到着した。 齢50にして旭川に初上陸した。 駅を出るとまっすぐに、道幅の広い目抜き通りが広がっている。 多くの地方都市では、このような通りの先にはお城が鎮座しているのだが、ここは北海道だ。お城など存在しないし、この道も明治時代の開拓によって作られたのだろう。

早朝ランのつづき

「見せたい場所がある。」なんと素敵な言葉だろうか。率直に言葉を発せられることは素敵だ。画面の向こう側には、澄んだ風景を背景に、朝日が輝いていた。もしぼくが素直で積極的だったら、ダイレクトメッセージで「今度その風景を一緒に観に行きませんか?」と送っていただろう。恋のエンジンがかかる予感がある。 手に収まる画面の向こうには、淡い光が差し込まれた住宅街やビルの谷間、大きな川の河川敷や海岸線が広がっていた。いま、自分の目の前から出ようとしている日の光と画面の向こうの風景がシンクロす

ニッポンの最北端を走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑲~(前編) "

北に旅立ちました。失恋とか自殺志願者ではありませんのでご安心を。 * 2023年9月22日。羽田空港から新千歳空港を経由し、稚内空港に降り立ったのは11時頃だった。空港内にあるレンタカーのカウンターに「予約した者だが」と声を掛けると、しばらくして迎えの車が到着した。空港から車に揺られて3分ほどで営業所に着き、諸々の手続きを済ませると、車のキーを渡された。今日はレンタカーでここからさらに北へ向かうのだ。 ペーパードライバーの私でも、北海道の広くてまっすぐでほとんど人通りの

沖縄料理尽くしの金沢出張で、合間を見て走る

日本海沿岸を代表する都市であり、北陸新幹線の開通により観光客が激増している石川県金沢市。シルバーウィークと呼ばれる初秋の3連休初日、ちょうど正午に私は金沢駅に降り立った。コロナ禍による旅行の自粛が解消されたこともあってか、駅前の混雑具合は観光地の本場である京都と遜色ないほどに感じられた。 さて、今回私は仕事でこの地を訪れたのだが、じつは目的地は金沢ではない。金沢市のお隣に位置する野々市市で脱サラをして沖縄料理店の事業承継をしようという方の依頼で、リニューアルオープンに関する

観光地とベッドタウンと地域創生 " 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑱~ "

◆ 9/3 豊岡 / 宮津 2023年9月3日 16:30。ここは兵庫県豊岡市。 京都丹後鉄道豊岡駅のホームで、私は列車を待っている。今日の宿である京都府の宮津に向かおうとしているのだ。 ところで、兵庫から京都への移動といっても、多くの人がパッと思いつく移動手段であろう東海道線を使うわけではない。ここ豊岡も目的地である宮津も日本海側に位置しており、それぞれの県庁所在地から高速道路を使っても車で3時間前後かかるくらい離れたところに存在している。これから乗車する区間は第三セク