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ゴーン氏逮捕の背景と司法取引

ゴーン氏が日本を発ってから数日経った1月4日にゴーン氏の弁護士である高野隆氏がアップしたブログが話題になっているようだ。その中で高野氏は、ゴーン氏の事件について「無罪判決の可能性は大いにある。私が扱ったどの事件と比較しても、この事件の有罪の証拠は薄い」と述べている。そんな有罪の証拠がないに等しいにもかかわらずゴーン氏はなぜ逮捕されたのか。

今回は、ゴーン氏逮捕の背景について、素人なり素人でも分かるようにまとめてみた。

西川氏はなぜ逮捕されないのか

前回の記事「ゴーン氏はどんな罪を犯したのか」で、ゴーン氏に掛けられている嫌疑をまとめてみたが、どれをみても到底犯罪と言えるような内容と思えない。

むしろ2013年5月に株価連動型報酬の行使日をずらして「本来より4700万円多い金額を受け取っていた」日産CEOだった西川広人氏の方が、実質的に会社に損害を与えているようだし、会社法違反(特別背任)で逮捕起訴されてもおかしくないと思える。

西川氏の自宅登記簿によると、この4700万円を受け取った直後の2013年7月に渋谷に新たに自宅を購入していることになっているという。これは、まさに「会社で要職に就く人物が、自身や第三者の利益のために、組織に損失を与える目的で行う行為」である特別背任罪にあたるのではないだろうか。

ゴーン氏と共に逮捕起訴されたグレッグ・ケリー前日産代表取締役によれば、西川氏は、「自分の報酬に関して非常に強い関心を持っていた」という。日産には、「グローバル人材の報酬制度」と「日本人エグゼクティブ用の報酬制度」があるという。多分、同じような役職でも日本人よりも外国人の方が報酬が多い制度だと思われるが、西川氏は「自分が日本人エグゼクティブ用の報酬制度の中に収まっていることをすごく嫌がっていた」というのだ。

ケリー氏のインタビュー記事を読むと、西川氏が報酬や待遇などの面でゴーン氏に妬みや不満を抱いていたことが感じられる。

密かに進められていたゴーン氏追放計画の可能性

また、ゴーン氏の弁護団は「一連の事件のきっかけは、仏自動車大手ルノーとの統合阻止をもくろんだ日産の日本人役員らが、ゴーン被告を追放しようとしたことだった」と指摘している。

ゴーン氏は、倒産寸前だった日産を立て直した功労者である一方、大胆なリストラを断行したり、日本独特の「系列」を解体するなどしたことで、ゴーン氏を快く思わない関係者も相当数いたであろう。さらにゴーン氏主導で日産がルノーと統合されることで、日産の独立性が弱まることは、多くの日本人役員にとっては避けたい事態だろう。こうした状況と西川氏の個人的なゴーン氏に対する不満などが加重され、ゴーン外しが密かに進められていたことがあっても不思議でない。

日本版司法取引制度のヤミ

ゴーン氏の逮捕には、2018年6月に施行されたばかりの「司法取引制度」が用いられたという。「刑事事件の被疑者・被告人が共犯者や他人の犯罪に関する情報を明らかにする見返りに、自身の刑事処分の軽減を受けられる制度」である。

これは組織犯罪などにおいて「とかげのしっぽきり」をさせないことに目的があるという。組織犯罪の場合は、「下位の者に責任をかぶせて、上の者が追及から逃れること」が起きやすいが、このような事がないよう、いわゆる本当の黒幕を追求しようというものだそうだ。

ゴーン氏のケースでは、日産社内の2人(大沼敏明氏とハリ・ナダ氏)が司法取引に応じたという。報道によると「ゴーン氏らの不正に関する一切の資料を提出し、特捜部の事情聴取に全面協力する一方、2人の起訴を見送る取引だった」という。しかし、そもそもこの2人は「被疑者」「被告人」だったのだろうか。もし資料を提出しなければ、この2人が「金融商品取引法違反」で起訴されるはずだったのだろうか。そのような節は、様々な報道や情報から全く感じられない。

ゴーン氏の逮捕、そしてゴーン氏を日産から追い出すための策略だったと考えた方が辻褄があう。司法取引は黒幕を追求するための制度だ。そしてゴーン氏追放の黒幕は西川氏だと仮定すると、いろんな情報の整合性がとれているように感じられる。

ゴーン氏が起訴されるなら書面にサインをしている西川氏も起訴されるはずだが、西川氏は司法取引に関わっていないという。ではなぜ西川氏は起訴も逮捕もされないのか。そこには西川氏が検察と「ヤミ司法取引」を行った疑いがあるという。ゴーン氏の弁護団は、司法取引は、2人の意思ではなく「日本人役員らの意向によるものだった」と批判している。

この司法取引については、堀江貴文氏がYoutubeチャンネルで簡単に説明しているが、日本版司法取引制度は、「ゴーン氏やケリー氏は使えないもので、共犯者が一方的に使えるもの」だという。その司法取引を"悪用"して西川氏が一方的に検察に情報を提供した可能性がある。そして「検察は一番最初の大きな事件として(司法取引を)使いたかった」のが一つの動機の可能性もあるようだ。

たしかに、2018年11月19日の羽田空港での電撃逮捕劇といい、西川氏ら日産役員にゴーン氏は嵌められたと考えた方が自然である。

日本の司法制度の今後

ゴーン氏は今後、レバノンで記者会見をして自らを貶めた人々と徹底抗戦をするつもりのようだ。私は、「もう日産なんか相手にしないでレバノンで静かに家族サービスしながら幸せに暮した方がいいのでは」、と思ってしまうが、そこはエネルギッシュなゴーン氏、決して不正には負けないぞ!という事なのだろう。

日本の司法制度について今後、海外から様々な声があがり、改善されれる可能性もないことはない。ただ個人的にはその可能性はほとんど無いように思う。むしろ検察などが意固地になってもっと人権弾圧的な検察に都合のいい方向に向かう危険性の方が高い気がする。

日本司法制度の改革には、本来マスコミがもっと声を上げるべきだろう。しかし、堀江貴文氏が「日本の司法システムは腐っている。このことをテレビ各局報道してみろ! できるか!」と言っているように、今の日本の大手マスコミは「検察の手下」となっていおり、マスコミに良識を期待することは難しいだろう。

特捜部に良心はあるのか!?

まともな良心をもっている人であれば、通常有罪になるはずのない案件を無理矢理有罪にし、人を牢獄にぶち込むなんて事ができるのだろうか。ゴーン氏は一生を獄中で過ごし、獄死することになったかもしれないのである。検察、特捜部の人たち、そして西川氏らは、その事で良心を痛めることはないのだろうか。もしかしたらこの人たちは「良心をもたない人たち」ではないか、とさえ思ってしまう。

サイコパスについて解説している書籍『良心をもたないひとたち』の著者マーサ・スタウトは「サイコパスを良心をもたない人たち」と定義している。サイコパスは「反社会性パーソナリティ障害」とも表現される。えん罪の可能性のある人をどんどん追い詰めて牢屋にぶち込み続けようとする検察、特に特捜部はもしかしたらサイコパスにとって最適な職場なのかもしれないと思ってしまう。実は特捜部こそが反社会的ではないだろうかとも思えることがある。

いずれにしても、国際問題となったゴーン氏の問題は今後、司法制度や出入国制度について何らかの変化をもたらすことになることだろう。

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